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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・

アメリカでオスプレイ反対運動?その2

 現在発売中の『Themis』今月号で、コメントを採用していただきました。シリア問題です。
 また、本日TBS「朝ズバ」で、文字コメントを提供しました(採用されたかどうかは未確認)。こちらは日米外交防衛閣僚会合に関してです。

 その「朝ズバ」ですが、同番組で私が以前、「アメリカでオスプレイ反対運動は存在しない」と明言したことに関し、ちょっと前ですが、ツイッターにて「アメリカの活動家が、沖縄訪問時にオスプレイ反対を訴えた」とのご指摘を受けました。
 その根拠となったのが、以下のニュースです。
▽検証 動かぬ基地 vol.127 オスプレイ訓練延期させた米国女性
 ここに登場するのは、The Peaceful Skies Coalition(平和的な空たち連合)」の代表のキャロル・ミラーさんという方です。The Peaceful Skies Coalitionは公式HPによると、ニューメキシコ州・コロラド州での米空軍特殊作戦部隊のオスプレイとC-130輸送機による低空飛行訓練をやめさせるために設立された組織となっています。
 番組を拝見すると、ミラーさんは以下のように語っています。
「政治レベルでは彼らはオスプレイをここに配備するだろう」
「もしそれを私たちが止めることができたら、世界(エンパイアという言い方をしていますね)への拡散を止めることを助けるだろう」
「騒音さえも、自由のための音だと言うのです」
 以上から、アメリカの活動家がオスプレイ反対を表明している、と同局は報道しています。

 ところが、ミラーさんが主導するThe Peaceful Skies Coalitionの上記のHPをみても、「オスプレイに反対」とは書かれていません。あくまで低空飛行訓練に反対しているだけです。反対の理由も、騒音や風圧による環境への悪影響ですね。オスプレイ限定でもありませんし、ましてや「オスプレイ特有の危険性」にはまったく言及されていません。
 考えられることは以下のようなことです。
▽ミラーさん個人だけが「オスプレイそのものに反対」
 どこにもいろいろな方がいますので、可能性がないわけではないです。
 ただ、同組織のSNSにこの人が書き込んでいるものなどを拝見すると、もともと反戦運動系の方で、すべての米軍の活動、すべての兵器に反対というような意識の方であることが推測されます。
 ですが、仮にそうであっても、あくまでこの方おひとりの見解であり、彼女が主導する同組織の考えではありません。アメリカにオスプレイ反対運動があるわけではないのです。
▽同局の情報操作
 地元住民や地元の環境へ配慮に欠けた米軍に対する抗議ということで、ミラーさんが沖縄で語ったことを、同局が「オスプレイ反対で連携した」と誤解し、そのように編集で恣意的に操作した可能性があります。
 たとえば、上記の3つのコメントも、それぞれ別個にトリミングされたコメントであり、文脈的に繋がっているのかどうかは、これだけではわかりません。
 まあ、最初の2つは流れとしては繋がっている可能性が高いとは思いますが、おそらくミラーさんが「地元の環境へ配慮しない米軍の横暴を止めたい」という意味で言っているものを、1本目でむりやり「オスプレイ」を強く印象付けようとしたものではないかなと推測しています。
 また、最後の「騒音さえも、自由のための音だと言うのです」のコメントも、キャプションでは「オスプレイの騒音さえも~」とされていますが、この映像では「オスプレイの~」とは言っていません。
 通常、もしも「オスプレイだから反対」、ましてや「オスプレイは危険だから反対」というのであれば、きっちり単独インタビューも撮っているわけですので、そうした明確なコメントを当然採用するはずなので、それがないということは、同局が期待するそうしたコメントがなかったということかと思います。

 要するに、アメリカには地元住民による「低空飛行訓練反対」運動はありますが、「オスプレイ反対」運動は存在しません。それを日本では沖縄の一部メディアが誤解して報じているということかと思います。
  1. 2013/10/04(金) 12:07:47|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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