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ローカリズムに敗れた維新 堺市長選を振り返って

2013年10月3日

 日本維新の会が掲げ、大阪府と大阪、堺両市を再編する「大阪都構想」の是非が争点になった堺市長選で、再選を果たした竹山修身氏の勝因は「中世の自治都市」と呼ばれた地域固有の歴史を引き合いに「堺をなくすな」と住民感情に訴え掛けた戦術にある。惨敗を喫した日本維新共同代表の橋下徹大阪市長は「堺はなくならない。大阪のエンジンになると説明すれば納得してもらえる」とあくまでも堺市を含む都構想の実現にこだわるが、堺市の独自性を前にその道のりは険しい。

堺市長選で竹山陣営が掲げた「堺」ののぼり=9月28日、堺市南区の泉ケ丘駅前

■独自の誇り

 「堺市が独立できるというなら昔のローカリズム(地域主義)をあおってもいいが…」。日本維新所属の国会議員は選挙期間中、竹山陣営の戦術を恨めしそうに見ていた。

 堺市長選に元市議を擁立した日本維新側が手を焼いた「昔のローカリズム」−。戦国時代に南蛮貿易で栄え、今井宗久や千利休などの「会合衆(えごうしゅう)」と呼ばれた商人が自治的な都市運営をしていたという堺にはどんな土壌があったのか。

 「千利休は(時の権力者である)豊臣秀吉にペコペコする立場ではなかった」とは堺学に詳しい大阪大学名誉教授の山中永之佑氏(堺市在住)の弁だ。堺が持っていた文化的な伝統と巨大な経済力、財力を基盤に「千利休をはじめ当時の堺人には大阪人とはまた異なる独自の誇りと自己決定意識があった」と説き、現在の堺市民についても「旧堺の人の心の中には中世の自治都市の名残がある」と分析する。

■サカイ連呼

 泉北ニュータウンや私立大学が立地する堺市の住民には移入層が一定程度あるとはいえ「堺をなくすな」「堺は一つ」を連呼した竹山陣営の勝利は市民意識の表れと言える。

 「サカイ、サカイ、サカイ(の連呼)は引っ越し屋さんに任せておけばよい」。橋下氏は選挙演説でいら立つそぶりを見せていたが、山中氏は、仮に大阪都構想が実現したとしても「堺の文化的伝統を尊重する都政をしなければ住民の心は都から離れる」と堺の市民感覚を説いた。

 「堺にできる(特別)区の中で独自性を発揮してもらえばよい」。9月29日夜、橋下氏は敗戦を認めた記者会見でこう語った。その言葉通り「独自性」を尊重する意思が伝わらなければ、市民の心をつかむことは難しい。

 ローカリズムに苦戦した日本維新にとって、都構想実現の課題は土着の市民に寄り添う姿勢だろう。