概要
新潟県出身。新潟県立新潟高校を出て東京大学法学部に入学、卒業。
昭和54年(1979年)に旧大蔵省に(現財務省)に入省した。
その後は同省内で官房調査企画課、銀行局課長補佐、主計局課長補佐、総合政策課長、文書課長、主計局次長、大臣官房総括審議官、国際局長、主計局長などを務めた。
財務事務次官就任直後の批判
彼が財務事務次官に就任した頃から、「チャンネル桜」などの保守系メディアや保守系ウェブサイトでは彼に対する批判が増えはじめた。
彼は以前から公共事業合理化・重点化による歳出削減の重要性を主張していた。これは、当時の第二次安倍内閣の経済政策「アベノミクス」の基本方針の中でも「国土強靭化」とはある意味両立が難しいものである。そこから、彼が財務事務次官に就任した事に対し、アベノミクス方針にそぐわない人事であると見て批判する論調が多かった。この頃「チャンネル桜」の番組では彼を名指しで「緊縮財政原理主義者」等と批判している。
保守派には安倍晋三総理大臣及び第二次安倍内閣を支持する立場の者が多く、そしてその政策の根幹アベノミクスに関連する事項には敏感であった。また、彼は防衛費についても合理化・重点化による削減を推進していた。防衛を特に重要視する保守系論者からはその点からも敵視される傾向があった。
消費税増税に絡んだバッシング
しかし2013年9月中旬頃から彼への批判は烈しいバッシングという域に加熱した。
きっかけは報道の偏り?
そのきっかけはその頃にマスコミ各社が報じ始めた、「消費税を予定通り2014年4月から消費税を8%に上げる事を安倍首相が決断した」「安倍首相が方針を固めた」といったニュース群であった(9月12日の読売新聞報道が皮切りとなり、テレビ朝日、日本経済新聞、毎日新聞、テレビ東京、東京新聞、北海道新聞、ウォールストリートジャーナル、テレビ東京、北日本放送、佐賀新聞、スポーツニッポン、河北新報、神奈川新聞、琉球新報、高知新聞、奈良新聞、中国新聞などが。9/20頃からはFNN、NHK、日刊ゲンダイ、北國新聞、愛媛新聞等が報じている)。
だがこれらの報道のニュースソースは「政府高官」「政府関係者」「自民党幹部」などの匿名かつ曖昧なものであったり、「新聞各社が報じた」との孫引きであったり、「~する見通し」といった予想混じりのものであったりで、内閣の公式発表ではなかった。
こういった報道に対して菅義偉官房長官からは公式に会見で「決断したという事実はない」「首相が判断されるのは10月上旬である」「その際には会見を開き国民に説明する」と明確に否定する場面もあった。甘利明内閣府特命大臣(経済財政政策、経済再生担当、社会保障・税一体改革担当)も「首相は10月1日の日銀短観を参考としたうえで判断されるはずだ」ともコメントしている。さらに9月24日には安倍晋三内閣総理大臣自らが記者団に対し「まだ消費税を引き上げるかどうか決めていない」と明言した。
しかし、そのような否定については比較的報道がなされなかった(日本経済新聞、ロイター、世界日報、ブルームバーグ、ニューズウィーク、財経新聞、朝日新聞、時事通信などが報じてはいるが、目立たない報道となった。)。
保守派の怒りと犯人捜し
こういった現象に対し、安倍首相を支持する立場の者からは「安倍首相が消費税を増税を押し進めようとしているというイメージを強めて支持率を落とそうとするマスコミの偏向報道だ」との反感が増した。消費税増税は国民の多数から反対されている政策であり、これを「押し進めた」という印象が残れば支持率の低下は免れない厄介なものであるためだ。
さらに、消費税増税はアベノミクスの柱のひとつである「インフレターゲット、デフレ脱却」という目標に逆風を吹かせる可能性が以前から取りざたされているものである。つまりアベノミクスでの景気回復を喜ばしく感じている者から見ると安倍首相には選んでほしくない政策でもあり、消費増税に関する話題にはナーバスにならざるを得ない。
