子どもたちに関する事件【事例】



注 :学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ事件を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
030521 教師のワイセツ行為 2005.5.8 2006.2.18 2006.5.19 2006.7.17 2009.1.16更新
2003/5/21 2003/5/21、7/4、千葉県浦安市立小学校の養護学級で、担任の男性教師Kが、知的障がいを持つ女子児童2人A子さん(小6・11)B子さん(小4・9)にわいせつ行為をした疑い。
経 緯 A子さんは0歳児のとき、はしかにかかり、脳症にかかって知的障がいを負う。
自分のことはたいてい自分でできる。実年齢の半分程度の知能。
性格は極めて穏やかで大人しい。いたずらもしない。

近くの小学校には特殊学級がなく、普通学級に通っていた。

小学6年生のときに、T小学校が新設され、特殊学級もできる。
保護者は、市教委から「軽度障害の児童を集めた先進的な特殊学級」と強く勧められ、転校を拒む娘を説得。それまでの普通学校から新設の小学校に転入することを決めた。

2003/4/ T小学校のM学級に入る。

A子さん(小6・11)は、転校前は楽しく学校に行っていたが、特殊学級に転入してから、毎朝、「学校がなくなってしまえばいい」と言うようになった。
・スカートが大好きだったが、スカートをはいて学校に行かなくなった。
・風呂嫌いだったが、帰宅後すぐにシャワーをあびるようになった。
・手にせっけんをつけて何十分も洗うようになった。
・夜中、突然起きて、「トイレに流したら死ぬ?」と聞くことがあった。
・時々、髪の毛をむしって抜く。
・夜中、うなされる。
・寝つきが極端に悪くなった。

6/27 A子さんの妹が、姉のA子さんがプールのところで、担任のK教師に頭を数回たたかれているところを目撃。
保護者がA子さんに聞くが、当初は「やられていない」と言い、「わからない」「この頭が悪いからでしょ」と言いながら、しばしばたたかれることを話した。

6/30 保護者がM学級に行き、担任のK教師に、たたかないこと、叱り方に注意してほしい旨を伝えた。K教師は「わかりました」と答えていた。

7/4 A子さんは帰宅後、顔を真っ赤にして母親に「先生におっぱいぎゅっとされた。とても痛かった」と話した。
A子さんは、K教師に頭をたたかれたこと、怒鳴られたこと、勉強がわからないと「頭が悪い」と言われたり、笑われたことなどを話した。

7/7 保護者は、宿泊研修を控えていることもあり、教頭に相談。これまでの経緯を話す。
教頭は、「宿泊学習には自分も同行し、目を離さないようにするので、安心してください」と話した。

2日間の宿泊学習後、教頭は電話で保護者に「2日間様子を見ていましたが、担任の対応に特に問題はないようです。しばらく様子をみましょう」と話した。

7/14 M学級の高学年女子の母親たちに、これまでの経緯を話す。
「早急に教育委員会に行ったほうがいい」とアドバイスを受ける。

A子さんとB子さんの保護者が、教育委員会の指導課長と面談。
課長は、早急に校長と話し合い、対策を講じることを約束。

翌日から、教務主任がM学級の担当になり、K教師は終日、職員室勤務となる。

「今回の件についてもう一度確認したい」と課長から言われ、A子さんの母親がT小学校に出向く。
教育委員会2人と、校長、教頭、K教師、副担任が同席で話す。
K教師は、「覚えていない」「やっていない」と全面否定。
K教師の指導力不足の問題も含めて、K教師の処遇とこれからの学級運営について、緊急保護者会を持つよう、校長に要請。

7/17 保護者会を開催。
高学年の保護者を中心に、「K教師をT小学校勤務からはずしてほしい」と教育委員会の課長に要望。

8/10 課長から返事がないので、9名の保護者が集まって話し合いを持ち、要望書を作成。
【要望書の要旨】
@K教師の一部の児童たちに対する行動は決して許されるものではないこと。
A他の小学校に行けば、また同じような問題を引き起こす可能性があるので、他校へ行ったとしても、今後は児童の前に出る仕事はさせないこと。
B障害の程度の異なる児童おのおのに合った教育プランをつくってほしい。
C現在不登校になっている児童のフォロー等。

