“K−1”再出発興行は再起の足がかりになるか

2012.03.23


小規模にリスタートしたK−1だが、石井氏の今後の構想や、いかに【拡大】

 興行停止に陥っていたK−1が創始者・石井和義氏のもと、新組織FIKA(国際K−1連盟)で再始動、17日に後楽園ホール大会を開催した。

 ただ、これは高校生による「K−1甲子園」で、昨年11月に延期になった決勝大会を引き継いだもの。優勝者には賞金が出るが、アマチュアのため選手にファイトマネーは生まれない。それでも観客席はS席6千円と立派な入場料が設定されており、実質「支出の少ないプロ興行」である。

 「学生の選手だと親族や同級生がたくさん見に来るからチケット販売の心配もない」と興行関係者が語ったとおり、実際に千数百の客席は選手の知人らで埋まった。このクラスの会場であれば、まず赤字になることはないローリスク興行だ。

 こうした形態を「会員制興行」と呼んだのは宮田ボクシングジムの宮田博行会長。元世界王者・内藤大助を輩出した同ジムは約300人の会員を抱えており、宮田会長は「1人3枚ずつチケットを買ってもらい、あとは後援会にもお願いすれば後楽園ホールは埋まる」としている。

 同じく人気プロレスラーだった前田日明氏も、不良を集めたアマ総合格闘技大会「ジ・アウトサイダー」を同様の形で成功させている。

 「不良たちが組織で動くことをうまく利用し、彼らのチケット販売力で大会を支える形。試合で勝てば名を挙げることができるからと不良の出場希望は後を絶たない」と同団体を旗揚げから観戦する実話誌ライター。

 宮田会長と石井氏、前田氏の3者に共通するのは、内藤、K−1、プロレスでテレビ人気の恩恵を熟知していることで、だからこそテレビ依存の興行形態から脱却を模索しているのかもしれない。

 この不況において、一般販売をあてにしないビジネスモデルは地固めとしては堅実ではあるが、一方で、アメリカのUFCなど海外ではスケールの大きな興行が成功しているのも事実。最近ではシンガポールやマカオなどカジノで盛況なアジア諸国での格闘技興行も立ち上がっており、日本の有力選手も出場している。かつて格闘大国と呼ばれた日本がいま、内輪の集客を目指すのはそれと真逆で、世界に勝てなかった業界の縮小化とも映る。

 関係者によると、プロでは5月にスペインでビッグイベントの予定があるというK−1の小規模な再出発興行が、再起への足掛かりか、それとも単なる規模縮小かは気になるところだ。(ジャーナリスト・片岡亮)

 

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