そういった反感・怒りのムードが高まっている中で、「安倍首相が消費税増税などという間違った決断をさせられそうになっている裏には何者かが暗躍しているのだ」という「犯人捜し」を始める向きもあった。その中で名が挙がった内の一人が木下康司である。その他には、麻生太郎や甘利明を消費増税に前向きな「悪玉」として挙げる者も居り、逆にその文脈の中で、消費増税に慎重な「善玉」として菅義偉を評価する者も居た。
なぜ木下康司なのか
彼は「犯人」として扱われる好条件がそろっていた。
上記のように元々保守派から嫌われていたという背景があった。その嫌われていた理由も「緊縮財政支持者であるから」であり、消費税の増税を支持しているのではないかと想像しうる。
かつ「財務事務次官」という経済政策に関与することができる立場にあった。しかもその立場は「国会議員」ではなく「官僚のトップ」である。この事も「犯人」として扱われるための好条件であった。
「我々が支持する政治家と対立して、巧みに悪しき経済政策を押し付ける、奸智に長けた官僚」とのイメージが容易に醸成されうるためである。
ニコニコ大百科において
この頃の彼に対するバッシングの過熱ぶりは本記事をはじめとしたニコニコ大百科・ニコニコ動画でも確認できる。
日本人大虐殺を考え、消費増税を主導する黒幕筆頭。元財務事務次官勝栄二郎の直系の増税主義者。
アベノミクスで徐々に景気回復の軌道に乗る日本経済に水をぶっかけ冬の寒空に病人を放り出すが如き仕打ちをしているリフレ派(ひいては、日本国民)の主敵。
以上三行が、9月25日に書き足されるまではこの記事の本文だった。
さらに2013年9月21日10時59分には木下康司(売国奴)という別の大百科記事まで作成された。特に内容はなく本記事に転送されるだけの項目であるため、その記事を作成した者が持っていた「木下康司は売国奴なのだ」という信条を発表する目的で作成されたものと思われる。
バッシングに対する反論、そしてそれに対する再反論
では、実際に彼は悪玉でガンで消費財増税の立役者なのか?
これを考えていくと、いくつかの反論も可能である。さらにそれに対する再反論も試みる。
消費税の増税は彼の財務事務次官就任後に決まったものではない
消費税増税は実は2012年に既に決定しているものである。当時の民主党政権(野田内閣)が「社会保障と税の一体改革」としてプランを構築して「消費増税関連法案」を提出し、これに民主党・自民党・公明党が修正を加えつつも賛成し可決している(よって2013年9月ごろに話題となっている「安倍首相による消費税増税の決断」とは、「増税すると決定するかどうか」という決断ではない。前から決まっていた増税について「変更するかどうか」という決断である。)。
つまり木下康司が財務事務次官に就任する以前から消費税増税はすでに決定しており、さらに国会議員の多数もそれに賛成しているのである。
ただしこの視点からは、「見なおすチャンスをフイにしようとしている」「アベノミクスでうまくいっているのだから当時と事情が異なる」という再反論もできよう。
消費税増税は日本経済の専門家の間では少数意見ではない
安倍首相は消費税増税が経済にどのような影響を及ぼすのか2013年8月の末に6日間の有識者会議「今後の経済財政動向等についての集中点検会合」を開いている。
この会議の詳細は内閣府のウェブサイト上で公開されており有識者の顔ぶれやそれぞれが用意した資料すら閲覧することができるが、報道によると「集められた有識者60名のうち7割以上が消費税の増税に賛成した」という。集まったメンバーは経済・金融の専門家ばかりではないので「経済専門家の7割が賛成した」とすることはできないが、専門家以外のメンバーは増税反対派であることが想定しやすい「子育て支援NGO」などのいわゆる庶民派が多いので、むしろ経済・金融専門家のメンバーに絞ればもっと多くの人間が賛成していると思われる。
つまり消費税の増税が必要であると考えている経済専門家は数多い。保守派には「とんでもなく馬鹿げた悪手でありアベノミクスを破壊するもの」と扱われることも多い消費税増税であるが、そうは考えずむしろ必要なものと考える経済専門家も多数存在するのである。
