スパットを目印にボールを投げる谷川章子プロ=愛知県岡崎市の岡崎グランドボウルで(田中久雄撮影)
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レーン上の「スパット」は大事な目印
ボウリング場の競技設備に関する続きです。レーンの途中に三角形の「スパット」というマークがしるされてます。初心者の方は気にしないかもしれませんが、プロボウラーにとってはボールを投げるうえで非常に大事な目印なんです。今回は谷川章子さん(35)がレクチャーします。
ピンの位置と平行にレーン上に7個 39枚の板目に均等配置
レーンをよーく見てください。少し先に黒い三角形の表示が7つあることに気付きませんか。これを専門用語でスパットと言います。
レーンは横方向に39枚の板目で構成されているのですが、スパットは端から5、10、15、20、25、30、35枚目にあります。そのままレーンを真っすぐにたどると、外側にみえる7本のピンの位置に重なります。最も手前の1番ピンは真ん中のスパットの延長線上にあるというわけです。
では、読者の皆さんに質問です。ボウリングはどこを狙って投げますか? もしかしたら、ピンを直接見て投げるものだと思っていませんか。それでも問題はないのですが、プロボウラーはピンを見ないで投げているんです。では、どこを見ているでしょう? それがスパットなんです。
縁日に出ている屋台の射的を想像してみてください。景品にうまく弾を当てるために皆さんはどうしますか。銃口の先に飛び出ている部分を使って照準を合わせませんか。ピンを直接見た場合、目標物が遠いのでどうしても狙いを定めにくい点があります。ですが、スパットの場合はピンよりも近い位置にありますので、そこを狙って投げれば、コントロールがよりつきやすいんです。
業界では一般的にスパットと呼ばれることが多いですが、正式には「ターゲットスパット(target spot)」と言うそうです。文字通り狙いを定めるためのポイントという意味です。
プロは「ピン」よりも「スパット」を狙って投げています ガイドもドットも重要
レーン上にある目印はスパットだけではありません。その手前にはガイド(ドット)という黒丸のような表示が左右5カ所ずつありますし、助走するエリアのアプローチにも立ち位置を一定にするためにリリースドット、スタンスドットと呼ばれる印が打ってあります。いずれもフォームや、ボールのライン(軌道)を安定させるためのものです。
初心者の方はすべての目印を活用する必要はありません。まずはスパットを意識するだけで十分です。そこを狙って投げる癖がつけば、上達も格段に早いと思いますし、曲がりにくいハウスボールでも高得点を出せるようになります。
ただ、スパットを絶対に見なくてはダメだというわけではありません。プロの中にはスパットを見ない人もいますから。基本的にはストライクが出たら、その時の状態をしっかり記憶し、それを繰り返すことが大事です。ですので、スペアを取るときを除いて、常に同じ立ち位置で構えるということを忘れないでください。
スパットを使った具体的な狙い方などについては、後の回であらためてレクチャーします。
谷川章子(たにがわ・あきこ) 1977(昭和52)年10月25日生まれ、35歳。愛知県出身。167センチ、右投げ。愛知・享栄高時代はソフトボールの選手。ビューティーカウンセラーとして一般企業に勤めていた23歳の時にボウリングを始め、2004年にプロ入り(37期)。公認パーフェクトは5回。プロ通算5勝。P★リーグでは第10戦で優勝。キャッチフレーズは「ビューティーハニー」。グランドボウル所属。
取材協力・岡崎グランドボウル 【住所】愛知県岡崎市日名北町1の1((電)0564・22・5522) 【営業】年中無休(午前7時から翌午前5時) 【通常料金】1ゲーム600〜700円(一般) 【アクセス】愛知環状鉄道北岡崎駅から徒歩1分
ボウリング豆知識 10本ピンだから「十柱戯」
日本ではベースボールが「野球」、サッカーは「蹴球」、バスケットボールは「籠球」、テニスは「庭球」と訳されます。もちろん、ボウリングにも漢字表記があり、主に「十柱戯」の字が当てられます。
明治時代に9本ピンによるボウリングが紹介された際に「九柱戯」と翻訳されました。ですので、「十柱戯」は正式には10ピン制の競技を指します。他にも「柱技」「投球」と表記されていたことがあります。
ただし、これは日本独特で、漢字の発祥国でもある中国では「保齢球(バオリンチュー)」の漢字が使われます。ボウリングの発音に由来しているようですが、「若さを保つ球技」という意味では、老若男女が楽しめる生涯スポーツのボウリングにはぴったりの言葉といえます。
(毎週金曜日の紙面に掲載。紙面では他に「P★リーガー名鑑」も掲載しています。)
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