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汚染水漏れ 事前の検討不十分
10月3日 18時32分

汚染水漏れ 事前の検討不十分
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東京電力福島第一原子力発電所で、2日夜、山側にあるタンクから新たに高濃度の汚染水が漏れた問題は、傾斜がある場所のタンクに水を入れ過ぎたのが原因でしたが、どの程度の水が入るかの事前の検討が不十分だったことが分かりました。
福島第一原発では、汚染水への対応が複雑になるなかミスが相次いでいて、早急な再発防止と管理の徹底が求められています。

福島第一原発では、2日夜、山側の汚染水をためるタンクから水が漏れ、その下のせきの水からベータ線と呼ばれる種類の放射線を出す放射性物質が1リットル当たり20万ベクレルという高い濃度で検出されました。
汚染水はタンクの天板と側面の板の隙間から漏れ、およそ430リットルがせきの外に出て、海につながる排水溝から原発の港の外の海に流出したとみられます。
問題のタンクは、山側から海側に向けて傾斜している場所に5つ並んで設置されたタンクのうち、最も低くなっている海側のタンクでした。
5つのタンクは連結されていて、2日のように大雨で周辺のせきにたまった雨水を1つのタンクに入れると、5つとも水位が連動して上がるようになっています。
しかし、5つのタンクのうち、水位計が付いているのは山側のタンクだけで問題のタンクにはなく、事前に行った検討では、山側のタンクの水位計で満杯の98%に当たる天板から50センチの水位にとどめれば、最も低い海側のタンクでも水は上部に達しないと評価されたということです。
水の移送は、この評価に基づいて2日の午前8時半から断続的に午後0時半すぎまで行われましたが、移送を止めたときにはすでに汚染水は漏れ始めていた可能性があり、東京電力は事前の検討が不十分だったとしています。
東京電力が3日朝、調べたところ、汚染水が流出したとみられる排水溝の海の出口付近の放射性物質の濃度は検出限界値未満でした。
福島第一原発では、ことし8月、別のタンクから汚染水が漏れ一部が海に流出したおそれが明らかになり、1日には、東京電力と協力会社との間の連絡のミスでタンクから汚染水が漏れるトラブルがありました。
増え続ける汚染水をためるタンクの増設を急ぎながら、雨水などの複雑な移送作業も行わなければならないなか、ミスやトラブルが相次いでいて、早急な再発防止と管理の徹底が求められています。

タンク運用深刻化のおそれ

福島第一原発では、増え続ける汚染水に対応するため汚染水をためるタンクの増設を急いできましたが、余裕のない状況が続いています。
今後、計画されている汚染水対策を進めると、保管する水の量がさらに増える可能性があり、タンクの運用はいっそう深刻になるおそれがあります。
福島第一原発では、高濃度の汚染水がたまっている建屋に山側から1日400トンの地下水が流れ込み、汚染水が増え続けています。
この汚染水をためるタンクは現在、敷地内におよそ40万トン分ありますが、すでに86パーセントに当たるおよそ35万トン分が埋まり、余裕のない状況が続いています。
対応をより複雑にしているのが雨への対応です。
東京電力は、タンクを囲むせきの水位が雨で高まった場合、タンクなどにいったん保管し、放射性物質が一定の濃度を下回った場合にのみ放出する対応をとっています。
先月の台風に伴う大雨の際は、せきからくみ上げた1400トンがタンクに移されました。
大雨のたびに一定量の水を保管する必要が出ると見込まれ、余裕のある別のせきに移したり、すでに汚染水をためているタンクにぎりぎりまで移送するなどの措置を取っていて、これに対応するため4000トン分のタンクの運用を今月中旬から始める計画です。
今後の汚染水対策もタンクの運用に影響しそうです。
来年9月ごろからの開始を計画している建屋周辺に設置する井戸から地下水をくみ上げる対策などでもくみ上げた地下水の保管が必要となる可能性があります。
これまでに東京電力が示している計画では、タンクの容量を今月をめどにおよそ44万トン、平成28年度中におよそ2倍の80万トンまで順次、増やすとしています。
しかし、タンクを設置できる土地は限られているうえ、対策が増えるほど、保管する必要がある水の量も増える可能性があり、タンクの運用はいっそう深刻になるとみられています。
タンクの信頼性も依然、課題のままです。
現在、300基余りある板のつなぎ目をボルトで締めるタイプのタンクをより信頼性の高い溶接型に置き換える計画ですが、短期間ですべてを置き換えるのは難しく、増え続ける汚染水への対応とタンクの信頼性向上の両立は容易ではありません。

20万ベクレルは

水漏れが見つかったタンクの下にある、せきの汚染水からはベータ線と呼ばれる種類の放射線を出す放射性物質が1リットル当たり20万ベクレルという高い濃度で検出されました。
この汚染水には、主に放射性物質のストロンチウム90が含まれていて、20万ベクレルをストロンチウム90の海への排出基準と比較すると、およそ6700倍に当たります。
水漏れが見つかったタンクから海までの距離はおよそ300メートルあり、東京電力によりますと、今回汚染水が流出したとみられる排水溝の海の出口付近で、3日午前7時に測定した結果、ベータ線と呼ばれる種類の放射線を出す放射性物質は検出限界値未満だったということです。
今回漏れた汚染水は放射線の一種のガンマ線を出す放射性セシウムをほとんど取り除いていて、含まれているのは、ベータ線を出す放射性物質が中心です。
ベータ線は、ガンマ線や中性子線と異なり鉛などがなくても被ばくを防ぐことが可能で、紙は通過するものの、アルミニウムやプラスチックの板で遮ることができます。

ベクレルは放射線を出す能力の単位

シーベルトが放射線が人体に与える影響、つまり、被ばくの程度を表す単位であるのに対して、ベクレルは、放射線を出す能力を示す単位です。
ベクレルは、放射性物質を含む水や食べ物を飲んだり食べたりすることによる被ばくを防ぐために、安全基準の単位としても使われていて、食料品に含まれる放射性セシウムの基準は、野菜や米などの一般食品は、1キログラム当たり100ベクレル、粉ミルクなどの乳児用食品と牛乳は、50ベクレル、飲料水は10ベクレルとなっています。
また、海へ排出する場合の基準は、国が放射性物質ごとに定めていて、いずれも1リットル当たりで、ストロンチウム90が30ベクレル、ヨウ素131が40ベクレル、セシウム137が90ベクレル、トリチウムが6万ベクレルなどとなっています。

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