8/14 要望書を校長あてに送付。

8/26 校長、教頭より、謝罪の言葉と要望を「全面的に認める」との回答がある。
「9月1日からはK教諭はT小学校に勤務せず、今後もどこに行くにせよ、直接子どもたちと関わりを持たない環境での勤務になります」と説明がある。

10/ 市教委は、前任校での保護者とのトラブルを理由に、「指導力不足」として学級担任から外し、研修を受けさせる。

10/ B子さん(小4・9)が、K教師から受けた被害を母親に話し始める。

A子さんとB子さんは、大学病院の心理の先生にPTSDと診断される。

11/10 A子さん、B子さんの保護者らが、市教育委員会に行き、夏休み以降に子どもたちが言ったことを報告。適切な処置を求める。
教育委員会は「調査して結果は後日お知らせします」と回答。

11/25 連絡がないため、T小学校に電話を入れた結果、教頭が「調査をしたが、全てにおいて、そういう事実は確認できなかった」と回答。
教育委員会も「本人も否認しているし、何も確認できなかった」と回答。 

12/中旬 市教委は教師から50分程度聞き取りをした結果、「(わいせつ行為の)事実はなかった」とする報告書を女子児童側に渡す。
背景と環境 T小学校は新設校で、スペースに余裕があった。
M学級はあまり目立たない場所にあり、隣は空き教室だった。
鍵をかけられる小さな会議室や用具入れが廊下をはさんで真向かいにある。
教室内にシャワー、トイレがあり、カーテンが閉められるようになっていた。

M学級には補助教員を含めて5人の教師がいたが、肢体不自由の児童もいて、マンツーマンで教師がつきっきりの状態が多いうえ、外に出たり、トイレに行ったりなど、教室にいないことが多くあった。
主な被害
(被害児童や他の児童からの話から)
校内で、女児らはK教師にたびたび服を脱がされ、わいせつ行為を受けた。
学校の教室や廊下で、体を触るなどした。
多くの女児が日常的に被害にあっていたとみられる。

5/21 K教師は、教室後ろのカーテン内にB子さん(小4・9)を連れ込み、バンダナで目隠しをして、わいせつ行為をした。

7/4 K教師は、今度はA子さん(小6・11)をカーテンの後ろに連れ込み、胸を触るなど、わいせつ行為をした。

「ばか」などと言われる。「親に言ったら、猫も家族もみんな殺す」「誰かに言ったら、お前をトイレに流して殺す」「ゴミ袋に入れて、川に流してやる」などと脅された。

頭を何度もたたかれた。髪の毛を引っ張ったり、顔を殴ったりした。

体育の時間のあとの授業のときに、早くから教室に入って、児童らが着替えているところをじっと見ていた。

いつもカメラを持ち歩いており、滑り台で女児が滑り降りてくるのを下から写真を撮ったりしていた。女児がスカートのなかが見えてしまうと抗議すると「お前ぐらいのをみてもしょうがない」などと言った。
被害者の心の傷 B子さんは親に、「私は障がいがあってみんなに迷惑をかけているから、こんなことをされてもがまんしなければならないのだと思っていた」という意味のことを言った。

当初は、脅されていて話せなかった被害内容が、話しても脅しが実行されることはないとの安心感から、少しずつ語られるようになった。

女子児童は2人とも、病院でPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断される。
睡眠障害。
恐い夢を見る。(川に流される、先生に追いかけられるなど)
夜中にうなされる。
髪を抜くなどの自傷行為をする。
ささいなことでフラッシバックが起きる。

