傷痍軍人会:解散式 平均92歳、会員数減で運営難しく
毎日新聞 2013年10月03日 20時00分(最終更新 10月03日 20時06分)
戦争で負傷した元軍人らでつくる財団法人「日本傷痍(しょうい)軍人会」(東京都千代田区)は3日、明治神宮会館(渋谷区)で60周年となる最後の記念式典と解散式を開いた。平均年齢が92歳と高齢化して会員も減り、組織運営が難しくなったため解散を決定。「自然な時代の流れ」と受け止める声がある一方、「体験者の集いが減れば戦争の記憶が忘れられていく」と懸念する参加者もいた。
記念式典は天皇、皇后両陛下を迎えて行われ、元軍人や妻ら約1200人が全国から集まり、安倍晋三首相も参列。天皇陛下は「戦傷病者とその家族が歩んできた歴史が、決して忘れられることなく、皆さんの平和を願う思いと共に、将来に語り継がれていくよう切に希望してやみません」と述べ、安倍晋三首相は「命をかけて戦い、障害を受けられた方々に必要な援護施策を講じることは国の果たすべき当然の責務」などと話した。
続く解散式で、参加者は改めて黙とう。戦後68年がたって、最も多い時で約35万人だった会員数は約5000人にまで減っており、奥野義章会長は「組織の高齢化に伴ってお別れしなければならない状況になり、断ちがたいものがある」と感極まった様子で話した。
同会は1952年、戦争で手足や視力を失うなどした元軍人らが設立した。戦時中は「名誉の負傷」とされ義肢支給などの援助策があったが、戦後は多くが廃止され、生活苦に陥る戦傷病者が続出。生活向上などを国に求める活動を続けてきた。
法人としての正式な解散は11月末。会が運営してきた戦傷病者史料館「しょうけい館」(千代田区九段南)は厚生労働省の委託事業として民間企業が運営を受け継ぎ、今後も会員の証言ビデオなどを見ることができる。【山田奈緒】