ただしこの有識者会議については、「消費税の増税に賛成の者ばかり集められた偏った人選だ」という再反論もできる。この会議の有識者メンバーの人選に携わった甘利明内閣府特命大臣氏は日経新聞の取材に対して「バランス良く賛成派と反対派を入れようとしたが、人選をしていくなかで反対派の対象者が少ないと実感した」と述べている。
第二次安倍内閣により任命されている
また、財務事務次官は内閣府が事前調整したうえで財務大臣によって任命されるものである。また木下康司は政権交代以前から事務次官として居座っていた残留組ではなく、第二次安倍内閣発足後に財務事務次官として任命された人間である。
つまり安倍晋三率いる内閣、および財務大臣の麻生太郎が木下康司を任命したわけであり、「政治家の意に沿わない人間が政権に入り込み、企みを巡らしている」という非難は的を射ていない。
しかしこれについては「政治的配慮から彼を選ばざるを得なかった」「内閣も一枚岩ではなく増税をたくらむ悪しき勢力が彼を選ばせたのだ」との再反論がなされるかもしれない。
政治家に「自らの企みを押し付ける」事ができる程の具体的な権力を持っていない
木下康司は官僚のトップであり大きな権力を持っている。しかしそれはあくまで「官僚のレベルの中では」の話であり、消費税増税という非常に大きな政策を政治家の意に反して押し付ける方法を有しているとは考え難い。「木下康司が消費税増税を操っているのだ」という主張は多いが、「具体的にどうやって?」というところは描写されることがほとんどない。
これについては「政治家の中にも同じ企みの元で呼応するシンパがいるのだ」「官僚組織の長い歴史の中で政治家をコントロールする権謀術数は磨かれているのだ」との再反論が試みられるかもしれない。
安倍首相自身が「責任をもって判断をする」と発表した
安倍首相は2013年9月17日に行われ9月22日に放映されたテレビ朝日のインタビューにおいて消費税増税のリスクについて「10月上旬に判断する私の責任」「結果にも責任を持たないといけない」と述べている。
これについては「事実がどうあれトップはそう言わざるを得ない」「テレビ朝日の番組である以上、テレビ局の都合で一部の発言だけを強調するように編集できる」との再反論もできるだろう。
バッシングするサイトなどが明確な根拠を持っていない
木下康司を強い口調で攻撃するサイトは複数あるが、「根拠や情報ソースがあれば示した方が良い、無いならばそれを明らかにするべきである」という誠意を持っているらしいサイトでは以下のような但し書きが記してある。
「事実関係を明確にする物が無い内容がある、という事をはじめに理解していただきたい」
「増税派の首魁であるという明確なソースを提示出来ない事をお許しただきたい」
このように、批判サイトですら、バッシングに明確な根拠がないということについては認めている。
これについては「増税の主役かどうかわからないとしても、増税賛成派というだけでも攻撃すべきだ」「正義である保守派と相容れない政策をとってきた人物は悪人であり、根拠がなかったとしてもきっと増税のような極悪非道な事を仕組んでいるはずだ」との再反論をする人間もいるかもしれない。
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関連項目
http://dic.nicomoba.jp/k/a/%E6%9C%A8%E4%B8%8B%E5%BA%B7%E5%8F%B8
ページ番号: 5145329 リビジョン番号: 1901707
読み:キノシタヤスシ
初版作成日: 13/09/21 09:52 ◆ 最終更新日: 13/10/01 21:12
編集内容についての説明/コメント: 国会図書館の資料で昭和50年代に官房調査企画課に名前が。あとバッシングサイトに気になる文章…サイト紹介がてらそれも足したり。色々
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