カナロコ by 神奈川新聞 10月4日(金)0時0分配信
続投を決断した指揮官を祝うどころか、晴れ舞台に水を差すような敗戦だった。「こんなぶざまな野球をしたら、こうなるよな」と厳しい表情を浮かべる中畑監督。中日とのゲーム差は2・5に広がり、最後の望みを託した4位の道はついに途切れた。
今季の戦いぶりを象徴するゲーム。投手陣が8四死球を絡めて7失点と自滅した。1年前にファンの前で約束したクライマックスシリーズ(CS)の舞台、来季もそう簡単にはいかなそうだ。
「まだ、やり残したことがいっぱいある」。中畑監督の心は揺れていた。CS進出が絶たれ、辞意を口にした。「クビと言われれば、そのつもりだった。何も迷いはなかった」。一度は決めたはずの覚悟を翻意させたのは、高校生の少年から届いた手紙だった。
7、8枚にしたためられたのは5年連続最下位のチームを浮上させようと奮闘を続けた指揮官への感謝の言葉。そして最後、こう記されていた。
「辞めれば、責任を取ったことになるのでしょうか」
同じ言葉を甲子園や神宮、そして横浜スタジアムで、ファンは何度もベンチに向かって叫んでいた。「手紙を読みながら泣きそうになっちゃった」。純粋な言葉だからこそ、逃げ出すことはできなかった。
2年間の功績は決して順位だけではない。今季の観客動員数は昨年比で2割超、2011年と比べると3割増のペース。「勝つことも大事。しかし、ファンに夢を与えてくれたことも大きい」(春田オーナー)。自ら進んで球団の広告塔となり、ファンサービスに徹する姿もスタンドの心をつかんだ。
「必要なのは、人間革命」。再びチームの変革を掲げた指揮官。「CSどころか、優勝が狙えるというチームにきっとなる」。今度こそ、ファンに夢を見せてほしい。
最終更新:10月4日(金)0時0分
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