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米政治の混迷―妥協する分別を持て

妥協点を探る良識を失った政治が国を無用な混乱に陥れる。そんな事態が民主主義大国を自任する米国で起きている。米国の会計年度は10月から始まる。だが、連邦議会は与野党の対立[記事全文]

竹富の教科書―国が介入することか

市町村がどの教科書を使うかについて、国は極力その判断を尊重すべきではないか。沖縄県八重山地区の教科書採択が割れている問題で、文部科学省が採択のやり直しに応じない竹富町に[記事全文]

米政治の混迷―妥協する分別を持て

 妥協点を探る良識を失った政治が国を無用な混乱に陥れる。そんな事態が民主主義大国を自任する米国で起きている。

 米国の会計年度は10月から始まる。だが、連邦議会は与野党の対立により予算が組めずにいる。そのため連邦政府の一部が1日から閉鎖された。

 クリントン政権時代以来、約17年ぶりの異常事態だ。長びけば米国の経済だけでなく、世界の安定も脅かしかねない。

 米議会は大局観に立った分別を取りもどし、政府機能を早く正常化させる責任がある。

 この閉鎖で自宅待機となった職員は80万人に及ぶ。国防や治安などの活動は維持されるが、国立の公園や博物館などが閉まった。中小企業への公的融資の事務なども滞りかねない。

 商務省や労働省は経済統計の発表を中止した。連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策にも影を落とす恐れがある。

 オバマ大統領は、来週のアジア太平洋経済協力会議(APEC)に併せてマレーシアとフィリピンを訪れるはずだったが、中止せざるを得なくなった。

 議会には別の難題も近づいている。政府債務の上限である。今月17日までにその引き上げに合意できなければ、国の資金繰りが限界を迎える。

 最悪の場合、米国債の利払いなどが滞る債務不履行(デフォルト)が起き、世界の金融動乱にも発展しかねない。これは何としても避けねばならない。

 近年の米国が陥った「分裂政治」の根底には、政府の役割をめぐる理念の対立がある。

 福祉を重んじ、財政再建に増税も組み入れる民主党は「大きな政府」派。国の支出減で赤字を減らし、減税もめざす野党共和党は「小さな政府」派。

 問題は、その違いを認めつつ折衷策を築く政治の知恵が働かないことだ。下院の共和党は、オバマ政権による医療保険制度の改革を標的とし、その予算を削ることを求めて譲らない。

 さらに混迷が深まったのは、シリアへの軍事介入を見送ったオバマ政権の求心力が落ちると読んだ共和党の保守派が、来年の中間選挙をにらんで強気の駆け引きに出たからでもある。

 だが、一つの政治課題にこだわって、国家予算全体を滞らせる頑迷さを国民が納得するはずはない。共和党の穏健派はただちに事態を収拾させる党内調整を急がねばならない。

 愚かな政治が国を人質にしている。米国ではそんな批判が高まっている。だが、最も迷惑を被る人質は、世界経済であることを忘れないでもらいたい。

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竹富の教科書―国が介入することか

 市町村がどの教科書を使うかについて、国は極力その判断を尊重すべきではないか。

 沖縄県八重山地区の教科書採択が割れている問題で、文部科学省が採択のやり直しに応じない竹富町に、地方自治法に基づく是正要求をするという。

 国は市町村に違法行為があれば、都道府県に是正要求を指示できる。過去に2市町にしか適用していない異例の措置だ。

 だが、経緯を振り返ると、竹富町に「違法行為」の責めを負わせるのは一方的に過ぎる。

 おととし、竹富・石垣・与那国3市町でつくる「採択地区協議会」で、育鵬社版の中学公民教科書が選ばれた。竹富町教委は「手続きがおかしい」として東京書籍版を採択した。

 文科省は協議会の決定に従うよう求め、竹富町に教科書を無償給付しないことにした。町は有志の寄付金で東京書籍版を買って中学生に配っている。

 東京書籍版は国の検定に合格した教科書である。生徒はその教科書を無償で使えているのだから、教育を受ける権利が侵害されているわけではない。

 そもそも根本の原因は二つの法律の矛盾にある。

 「教科書無償措置法」は採択地区内では同じ教科書を使うと定め、「地方教育行政法」は各教委に採択権があると定める。

 国は事後に「無償措置法が優先」と閣議決定したが、当時はルールが定まっていなかった。竹富町が一方的に間違っていたとはいえない。

 このため、文科省は内閣法制局とも協議して「無償にはできないが、竹富の採択行為が無効とまではいえない。町が自費で教科書を買うことは禁じられない」との見解を示した。

 是正要求は、これと姿勢が首尾一貫していない。

 広域採択制度があるのは、複数の自治体で協力した方が、教科書を選ぶ読み込み研究や事務の負担が軽いからだという。つまりは効率の問題といえる。

 一方で、理想としては教科書は学校や市町村が教育方針に合わせて選ぶべきものだ。

 09年3月の閣議決定には、学校教育の自主性、多様性の観点から、将来は学校ごとの教科書選びも検討すべきだとある。

 そのうえで、「町村単独での採択地区の設定を含め、採択地区の小規模化について検討」すると書かれている。

 この考え方に立てば、国は自ら負担してまでこの教科書を選んだ町に、是が非でも違う教科書を使うよう強いるべきではない。効率は自主性、多様性より重んずべき価値とはいえまい。

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