汚染水流出:傾斜知りつつ設置 東電の貯蔵タンク
毎日新聞 2013年10月04日 00時24分(最終更新 10月04日 02時12分)
東京電力福島第1原発の貯蔵タンク(直径約9メートル、高さ約8メートル、容量450トン)から汚染水が漏れた問題で、東電は3日、タンクの設置場所に傾斜があることを把握しながら設置していたことを明らかにした。設置時は「許容の範囲内」と判断していたが、東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は3日の記者会見で「計画に甘さがあったと言わざるを得ない」と陳謝した。
事態を重くみた原子力規制庁は4日、東電の広瀬直己社長を呼び、一連の汚染水問題への対応を聞く。
漏れたのは、海から約300メートルにある「B南」エリア。タンクの天板と側板の間から約0.43トンがあふれた。タンク内にはベータ線を出すストロンチウム90などの放射性物質が1リットル当たり58万ベクレル(国の放出限度は同30ベクレル)含まれている。海につながる近くの排水溝内の水から同1万5000ベクレル検出された。東電は「汚染水の一部は、排水溝経由で港湾外の海へ漏れたが、海水では検出限界未満だ」としている。
タンクは、事故直後の2011年4月に設置。東西方向に他の4基と配管でつながっている。地盤は、海のある東側に向かって傾いている。漏れたタンクは最も低い場所にあって、少なくとも13センチ傾いていた。水位計は5基のうち、一番地盤の高い西側のタンクしかついていなかった。
東電によると、9月中旬に台風による雨水が、タンクを囲むせき(高さ30センチ)内にたまり、外部に漏れた。そこで、当初は容量の97〜98%まで水を入れていたが、緊急対策として98〜99%まで水を入れることを決定。今月2日午前8時35分、雨水を回収しタンクに移送する作業に着手した。
作業員が同午後0時40分、水位計を確認したところ、水量は98・6%だった。同2時半ごろの目視では、タンク中央部で天板から約10センチまで水が入っていたが、タンクの東端で約3センチまで水が迫っていたことは確認していなかったという。3日午後3時半ごろ、水漏れは停止した。
東電は、8月に別のタンク群から約300トンの汚染水漏れが発覚したことを受け、1日2回の巡回を4回に強化している。今後の対策について、尾野氏は「監視を徹底する。だが、全体のタンク容量に余裕がない。すべてのタンクへの水位計設置が完了する11月までは現状のまま運用する」と語った。【鳥井真平、高橋隆輔】