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公認会計士・永嶺氏インタビュー

“半沢直樹世代”のMBA外資金融マンが伝えたい海外投資の有利さ

2013.08.06
「やられたら倍返しだ!」。テレビドラマ「半沢直樹」が瞬間最高視聴率30%を超え国民的な話題だ。半沢直樹の原作は「オレたち花のバブル組」。まさにそんなバブルの最中に外資系投資銀行マンになった男がいる。東大卒ペンシルバニア大学MBAで、元外資系投資銀行で活躍後、現在は会計事務所に勤務する永峰氏に、今だからこそ知っておきたい海外投資について聞いた。

永峰・三島会計事務所
パートナー/公認会計士 永峰 潤 氏


日本の財産だけを持つ危険性

――日本人の海外投資が伸びているのはなぜか?

たとえば富裕層を例にとると、全財産を国内にだけおいておくことに対する不安感が強まっている。言うまでもなく日本の累積債務が積もり積もって1000兆円に達していることが、不安感の背景にある。現段階では個人金融資産約1500兆円の中のまだ一部分でしかないが、次第に国外財産を選好するケースが増えている。

 

投資家サイドでは、日本の財産だけをもっている潜在的な危険性をみんなが理解し始めていて、それに対するリスクヘッジの意味合いにおいて海外投資には意味がある。これが、海外投資が加速し始めたスタートラインであり、言ってみれば理の当然だ。

――海外投資のほうが有利だという考えもある?

富裕層に限定して言うと、より財産を増やしたいという層と、自分たちの財産をいかに保全していくかという層に分かれる。より財産を増やしたいという方は積極的な投資をするだろうし、そうでない人たちはリスクとの見合いでより保守的な運用をし、財産を継承していくことが念頭にある。若い人はシンガポールに移住するなど、より積極的な行動をとる傾向がある。

ただし、大多数は「日本国内に全資産をおいておくことが本当に安全なの?」という疑問からスタートしているので、海外資産を買いたいから買っているというよりも〝逃避〟の意味合いが強い。

――多くの人が日本の将来に悲観的になっている?

日本は少子高齢化で、これからどんどん国力が低下していく。毎年80万人ずつ就業人口が減っていき、毎年100万人ずつ人口が減っていって最終的には人口5000万人の国になると考えれば、日本が再び本格的に発展することがないことはみんなわかっている。

現在、安倍政権は成長戦略を打ち出しているが、本当に必要な規制緩和はできていない。結局、それができないことには、問題は根本的に解決しない。人口減少問題に対処するには移民を受け入れなければないがこれも現実的にはむずかしい。そうすると日本経済はこれから衰退せざるを得ない。日本国内だけで投資していても、あまりリターンは期待できなくなってくると考えるのが普通だ。海外が有利だからではなく、国内が危ないから海外に投資しようという人が明らかに増えている。

そういう意味では、この海外投資ブームは一過性のものではないので、この流れはもう止まらないと思う。つまり大きな流れとして日本経済が衰退してきており、それは誰にも止められないからだ。海外にはまだまだ経済成長する国・地域がある。そういう国・地域に投資することが、結局は財産の保全につながるだろうという発想だ。最近でこそ日本の株価は上昇傾向にあるが、海外の短期筋が買っているだけで、日本のファンダメンタルズは何も変わっていない。完全なる投機だ。

―― 一部には日本を脱出する動きもあるようだが。

究極の姿は人が移動して国籍を移すことだが、日本でこの動きがさらに広がるとは考えにくい。なぜならば、日本が一番暮らしやすいからだ。日本のインフラや安全が日本人にとって一番心地よく、言葉や食事の問題もない。日本より暮らしやすいところはどこにもないと多くの人が考えている。海外に居住した経験がある人ほどこの傾向は強い。

日本人が海外の成長メリットを生かすには、日本にいながら海外に金融資産を保有するか、あるいは海外に不動産を持つことしかない。ただし、海外不動産投資は、まず日本で不動産投資の経験がある人に限られるだろう。その延長線上で、海外不動産を買っているというのが実態だ。

中間マージンが高い日本の証券会社の問題点

――海外投資のルートは?

今では日本の証券会社でも海外投資のメニューを揃えているので、以前よりはるかに海外投資にアクセスしやすくなっている。以前は海外の証券会社などに直接、自分で手続きをしなければならなかったものが、今は日本の証券会社を通じて海外投資ができるようになった。

――日本の証券会社の手数料が高いのが問題になっているが。

確かに日本の投資信託は手数料が高く、自社の商品販売を優先する傾向がある。また、海外のファンドを日本人向けに組成する場合、多くの中間マージンが乗っている。海外ファンドはシンガポールで買えばはるかに安い。これを日本で買うと高くなるのは、〝日本化〟するためのコストが乗るからだ。

海外のものを英語でそのまま買えばはるかに安く買えるが、日本語に直すのにお金がかかる。たとえばベンツを日本で買うと現地価格の1.2倍になる。これはスピードメーターから何から日本語に直さなければならないからだ。ベンツのSクラスは日本ではたかだか1万台しか走っていないのに、1万台のために日本語に変えるコストがかかる。

投資信託も目論見書などを全部、日本語に直さなければならない。これも〝日本化〟のコスト。その分コストがかかるので日本で買うと高くなるのは当然だ。これを英語のままで、海外で買えるなら、安く買えるだろう。

――海外のファンドに日本から直接投資するルートはどうか?

問題はまだ日本人は大手信仰が強いことだが、投資対象に対する信頼感が担保されるならそれが一番効率がよい。信頼することができて、なおかつ高い利回りがとれるならそれに越したことはない。日本人はまだどうしても大手金融機関の商品だから安心という感覚が強いが、投資対象が信頼できることさえ理解できるなら、アブラハム・プライベートバンク が助言する、「いつかは ゆかし」 のようなビジネスモデルは有効だろう。余分な中間手数料が省ける分、有利な投資ができる。

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    2013.08.06

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