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10/02/2013

続・福島県沖で試験操業を再開するなら、セシウム検査だけで安心してはいけない。

前回の「福島沖で試験操業を再開するなら、セシウム検査だけで安心してはいけない。その理由とは・・・の続きというか、補足です。

前回のエントリを私が書いた後、東電は9月27日に福島第一原発の1、2号機タービン建屋より海側に掘った観測用の井戸から地下水を汲み上げ検査したのですが、この地下水からはストロンチウムなどのベータ線核種が40万ベクレル/l計測されました。

この海側に掘った井戸で観測した地下水は、原発建屋地下に貯まっている汚染水が周辺の地下水系に流出しているもので、このまま海へ流れて毎日流出している事になると思います。

さて、ベータ線核種が40万ベクレル/l計測されたこの地下水、セシウムは134と137それぞれどれくらい検出されたと思うでしょうか?

私が前回書いた事・・・・この二年間、東京電力は原発建屋地下の汚染水の一部を汲み上げては、主にセシウムだけ低減させて、その一部はタンクに貯め、残りは原子炉冷却水として注入して地下に戻しているため、建屋地下の汚染水はセシウム濃度だけどんどん低減している・・・・をきちんと理解できた方なら、「セシウムだけは値が相当低くなっているんだろうな。」と予想できたはずです。

で、実際の数値は以下の感じになります。

<検出内容>
セシウム134  :検出限界値未満
セシウム137  :2.1ベクレル/l
全ベータ線核種 :40万ベクレル/l

セシウム134はND(検出限界以下)、セシウム137は2.1ベクレル/lとかなり低い値。
それに対して、ベータ線核種は40万ベクレル/lと、めちゃくちゃ高い値です。

 
原発事故直後なら、セシウム137とベータ線核種の比率がこんな風に大幅に乖離していなかっただろうに、原発事故からこの二年間人為的にセシウムだけ低減させ続けたために、ここまで変な比率になってしまいました。
この地下水、ベータ線核種がここまで高い値になっている事から考えて、他のアルファ線を出す核種やセシウム以外のガンマ線を出す核種の濃度も相当ひどい事になっていると思われます。


原発地下に貯まっている高濃度汚染水の一部は、今となっては「毎日海に垂れ流しになっている」のが判明したわけですが、その海に流れていってる高濃度汚染水は、「東電がこの二年以上毎日汲み上げては、人為的にセシウムだけ低減させて地下に戻し続けたため、セシウムだけ段違いで濃度が低くなっている」のです。

セシウムだけ減らしただけで、この結果からわかるように毎日海に垂れ流しになっている高濃度汚染水は、セシウム以外の他の核種(ストロンチウム、ウラン、プルトニウム、放射性銀、その他いろいろ)については、減っておらず、かなり高い濃度で含まれたままなのです。
魚貝類は、当然セシウムの取り込み量はかなり少なく、一方、他の核種の取り込み量はひどい物になっている事でしょう。(魚貝類の体内には吸収されない核種もありますが)

それなのに、福島県は魚貝類のセシウム検査だけして、「セシウムは検出限界未満だから安全だ。一部の魚貝類の漁を解禁して、全国にじゃんじゃん出荷する。」という愚を犯そうとしているのです。
(というか、前にやっていた試験操業も、セシウムしか検査しておらず、全国に出荷しまくった。北陸にも蟹を出荷しまくった。)

 
福島の漁師自身「セシウム計測だけで安心だ」と本気で信じ込んでしまっており、自分の家族や子供にどんどん食べさせてしまっている人もいるでしょう。


何度も言いますが、今毎日海に垂れ流しになっている『高濃度汚染水』は、セシウムだけは人為的に低減させてしまったため、セシウムの濃度"だけ"が段違いで低いのです。
それなのに、魚貝類についてはセシウムだけ検査して、「安全だ」と判断するのが以下に馬鹿げている事か、おわかりいただけるでしょうか?


今回私が取り上げた事については、やがて他の人も問題点として指摘しだし、そう遠くないうちに雑誌やテレビ番組でも大きく取り上げられる事になると思います。
一部の消費者団体などでも、大学や研究機関に協力してもらい、魚貝類の『本当の汚染の実態』を調査するところも出てくるでしょう。


東京電力が毎日建屋地下から汲み上げた高濃度汚染水をどういう処理しているかは東電自身が公開しているのですが、その処理工程を見ると、「建屋地下の汚染水はセシウムだけ人為的に大きく減らしてしまっている」のは一目瞭然です。
(正確には、ALPSのように他の核種も大きく減らしたかったが、今本格稼動している汚染水処理装置は主にセシウムだけしか大幅に低減できていないタイプのため、結果として「地下の汚染水はセシウムだけ大幅に減らす」という事になってしまった。)

東電が事故からこの二年以上毎日やり続けた処理(セシウムだけ減らす)を見ると、「魚介類の検査についてはセシウム検査はもうあてにならない物になってしまった」というのはもう理解できたでしょう。
セシウムと他の核種のバランスを大きく変えてしまったため、「セシウムを指標に、他の核種の汚染具合を想定する」という事ができなくなってしまったのです。
セシウムが検出限界未満でも、他の核種の汚染具合が相当ひどい事になっている事も……。

本来ならもっと早い段階で、多くの人が「毎日海に垂れ流しになっている高濃度汚染水は、セシウムだけ低い値なので、魚貝類のセシウム検査だけして、それで安全かどうか判断するのは不適切だ。」と指摘すべきでした。
また「想定外でした」をやらかしてしまったわけです。


魚貝類は人間が食うだけでなく、家畜の飼料の一部になったり、肥料や土壌改良剤などとして加工されて流通して全国の田畑に撒かれたり、他の地域の養殖魚の餌になって汚染が拡散する事になります。
人為的に大幅に低減したセシウムの検査だけをして「安全だ」と錯覚し、その実他の核種については高い値の物を、食べたり、飼料として家畜に与えたり、土壌に撒いたり、養殖魚に食べさせるのは阻止しないといけません。


福島県の漁については、やはり以前福島県の漁師は別の漁場での漁の再開を目指すべきのエントリで提案したように、福島沖での漁の再開はもう諦め、もっと距離を取った地域で漁ができるよう、国が支援すべきだと思うのです。


注)
今回および前回書いた記事については、リンクで紹介したり転載などしてご自由に紹介してもらってかまいません。
一刻も早い状況の改善に、ご協力をお願いします。



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