汚染水流出:「いつまで足引っ張る」憤る漁師、募る不信感

毎日新聞 2013年10月03日 20時59分(最終更新 10月03日 21時36分)

 東京電力福島第1原発の汚染水が貯蔵タンクから新たに漏れた問題。安倍晋三首相が「汚染水の影響は港湾内で完全にブロックされている」としていただけに、汚染水の港湾外流出という事態を受け、福島県の漁師や首長らは東電や国への不信感をさらに募らせ、憤りの声を上げた。

 10日に福島県沖で原発事故後初めての試験操業を予定している、いわき市漁協の矢吹正一組合長(76)は、度重なる汚染水漏れに「東電はいつまで漁業者の足を引っ張るんだ」とあきれ、首相の「汚染水ブロック」発言について「汚染水が海水に希釈された後の放射性物質の検査値を見て言っているだけで、漁業者たちは『人をバカにしている』と怒っている」と語気を強めた。

 先月末に試験操業を再開した相馬双葉漁協の佐藤弘行組合長(57)も「モニタリング調査で操業海域の安全性を確かめたうえでやっている。『コントロールされている』といういいかげんな発言を信じて試験操業しているわけではない」とクギを刺した。

 請戸(うけど)漁港(浪江町)の復興を目指す馬場有(たもつ)町長は「場当たり的な対応ばかりで、本当に真剣になって汚染水問題を考えているのか。漁業者にとっては一つ一つが死活問題で、風評被害につながる」と指摘。大熊町の渡辺利綱町長は「復興計画を作る上で大事な時期なのに、『またか』という感じでコメントする元気もなくなる。再三、落胆させられることで、帰還の意欲がそがれてしまう。段々前に進んでいるというより、むしろ後退している印象だ」と声を落とした。

 佐藤雄平知事は緊急の部長会議で「東京電力には何度もリスク管理の徹底を要請してきた。ずさんであるとしか言いようがない」と批判した。

 県は3日、原発南放水口付近で海水のサンプリング調査を開始。ベータ線を出すストロンチウムやトリチウムなどの濃度を分析する。また、県庁に東電福島復興本社の石崎芳行代表らを呼び、降雨時の対応に当たる体制の強化や、排水溝の排水先を外洋から港湾内に変更することなどを申し入れた。【喜浦遊、深津誠、高橋隆輔】

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