社説:日米防衛協力 新思考の同盟像を探れ
毎日新聞 2013年10月04日 02時35分
日米同盟は大きな試練を迎えている。米国は日本に対して日米同盟の枠組みでもっと大きな役割を果たすよう求め、安倍政権は防衛費の増額や、集団的自衛権の行使容認を目指すことで、応えようとしている。経済的にも軍事的にも、中国が台頭し米国の力が相対的に低下していることや、米国の財政難が背景にある。
日米両政府が3日、東京都内で開いた外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は、こうした環境下で行われた。有事の際などの自衛隊と米軍の役割を定めた日米防衛協力の指針(ガイドライン)を1997年以来、再改定し、2014年末までに策定することや、沖縄の負担軽減策に合意した。
日本側から岸田文雄外相、小野寺五典防衛相、米側からケリー国務長官、ヘーゲル国防長官が出席し、東京に4閣僚がそろうのは初めてという歴史的な会合となった。
北朝鮮の核・ミサイル開発の進展に加えて、中国は軍備拡張を続け、沖縄県・尖閣諸島など南西諸島周辺や南シナ海で海洋進出を活発化させている。サイバーや宇宙空間の協力など新たな分野への対処もある。
厳しさを増す日本の安全保障環境を考えれば、自衛隊と米軍の役割分担を見直し、ガイドラインを再改定するのは妥当な政策判断だろう。
ただ安倍政権は、集団的自衛権の行使を容認するため憲法解釈を変更し、ガイドラインに反映させようとしている。現状では集団的自衛権に関する政府の説明はあまりに不十分で、国民の理解も進んでいない。
今回の合意文書には、日本側の働きかけにより、集団的自衛権行使の検討など安倍政権の取り組みを米国が「歓迎する」との文言が盛り込まれた。だが実際には米政府は、日本が韓国や中国との関係をさらに悪化させることへの懸念を持っている。
日米は同盟強化では一致したが、具体像となると集団的自衛権の行使をどう考えるかなど、お互い必ずしも描き切れていないようにみえる。慎重で丁寧な協議が必要だ。
同時に重要なのが、日韓両国の連携や、豪州や東南アジア地域などを含む多国間協力の強化だ。
訪日前に韓国を訪れたヘーゲル長官は朴槿恵(パク・クネ)大統領に対し、日米韓3カ国の安保協力の重要性に触れて日韓関係改善を求めた。だが大統領は「歴史や領土問題について、時代に逆行する発言をする日本の指導部のせいで信頼が形成できない」と安倍政権を批判し、日米の政府関係者を失望させた。
日本を取りまく安全保障環境を好転させるには、防衛力整備だけでなく外交力の活用が不可欠だ。防衛・外交を両輪に10年、20年先を見通した新思考の同盟像を探りたい。