ソフトバンク戦で３セーブ目を挙げた涌井

　使えるものなら何でも使う。逆転でのＣＳ進出を目指す４位西武が、今オフの他球団へのＦＡ移籍が有力視される涌井秀章投手（２７）の“下心”に期待を寄せている。

　今季５勝７敗で先発失格の烙印を押された涌井にとって、守護神を任されるようになった現在は汚名返上のラストチャンス。もちろんチームのために、との思いもあるだろうが、今オフに国内ＦＡ権を行使するとなると、まだまだエース級の力があるところを見せつけておく必要がある。

　ただでさえ涌井は推定２億２０００万円と高年俸で、ＦＡで獲得を目指す球団にとっては旧年俸の５０％＋人的補償、もしくは旧年俸の８０％が必要となるＡランクの選手。いくら過去に輝かしい実績があるとはいえ、まだ“賞味期限内”であることをプレーで証明してくれないことには、容易に手は出せない。そんな諸事情をこれ幸いと考えているのが元エースを失いかねない西武で、関係者は「自分の価値を上げるためにも、今の涌井は下手な投球はできない。今なら全力で頑張るはず」と断言する。

　実際に渡辺監督は「涌井が一番状態がいい」と残り試合でフル回転させる方針で、６試合連続登板となった２日のソフトバンク戦（西武ドーム）でも「８回裏に栗山の本塁打がなければ、涌井を（９回から）２イニング行かせるつもりだった」（杉本投手コーチ）

　気迫のこもった投球で３セーブ目を挙げた涌井も「最近、真っすぐがいいので何とかなると思っている」と疲労の色はまるでない。チーム事情と個人の“利害”が一致した西武は３位ソフトバンクに１ゲーム差と迫り、今季最高の上げ潮ムードだ。