争点のない選挙 わかりずらい政治主張の違い――9月8日埼玉県八潮市選挙報告
争点のない選挙 わかりずらい政治主張の違い
――9月8日埼玉県八潮市選挙報告
9月8日投開票で行われた八潮市議会議員選挙。市議として4期勤め5期目を目指す矢澤江美子氏の選対に急遽、私も入ることになり、一週間の選挙戦を闘ってきました。市議選だけでなく、市長選、県議補選も同日行われた今回の八潮市の選挙について報告します。(小高真由美)
厳しい気候の中での選挙でした。9月に入ったというのに、猛暑。炎天下での出陣式は短い時間でも、立っているだけで熱中症になりそうな暑さでした。翌日は、真っ黒い帯状の雲が北へ向かって続いている様子が見られ、その後、ごく近い越谷市で竜巻が起こったという知らせを受けました。終盤は夕方から急に肌寒くなり、昼間との気温差で体力が消耗させられる状況でした。
そんな中で、候補者そして運動員、よく乗り切れたと思います。
市長選・県議補選 保守同士の争い
八潮市では市議選と市長選はこれまでも同日行われているのですが、今回は、現職市長の多田重美氏が引退し、現職県議の大山忍氏が立候補したため、県議補選もあり、3つの選挙が重なりました。本来であれば、投票率が上がって良い状況ですが、実際は前回の市議選の投票率(49.01%)を3ポイント近く下回る46.04%です。
市長選、県議選、共に保守同士の争いを、市民はさめた目で見ていたのかもしれません。
市長選の立候補者は前県議の大山忍氏と前市議の大久保龍雄氏の一騎打ち。大山氏は昨年7月、自民党を離党。現日本維新の会、鈴木義弘衆議院議員と「行動を共にする」とのことでした。
大久保氏は2005年、09年の市議選では民主党公認でトップ当選しました。しかし、昨年8月には民主党を離党して今選挙では、自民党の推薦を取り付けています。
結果は、大山忍氏19717票、大久保龍雄氏9627票、ダブルスコア以上の大差で大山氏が当選しました。
県議補選では、立候補者3名は全員が前市議でした。森伸一氏(自民)、福野未知留氏(諸派)、宇田川幸夫氏(諸派)。
結果は森氏10841票、福野氏9324票、宇田川氏9035票で自民党公認の森氏が当選しました。しかし、任期は次の統一地方選までの約1年半程度です。3人の得票数はそれほど離れていないので、次の県議選は再び3人の決戦(あるいは市長候補だった大久保氏も含めた4人の決戦?)になるかもしれません。
市議選の結果 蓋を開けてみて
今回の八潮市議会議員選挙は、定数22人が21人に変更されましたので、立候補者23人が21議席を争う選挙となりました。落選したのは、30代の無所属新人の候補者2人です。
それぞれの結果には、驚いたものや、奇妙に思えたものもありました。
4年前の選挙では917票で最下位当選だった大山安司氏が、今回は自民党公認を掲げて立候補し、2352票でトップ当選しました。4年間で1435票増やしたのです。また、今回は当選ラインが下がり、林雄一氏は、589票で最下位当選。前回は801票で次点で落選しましたが、212票減らしながらも当選しました。
また、泡沫候補と言われてきた豊田吉雄氏。実はこれまで共産党の八潮市議として8期32年の実績がありますが、今回は共産党の新人、高波幸雄氏の立候補に合わせて引退すると言われていました。しかし、豊田氏は納得がいかなかったのか、結局、立候補しました。高波氏が共産党公認で、豊田氏は無所属です。共倒れとの噂もありました。特に、ほとんど選挙活動を行わず、自分の名前を書いただけの白い紙をポスター掲示板に貼っていた豊田氏は、当選は難しいといわれていました。
しかし、結果は豊田氏711票で当選、高波氏も834票で当選しました。
矢澤氏4位当選 地道な活動をアピール
この八潮市の選挙に私自身、矢澤江美子氏の選対の事務局長として関わりました。選対の事情による、選挙期間中のみの付け焼刃事務局長でしたが、八潮市の選挙を選対の立場から見れたことは、各地の選挙・政治事情を知る上で非常に興味深いものがありました。
矢澤氏は、無所属・市民派の議員として4期16年活動してきており、今回は5期目の挑戦でした。本人は何位で当選するのかは気にしないと言っていましたが、朝、一緒に駅に立ってみた感触、選挙カーを回した時の有権者の反応などを見た限りでは、これまでの票を減らすことはないだろうと思えました。また、毎回の議会終了ごとに全戸配布している議会報告の「やざわえみこ通信」も16年間続けていますし、ブログも日常的に毎日更新し、かなりのアクセス数があります。得票数が増える可能性も大いにあると思えました。しかし、何よりも気をつけなければならないのが、選対のゆるみです。5期目ということもあり、事務所に立寄る方の多くが「矢澤さんは大丈夫よね」という言葉を口にします。そんな時は、ベテランの油断が一番危ないこと、選挙は最後までどうなるかわからないなどの話をして、選対が安心ムードになることだけは避けるようにしました。
結果は1918票で4位当選。4年前の1437票(8位)から481票増やしました。やはり、議会報告やブログ更新などで自らの地道な活動や誠実な対応をアピールできたことの結果だと思います。また、(選挙期間中は、地元の古新田地域も重点的に回りましたが)これまで以上に地元から受入れられ、票を増やしたのではないかと思われました。
市民の政治参加で議員が見えてくる
今回の八潮市の選挙についてまず感じるのは、いわゆる「風」で当選しようとする態度がすけて見える候補者たちが目立つことです。八潮市ばかりではありませんが、既成政党から既成政党へ平然と移籍する議員が、民主党の政権交代以来、特に増えているように思います。その節操のなさにはあきれるばかりです。
しかし、これについては有権者の選択の仕方にも問題があると言えます。例えば現職の議員に投票する場合、会期中に議会でどのような活動・主張をしてきたのかを評価して選択すべきではないでしょうか。そのこととは無関係に、どこの党の公認なのか、市長選・県議選は誰の支援をしているのか、あるいは「地元の候補」ということだけの投票で、「結果」が出てしてしまうと議会に悪い影響を与えます。今回の市議選でトップ当選の大山安司氏だけではなく、他にも「自民党」を掲げ、保守の選挙構造の変化(地元の自民党議員が県議選に立候補したなど)で票を増やしたと思える候補がいましたが、議会活動とは関係なく劇的に得票数が増えれば、議員は議会の活動を軽視するようになってしまいます。そして、議会がますます行政をチェックしなくなり、市民の意識とはかけ離れた市政運営が行われていくでしょう。結局、議会がその機能を果たさなければ、そのつけは有権者に返ってくるのです。
もちろん、議員が自らの議会活動についてまともに発信していないことが問題ではありますが、発信することがみつからないほど議会活動を行っていない議員が多数いるのです。八潮市に限らず、多くの地方議会で議会運営はセレモニー化しており、市民の立場から市政の改善を目指し、本気で発言する議員などごく一部です。4年間、質問ひとつしないような議員もいます。市民側からチェックしなければ議員の動向は見えてきません。
改選後の八潮市議会も相変わらずの状況になるとは思いますが、矢澤江美子氏にはこれからの4年間もこれまで通り、市民の視点から鋭く行政をチェックしていってもらいたいと思います。
9月8日投開票 八潮市選挙結果はこちら↓
http://www.city.yashio.lg.jp/8820.htm