国際激流と日本

ずるずると日本の手を
離れていく尖閣ニュースにならなくなってきた中国船の日本領海侵入

2013.10.02(水)  古森 義久

 このままだと不可避なのは日本側の尖閣の施政権の空洞化である。日本が尖閣防衛で最大の頼みとする米国も領有権では立場を取らないとはいえ、日本側の施政権は明確に認めている。その結果、尖閣が「日本の施政の下」にあるから日米安保条約の適用範囲になると言明するわけだ。「施政権」とは立法、司法、行政の三権を行使する権利だという。より簡単には行政を履行することだろう。

 だが外国の武装艦艇が自由自在に無断侵入してくる海域の「施政」の存在を立証することは容易ではない。現状では日本が施政権を行使しているとは言えないようなのだ。それどころか、このままだと日本側の「施政」は崩れそうなのである。中国側の意図もまさにその点にあるのだろう。

 尖閣諸島の陸上にも、日本政府はなんの施政権らしい権利を行使していない。尖閣には日本の行政も司法も立法も、明確にはなにも及んでいないのである。そのうえに領海にも外国の艦船が無断で自由に入ってくるとなると、日本の施政権というのはますます薄弱となる。モチヅキ氏はこのあたりを指して、「中国側が新しい地歩を築いた」と評しているのだろう。

 そうなると日本政府が2013年9月に尖閣諸島の国有化の手続きを取ったことが改めて正しかったということにもなる。外国の船や人間が自由に入ってくる海域、地域にこちら側の「国家」の気配もないとなると、尖閣の施政権はもちろん領有権さえ危うくなってしまう。

断固とした対応で侵入を抑止せよ

 中国側の「新しい地歩」を崩し、日本の「施政」を堅持するには、日本側もいまや新しい対応が求められる。尖閣はもう中国に譲ってしまえ、という選択肢を取るならば、別である。中国側の要求になんでも従ってしまえばよいのだ。そうすれば対立も衝突も、戦争も避けられる。だが自国領土を外国から軍事力の威嚇を背景に求められれば、簡単に割譲してしまうというのでは、主権国家の要件を欠くことになる。

 このままでは米国が認めている日本の施政権も風前の灯である。客観的に見て日本国は尖閣諸島の陸上でも海上でも、どこに施政権を行使しているというのか。海上保安庁の船が日本領海をパトロールして、侵入してくる外国の艦艇に「退去せよ」と口頭で求めるだけなのだ。

 米国がもしも日本の施政権を認められないという状況になれば、尖閣が中国の軍事攻撃を受けても、日米安保条約の適用範囲とは見なさないことになり、なんの防衛行動も取らないことになってしまう。

 だから日本側は尖閣の施政権を明示する新しい措置を取…
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