B子さんは、男性をみるだけで緊張状態に陥り、父親と住むのも拒否。両親は離婚。
家族ほかの対応と影響 女児の母親は不眠症になる。

同じ学校に通っていた妹が不登校になる。
誹謗・中傷 地域で「お金目当て」などと噂を流される。
インターネットに、被害者の住所や電話番号が載せられ、引越しをせざるを得なかった。
被告教師 K教師は、前任の印西や浦安市内の小学校でも、保護者から指導力不足を指摘されていた。
言葉が乱暴。
学校・教育委員会ほかの対応 2003/7/中旬 学校・市教委はK教師からの聞き取り調査だけで、「(性的虐待の)事実はなかった」と結論。

2003/12/中旬 市教委は教師から50分程度聞き取りをした結果、「(わいせつ行為の)事実はなかった」と結論。報告書を女子児童側に渡す。

女児らをPTSDと診断した大学病院への照会や児童への調査は一切、行わなかった。

2004/4/7 県教委は、周囲にいた教師から事実確認が取れていないことを理由に、教師を休職処分にする。

2006/2/ 刑事裁判で無罪が確定したために、教師を復職させて研修に戻す。処分は未定。

災害共済給付金制度に基づく(PTSD)治療費の申請についても、学校側は「被害日時などが特定されていない」として受理しなかった。
その他の動き 浦安市長が、被告教師に弁護士を紹介。
広瀬明子議員の質問に、当初は「そういうことはありえない」と答えていた。
2006/6/ 市議会で、「人を介して紹介した」と認める。
支援の動き 2005/1/ 「被害者とその家族を支える会」開設。

K教師の免職処分を求める署名活動などを行う。
警察の対応と捜査 2003/11/27 女子児童と母親が県警に相談。被害届けを提出。

K教師の自宅から、女児に対する性的行為が露骨に撮影された動画が多数保存されたCD-ROMを押収。女児が目隠しをされたと証言したのと同じ柄のバンダナなどを押収。

K教師は捜査段階では一旦、容疑を認めていた。
提出した上申書の内容は女児たちが話した被害内容と酷似していた。

2004/2/-3/ 県警・地検が、女子児童ら2人に対する強制わいせつ容疑で男性教師を逮捕・起訴。女児に行った行為の重さから、懲役7年を求刑。

K教師は、公判で一転して無罪を主張。
被告の証言 K教師は、公判で、「身に覚えはありません」と起訴事実を否認。
弁護側は、「供述調書の被告の自白に信用性がなく、被害児童の供述は誘導に基づくもの」「児童は証言能力そのものが欠如している」として無罪を主張。

K教師は裁判のなかで、教室のなかで、児童らに自らの性器を見られたことがあると認めた。
トイレに行ったあと収まりが悪く、教室で直したと弁明。

児童の手がめがねに当たったので腹がたち、殴ったことがあると認めた。

他の教師との会話で、「出るとこでてるし、ひっこんでいるところはひっこんでいるからドキドキしちゃうよ」と話したことは認めた。
検察側の証言 第10回公判は、児童らがPTSD(心的外傷後ストレス障害)で通院する大学病院内で非公開で行われ、児童から話を聞いた。その際、裁判官は法衣ではなくスーツ姿で対応するなど細心の注意を払った。(2005/4/28 毎日新聞 中川紗矢子)

女児をPTSDと診断した主治医が、「被害を話すときに、作り話ではない本当に恐い話をするときにしかない唐突で不連続な行動が見られる」と証言。
判 決 1 2005/4/28 千葉地裁で、教師に無罪判決。

土屋靖之裁判長(金谷暁裁判長代読)は、「(証言した)医師が(女児に対する)わいせつ行為があったと診断し、(女児が)体験したことしか話せないと証言していることから、(わいせつ行為を受けたことに)相応の信用性があると考えられる」としたが、「他の教諭や児童がいた教室のカーテンで覆われたスペースで、犯行に及んだなどとする事実経過は不自然で不合理。教諭の自白は女児のあいまいな供述に沿うもので、捜査官に迎合した可能性がある」「被害女児の供述内容には一部、誇張または想像の疑いが強い部分がある」「事件の経過や周辺事情の証言には不自然で、不合理な点も多く、行為を直接目撃した者もいない」として検察側の主張を退けた。
検察側は控訴。
判 決 2 2005/2/15 東京高裁で、無罪(求刑懲役7年)の1審判決を支持。検察側控訴を棄却。確定。

