「韓国では新婚女性の立場を表わすのに『見ざる3年、聞かざる3年、言わざる3年』と言います。人権なしの状態が9年間も続くという意味。大袈裟ではありません。ごく一般的な家庭がそうです」
韓国では近年、「女性緊急電話(*注)」の利用者が増えており、今年6月発表の統計では家庭内暴力(DV)が全相談件数の42.6%を占める。結婚後に暴力を振るう男性がこれほど多いのは、女性の人権が蔑ろにされている証拠だ。
企業にも女性蔑視がある。ある女子大生は助教授に就職の相談をしたところ、こんな言葉を投げかけられた。
「あなたは“サムスン型”の顔じゃないよ。これまで就職に成功した卒業生をたくさん見てきた。企業ごとに受ける顔があって、顔を見ればどの会社に向いているのかわかるものだよ」
“サムスン型”が本当にあるかどうかは不明だが、面接で好印象を与えるために整形する女子学生は多い。
そうまでして内定を勝ち取っても、その先にはさらに厳しい現実が待ち構えている。能力を発揮できる場を与えられることは稀で、男性社員の補助要員として職場の“お飾り”にされてしまう。
「性接待」を強要されることもある。今年5月に投身自殺した26歳の女性消防士は、同僚らの証言によると、職場関係の飲み会のたびに性行為を強要されていたといい、現在警察が捜査中だ。
内閣府(日本)がまとめた2013年版男女共同参画白書によれば、韓国の女性管理職の比率はわずか9.4%。アメリカ43%、イギリス35.7%、フランス38.7%などに比べると圧倒的に低い。日本も11.1%とかなり低いが、韓国はそれをさらに下回る。
OECD(経済協力開発機構)の調査では、韓国の男性の平均賃金を100としたとき、女性の賃金は61。格差は39%となっている。これは統計がある加盟国平均15%の2.6倍で、ワースト1位だ(2010年)。
今年、史上初の女性大統領が誕生し、大きく変革を遂げたイメージがあるが、国際社会の尊敬を得るには程遠い現実がある。
【*注】DVや犯罪から女性を守るため、24時間運営されている通報窓口。女性家族部がNGOに委託し事業支援を行なっている。
※SAPIO2013年10月号