【大谷聡】東京電力と東北電力が今年8月、使用済み核燃料の再処理関連施設が集中する青森県六ケ所村に対し、「漁業振興費」として計2億円を支払っていたことがわかった。東電福島第一原発事故による賠償や原発停止に伴う経営難を理由に両社は電気料金を値上げし、汚染水漏れでも国費が投入される中で、立地自治体への不透明な支出を続けていた。
電力会社から原発立地自治体への寄付金は、施設受け入れの見返りという趣旨などが問題視されてきた。東電は公的資金投入が決まった2012年5月、福島事故賠償のため「寄付金は廃止する」と表明。しかし、六ケ所村への今回の支出の性格について経済産業省は「寄付金に近い」とみている。
朝日新聞が入手した資料や六ケ所村関係者によると、今回の東電からの入金は8月30日付で1億3340万円、東北電は同26日付で6660万円。入金は5〜6月ごろの予定だったが、東電側から「経営が苦しく、入金は分割にできないか」と村に申し入れがあり、協議が難航。最終的には8月末に一括して入ったという。
この資金は六ケ所村に隣接する東通(ひがしどおり)村に建設予定の東通原発に絡み、立地地域周辺の漁業を支援するとして10年度に始まった。以降、東電と東北電が毎年計2億円、5年間で総計10億円を六ケ所村に出すことで口頭で合意。12年度まで1年ごとに東電が1億3340万円、東北電が6660万円をそれぞれ負担してきた。
六ケ所村によると、一連の資金でイカ釣り漁船を整備したり、コンブやウニの養殖施設を設置したりしているという。