高橋省吾裁判長は、「
犯行日時や場所の証明が十分されていない」「すぐに犯行が露見する可能性がある場所で行われたとの事実経過に不自然さが否めない。犯行の時と場所に関する女児の供述と教諭の自白は、信用性に疑問を差し挟む余地が残る」と述べた。

一方で、
@ K教諭の自宅から押収されたCD-ROMの中から女児に対する性的行為が露骨に撮影された動画が多数保存されていたことから、
K教諭が幼児性愛傾向を有していることがうかがわれる
A 前任校でも、同僚、保護者等とあつれきを生じさせるなどして、T小学校に転任した。
B 
少なくとも教諭から被害を受けたという女児供述には一貫性があることなどから、疑問を差し挟む余地がないようにも思われる
と指摘した。 

その後 地裁で証言した女児は、被告(男性教師)弁護人から「(証言を)練習してきたんじゃないの?」などと質問されて、PTSDを悪化させた。

女児は裁判後、「私はうそをついていない。ほんとうにやられたんだよ」と主張。
民事裁判 1 2006/5/11 Aさんは、娘のような辛い思いをする子どもたちを出さないようにすること、知的障がい者の置かれた状況を少しでも変えていくための働きかけとして、県と浦安市、男性教師に、総額約1950万円の賠償を求める民事訴訟を起こす。意見陳述参照。
判 決 1 2008/12/24、千葉地裁で、一部認容。
三代川三千代裁判長は、被告浦安市と被告千葉県に連帯して60万円(A子さんに対する慰謝料50万円、弁護士費用10万円)の支払い命令。

裁判所が次の3点について認める。
ア.(2003年)6月27日ころプール授業後、(被告Kが)原告A子(当時小6・11)の頭を殴打した事実。
イ.原告A子の手が眼鏡に当たった際に拳骨で原告A子の頭を叩いた事実。
ウ.7月4日に原告A子の乳房を触った(掴んだ)事実(刑事事件における起訴事実に対応)。

一方、K元教師本人に対する請求は、公務員の職務行為に基づく損害ということで、個人として被害者にその責任を負わないとして、棄却。(代わりに県と市が賠償責任を負って支払う)

浦安市の事後対応義務違反については、原告夫婦から具体的な被害申告を受けて、その都度、さほど間を置かずに、同じ学級の教師・補助教員らから事情聴取を行った、原告夫婦からも相談を受けるなどしたとして、事実調査に問題があったとは認めなかった。

また、浦安市は、加害行為の有無が確認できない段階から、K教師をA子さんの担当からはずし、その後、学級担任からも外して教育センターで研修を受けさせるなど、被害再発防止のため迅速に対応したと認めた。
千葉県については、市に事実調査の義務違反があったとは認められないから、市に対する指導義務違反や自ら調査を行う義務違反があったとは認められないとした。
また、県教委が、被告Kに対し、懲戒処分を行わなかったからといって、これが裁量権を濫用する違法なものであるとまでは認められないとした。

me081226 参照。

民事裁判 2 2009/1/5 浦安市は判決を不服として控訴。
2009/1/15 千葉県も控訴。
A子さん側も、附帯控訴。
2010/3/24 東京高裁で、一部認容。
サイト内リンク  意見陳述  me060717 me061011 me070307 me070429 me070630 me080421 me080511 me080526 me080914 me081226 
参考資料 2004/4/22讀賣新聞教育メール、2005/4/28毎日新聞、2005/4/28共同通信、2006/2/16讀賣新聞2006/5/12朝日新聞千葉版、2006/5/12毎日新聞千葉版、2006/6/1毎日新聞、2006/7/7毎日新聞・千葉版、「特殊学級担任による強制わいせつ事件は、いかにして起きたのか−被害児童の悲痛な叫びは認められるのか−」/川上俊二(仮名)著/2006.3.25季刊「福祉労働」110号「被害者とその家族を支える会」ニュース



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