福井県の西川知事は3日、原発の廃炉時代に備え、技術的課題の整理や原子力に代わる産業育成などに専門的に対応する部署を月内に新設する方針を明らかにした。廃炉対策の専門の部署設置は原発立地道県では初めて。県内の原発は高経年化(老朽化)が進んでいることを考慮し、全国に先駆けて取り組む必要があると判断した。
県議会予算特別委員会で方針を示した。
国内の原発は新規制基準を満たさなければ運転再開が困難になり、今後廃炉に追い込まれる可能性も出てくる。県内では日本原電敦賀2号機直下の破砕帯が活断層と認定され、再稼働の見通しは立っていない。また13基の商業炉のうち6基が運転開始から35年以上たち、高経年化が進行。新基準では運転年数を原則40年に制限しており、延長の例外規定があるとはいえ、3基は40年を超えているのが現状だ。
予算特別委で西川知事は「原発の廃炉はいずれ生じてくる課題」との認識を示し「嶺南地域の今後の発展のためには、原子力に代わる産業の育成や廃炉に関するビジネス育成など、あらかじめ対策を講じておくことが必要。新たな組織を設置する」と述べた。
知事は福井新聞の取材に対し、県の原子力行政を所管する安全環境部内に専属の職員を配置する課内室を設置する見通しと説明した。配置人員などは今後詰める。
廃炉に関する技術的な課題の研究に加え▽廃炉ビジネスをいかに県内企業の活性化に結び付けるか▽原子力産業が根付いている嶺南の産業構造をどう転換するか▽新たな電源の開発―など幅広い課題に取り組むとみられる。産業育成では産業労働部などとの連携も重要な要素となる。
国内の原発の廃炉をめぐっては、1998年に運転を終了した日本原電東海原発(茨城県)が商業炉として初めて作業に入り、2020年までに完了する計画。研究炉では日本原子力研究開発機構の新型転換炉ふげん(敦賀市)が03年に運転を終え、33年度の完了を目標とした廃炉に入っているが、工程は当初計画より大幅に遅れている。