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同志社大学・浜矩子教授インタビュー

個人投資家は騙されるな!これからもっと日本株は下がる

2013.06.24

同志社大学・浜矩子教授




アベノミクス相場もつかのま、日本の株式市場は5月に急落した。為替も乱高下中。そもそもアベノミクスは大丈夫なのか?今、アンチ・アベノミクス論者として注目を浴びる、同志社大学の浜矩子教授に聞いた。

アベノミクスは時代錯誤

――現状でアベノミクスをどう評価するか?

アベノミクスは政策全体の体系が時代錯誤だ。言ってみれば「浦島太郎の経済学」。成長戦略が目玉だとしているが、日本経済はもう十分に成長をしてきて、高いレベルで成熟状態に達している。求められているのはさらに成長することではなく、これまでの成長の果実として形成された豊かさや富をどう分かち合っていくかだ。アベノミクスは問題意識がずれている。

――第一の矢である金融政策をどう評価するか?

金融政策について言えば、これはもう金融政策と呼べるようなものではなく、日本銀行が「バブル製造装置」と化している。

――第二の矢である財政戦略は?

財政政策は時代錯誤的成長戦略に対応したバラマキ型になっている。お金もないのにいまだにそんなことをやっている。

――アベノミクスは政策のすべてが間違っていると?

アベノミクスは今、日本の経済社会が直面している状況と非常にかけ離れたところにある。日本の経済社会が今日的な環境にうまく波長が合い、新たな局面に向かって前進していくことにブレーキをかけている。過去に向かって日本の経済社会を引きずり戻そうとするようなアプローチだ。いみじくも「日本を取り戻す」というフレーズに、後戻りしたいという思いが非常に集約的に表れている。

アベノミクスなるものの出現のおかげで、日本はものすごく効率の悪い、後戻り型の道草をくわされる。ようやく新たな時代、新世界に向かって足を踏み入れようとしていた日本を、過去の世界に引きずり戻そうとするのがアベノミクスだ。しかし時代の趨勢はそんなことを受け入れないので、結局、大騒ぎをして、後戻り型の道草をくわされた結果、また本来の流れに戻っていくことになるだろう。

――本来の流れとは?

成熟経済をどううまく回すかということで、そのポイントは蓄積された富の分かち合いにある。政策としては分配政策であり、民間ではもっと労働分配率をあげることなどが必要だ。

地域共同体が従来に比べてもっと主たる役割を果たすことも必要。地域レベルのほうが、中央政府が日本国全体について考えるよりは、身近なところで的確にデザインを描ける。地域社会が主要な役割を果たす経済社会構造にもっていくことを含めた、分配重視型の経済社会を作ることだ。

日銀は政府への金貸しになった

――黒田日銀をどう評価するか?

新規に市場に出回る国債の7割を日銀が買い取るということは、国債が決して売れ残ったり、買い手がつかなかったりすることがないことを保証するために、日本銀行が国債を売買すると宣言したようなものだ。

結果的に失敗しているが、日銀がそのようにオペレーションすることによって、国債相場が絶対に崩れたりしない、長期金利が跳ね上がったりしないという状態を担保することに大きな政策上の優先度を置くことを宣言した。

政府が資金枯渇しないように、必要に応じて資金を供給するということを政策の要におくということは、日銀が実質的に政府のための金貸しになったに等しい。

――それにもかかわらず長期金利は上昇しているが、2%のインフレ目標を置きながら、イールドカーブ全体の金利低下を促すという政策が当初から矛盾していたということか?

明らかにそうだ。インフレ率に見合った程度の金利が支払われない経済はうまく回らない。日銀は理屈に反したことをやるために体を張るという感じのスタンスになった。しかし、経済のまっとうな力学に逆らうということが、そんなにいとも簡単にできることではないということを、彼らは今、思い知らされている。

市場が大混迷に陥る可能性

――アメリカがQE3の縮小に動き出せば、日本が真逆の政策で緩和を進めると激しい円安を招くかもしれない。日銀はインフレ目標2%の旗を降ろさざるを得なくなるのでは?

彼らがまっとうに理屈でつじつまを合わせることを考えれば、何かを諦めなければならないということになってくる。2%のインフレ目標を諦めるのか、長期金利の低位安定を諦めるのか、円の急落を受け入れるのか。どんどんほころびが出てきているので、まっとうに考えれば、2%目標の旗を降ろさざるを得ないかもしれない。

ただし、あそこまで政策の目玉にしてしまっているものを、降ろすということは考えにくい。派手に掲げた目標の看板をそう簡単に降ろすわけにもいかない。しかし、それを掲げている限りつじつまが合わなくなってくる。そうしているうちに収拾がつかなくなっていく恐れもある。そうすると為替も株も債券も、市場が大混迷に陥るかもしれない。すでにその兆候もある。
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