dot. 10月2日(水)7時11分配信
公害病「イタイイタイ病」の原因物質でもある、カドミウム。このカドミウムに汚染された米が中国では出回っており、口にした農村部の人々は公害病のような症状に悩まされているという。この「カドミウム汚染米」問題を中国社会に知らしめたのは、週刊誌「新世紀」2011年2月14日号の特集「カドミウム汚染米の殺意」だった。同特集を担当した環境科技面責任者の宮靖記者に話を聞いた。
――宮さんが担当した特集「カドミウム汚染米の殺意」は、中国社会に大きな衝撃を与えました。この問題に注目したきっかけは何だったのですか。
「大気や水質の汚染に比べて、あまり注目されていなかった土壌汚染に関心があった。この問題は全面的な調査が行われておらず、真相は闇の中だったが、庶民の健康に深刻な影響を与えていることはわかっていた。そこで土壌汚染が原因のカドミウム汚染米に注目したわけです」
――同記事は、ニュースサイトやミニブログ「微博」などに盛んに転載されたばかりでなく、その年春の全国人民代表大会や、全国政治協商会議で話題になりました。最終的に、衛生部長がコメントを出す異例の事態となりました。
「衛生部の陳竺部長はこの時、カドミウム汚染米は特定地域の問題に過ぎないが、汚染原因の企業は積極的に取り締まるとしました。また、土壌汚染がひどい地域では、農作物の栽培を禁止する計画があることを明らかにしました」
――この問題は10年ほど前から指摘され、旧聞に属するものでしたが、11年の報道はなぜこれほど関心を集めたのでしょうか。
「中国社会の変化が大きいですね。08年の北京オリンピックを境に環境保護への関心が高まり、今では庶民の大きな関心事になっています。主要新聞・雑誌はこぞって環境保護面を設けています。また、微博などのネットメディアの普及の影響も大きいでしょう」
――宮さんの警鐘もむなしく、今年、広東省で大きな騒動(湖南省産の米から基準値を超えるカドミウムが検出されたと、メディアで次々に報道された)に発展しました。
「残念ですが、予想できたことです。中央政府も、カドミウム汚染米産地の湖南省政府も、迅速に抜本的な対策を打てなかったからです。中国では国が動かなければ、どんな問題も解決できないのです」
――カドミウム汚染米をはじめ、中国では食品汚染問題が多発しています。解決方法はあるのでしょうか。
「食品の生産段階から最終消費段階までを確認追跡できる『トレーサビリティー』の導入がカギになると思います。ただ中国では、無数の零細農家が地方政府から借り受けた土地で農作物を生産し、それを仲買人が買い集める仕組みで、流通システムが非常に複雑です。こうした環境での『トレーサビリティー』の導入はなかなか難しい。有効な解決策が見つからないなか、汚染問題は今後も続いていくでしょう」
※週刊朝日 2013年10月11日号
最終更新:10月2日(水)12時19分
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