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中間貯蔵施設の設置案を了承
9月27日 19時15分

中間貯蔵施設の設置案を了承
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除染で出た土などを保管するため福島県内に建設される予定の中間貯蔵施設について、環境省はボーリング調査が終わった大熊町と楢葉町に保管のための施設をそれぞれ5か所ずつ設けるなどとした案をまとめ、専門家の検討会で了承されました。
一方、大熊町や楢葉町はいずれも「調査を受け入れただけだ」としていて、環境省は地元に案を詳しく説明し、理解を得ていきたいとしています。

中間貯蔵施設は、除染で出た土や廃棄物を保管して放射性物質の飛散を防ぐ「貯蔵施設」や、草木や汚泥などを焼却して量を減らすための「減容化施設」などで構成されていて、環境省はこれらの施設を福島県の原発周辺にある双葉町、大熊町、楢葉町の3町に分散して建設する方針です。
27日、東京都内で開かれた専門家の検討会で、環境省は、これまでにボーリング調査が終わって施設を設置できると判断した大熊町と楢葉町について、「貯蔵施設」をそれぞれ5か所ずつ設けるなどとした設置案を示しました。
このうち、除染で出た土を保管する施設については、町ごとにそれぞれ4か所設置するとしています。また、1キログラム当たり10万ベクレルを超える放射性物質の濃度が高い廃棄物を保管する施設を、強固な地盤で居住地域から離れた場所にそれぞれ1か所ずつ設ける予定です。
その近くに「減容化施設」を設置するとしています。
こうした案について、検討会は「安全性に問題がない」として了承しました。
環境省は、大熊町と楢葉町については施設の具体的な設置場所や、取得する土地の範囲などを調整するとともに、ボーリング調査がまだ始まっていない双葉町については、今後、施設の設置案を検討する方針です。
一方、大熊町や楢葉町はいずれも「調査を受け入れただけで、建設そのものは受け入れていない」としていて、環境省は地元に案を詳しく説明し、理解を得ていきたいとしています。

中間貯蔵施設とは

中間貯蔵施設は、福島県内の除染で出た土や、放射性物質の濃度が1キログラム当たり10万ベクレルを超える焼却灰などを最終処分するまでの間、安定的に保管するための施設です。施設は、除染で出た土や廃棄物を保管して、放射性物質の飛散を防ぐ「貯蔵施設」や、草木や汚泥などを焼却して量を減らすための「減容化施設」のほか、放射線量や地下水などを常に監視する「モニタリング施設」などで構成されます。
各施設の周囲には緩衝のための緑地が設けられ、面的に広がりを持った形で整備される予定です。
施設に運び込まれる土などの量は、推計で最大2800万立方メートルに上る見込みで、東京ドームのおよそ23倍に当たります。

候補地で調査進む

中間貯蔵施設について、環境省はおととし12月に福島県の双葉郡内への設置を要請し、去年3月には、東京電力福島第一原子力発電所の周辺にある双葉町、大熊町、楢葉町の3つの町に分散して設置する案を示しました。
さらに、去年8月には町ごとに候補地を示して、建設に適した場所かどうかを確認するための現地調査の実施を求めました。
候補地とされた場所は、いずれも国道6号線から東の太平洋側に位置し、双葉町と大熊町は年間の被ばく線量が50ミリシーベルトを超える「帰還困難区域」に、楢葉町は年間の被ばく線量が20ミリシーベルト未満の「避難指示解除準備区域」に指定されている地域です。
その後、3町のうち、大熊町と楢葉町はことし4月から調査が行われ、候補地の地盤の固さを調べるボーリング調査などが行われました。
調査の結果、環境省は、固い地盤の分布が確認でき、施設を建設しても安全性に問題はないとして、「施設を設置できる」という評価をまとめました。
一方、双葉町は前の町長が調査の受け入れに反対していたため調整が難航し、環境省はことし3月に新たに就任した今の町長と改めて調整を進めてきました。
その結果、町は26日、調査を受け入れる方針を固めました。
環境省は今後、双葉町でも現地調査を行ったうえで、双葉町も含め3町から同意が得られれば、施設を設置するための土地の取得を進めたいとしていますが、候補地の住民からは元の場所に戻れなくなるのではないかと懸念する声も上がっています。

候補地の住民 複雑な思いを抱え

候補地になっている福島県大熊町の住民は、施設の建設によってふるさとを強制的に奪われることになることに複雑な思いを抱えています。
町の大部分が長期間帰ることができない「帰還困難区域」に指定された大熊町では、これまでに町内の28か所で環境省によるボーリング調査が行われ、「施設を設置できる」とされました。
原発からおよそ3キロ離れた地区の区長を務める根本充春さん(73)は、先祖代々受け継がれてきた水田で二十数年間にわたって、コメを作ってきました。
しかし、根本さんの水田がある一帯も、施設の候補地になる可能性があります。
さらに自宅前の放射線量は毎時12マイクロシーベルト前後と依然として高く、部屋の中はネズミなどのふんが至る所に散らばり、天井など住宅の傷みもひどくなっていました。
根本さんは施設ができるとふるさとを諦めざるをえない気持ちが強くなる一方で、強制的にふるさとを奪われることを簡単には受け入れたくないという複雑な思いを抱えています。
根本さんは、「中間貯蔵施設が出来るということは、ふるさとを追い出されることになる。放射線量が高く、荒れ果てた姿を見ると『もう戻れない』という思いは強くなるが、施設を受け入れてふるさとを奪われることを簡単には決断できない。どうせなら、国に『もうここは住めません』と宣言してもらったほうが、決断を後押しされてすっきりと次の生活に進めるのではないかと最近は考えている」と話しています。
一方、福島県楢葉町の住民は、除染が終われば戻ることができるはずのふるさとから施設の建設によって追われるかもしれない事態に納得のいかない思いを抱えています。
楢葉町は比較的放射線量が低く、町のほとんどが早期の帰還を目指す「避難指示解除準備区域」で、除染が順調に進めば、早ければ来年の春にも住民の帰還を判断したいとしています。
しかし、町の沿岸部にある地区が中間貯蔵施設の候補地となり、環境省はボーリング調査の結果、「建設は可能」とする判断を示しました。
福島県会津美里町に避難している農業の大和田信さん(57)は、少しでも早く自宅に戻って先祖から引き継いだ水田で稲作を再開したいと考えています。
除染が終われば帰ることができるはずの地区に施設が建設されることで、帰られなくなる可能性があり納得できないといいます。
ただ、地区の半数近くの世帯が津波で家を失ったため、「施設を受け入れて国に土地を買い上げてもらいたい」と考える住民も少なくないことなどから、ふるさとに帰りたいと簡単に声を上げることもできず苦悩しています。
大和田さんは、「避難生活で疲れてきている住民からは諦めの声も上がっている。ふるさとでの生活再建を目指しているなかで、こうした事態になったことが悔しい」と話していました。

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中間貯蔵施設 2町に各5か所計画 (9月27日 4時13分)

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