【萬物相】長崎造船所と韓国人強制徴用

【萬物相】長崎造船所と韓国人強制徴用

 「1945年8月1日。きょうの爆撃はとりわけ激しかった。造船所や食堂が爆撃を受けた。俺は遺体の発掘作業に動員された」。第2次大戦末期の1945年1月に徴用され、長崎造船所に連れてこられたキム・スンギルさんが残した日記だ。釜山出身の22歳のキムさんは、3度の食事としておにぎり1個だけを与えられ、奴隷のように働かされた。同年8月9日、長崎市に原子爆弾が投下されたが、キムさんは幸いにも助かった。キムさんは日記に「悪魔の長崎から帰国の途に就いたのは8月12日午後8時」とつづった。

 韓国が日本の植民地支配下にあった第2次大戦末期、長崎造船所では約4700人の朝鮮人が軍艦の製造に携わっていた。このうち約1600人が原爆投下で命を落とした。また、長崎市から南西に18キロ離れた離島の端島(通称・軍艦島)にも、朝鮮人たちの恨(ハン=晴らせない無念の思い)が宿っている。朝鮮人たちは40度にもなる海底炭鉱の坑道で、1日に12時間も働いた。ここで死亡した朝鮮人122人のうち、多くは窒息死や事故死だったが、日本人の監督官に暴行を受けたり、脱走しようとして水死したりしたケースもある。

 日本政府は2009年、「九州・山口の近代化産業遺産群」について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産(文化遺産)登録に向け暫定リストに掲載した。これは長崎造船所や端島炭鉱をはじめ、28の産業施設や遺跡により構成されている。安倍内閣は今月17日、同遺産群を世界遺産として推薦する方針を決定した。菅義偉官房長官は「日本が『ものづくり大国』としての基礎を固めた歴史を、この地域の遺産群が示している」と説明した。「ものづくり」とは「職人の心がこもった日本の製造業」を指す言葉だ。

 最近、日本ではテレビドラマ『半沢直樹』の視聴率が30%を超え、人気を博している。これは「製造業大国」日本の復活を望む国民の意向がよく反映されているためだ。主人公である銀行員が、父親の開発した新素材のねじをいじる場面がたびたび登場する。融資を担当する主人公は、自らの手で物を作る中小企業にはためらいなく融資した。このドラマに共感する国民の心を安倍首相はよく把握している。製造業大国としての歴史を世界遺産に登録することで、日本人のプライドを取り戻そうというわけだ。

 だが、日本政府は「製造業大国の歴史」を語る際、強制的に徴用された朝鮮人たちが流した血や涙には知らんぷりを決め込んでいる。韓国政府は「強制徴用によって連れていかれた韓国国民の傷が残る場所は、普遍的な価値を持つ世界遺産として適切ではない」として反対する意向を示した。ユネスコが2年後、世界遺産登録の可否を決定するまで、韓国の立場は引き続き伝えていくしかない。隣国の人々の血や涙が残る日本の遺産の前に「世界」という単語を付けるということは、とんでもないことだ。

朴海鉉(パク・ヘヒョン)論説委員
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 【萬物相】長崎造船所と韓国人強制徴用

right

関連ニュース