ドラギ総裁:ECBに行動の用意-短期市場金利の抑制で
10月2日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は2日、短期市場金利の上昇抑制に必要ないかなる措置も取る用意があると表明した。景気回復の初期段階で銀行を金利上昇から守りたい考えだ。
ドラギ総裁は政策決定後の記者会見で、「短期金融市場の状況に関して、金融政策に影響を与えそうな展開を特に注視し続け、利用可能なすべての政策手段を検討する」と先月示した方針をあらためて表明。「ECBはこのために多様な手段を持っている。必要に応じ最も適切な方法で対処するため、いかなる選択肢も排除しない」と強調した。
ECBはこの日、政策金利を過去最低の0.5%で据え置いた。ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査に答えた52人全員の予想通りだった。中銀預金金利と限界貸出金利もそれぞれゼロと1%で据え置かれた。今月の会合はパリで開催。また、3日がドイツの祝日に当たるため、通常の木曜ではなく水曜に開かれた。
システム内の余剰流動性の減少や銀行バランスシートに対するストレステスト(健全性審査)などさまざまなリスクに投資家が直面する中で、ECBは市場のボラティリティ抑制に腐心している。ドラギ総裁はこの日、必要ならば長期リファイナンスオペ(LTRO)を再開する用意があるとあらためて言明した。
ユーロ圏無担保翌日物平均金利(EONIA)のフォワードレートが示す2014年9月のECB会合時点の銀行間翌日物金利の市場予想はこの日、一時0.23%に上昇。前回会合があった9月5日の0.3%から低下しているが、5月には0.1%未満だった。
銀行の返済進むECBはユーロ圏債務危機のさなかに2回の3年物LTROで1兆ユーロ余りをシステムに注入した。市中銀行はこの資金の早期返済を進めており、流動性が引き締まるのに伴い市場金利が上昇しがちとなっている。
ドラギ総裁によれば、政策委員らはこの日利下げについて議論したが、実施決定には至らなかった。総裁は7月から、政策金利を現行またはそれ以下の水準に長期にわたって据え置くと表明している。
ユーロ圏経済の体力は、前回のECB会合から改善しているもようだ。景況感や製造業の指標が示唆している。ユーロ圏の民間向け融資は8月に過去最大の落ち込みとなっていたが、ドラギ総裁はこれについてECBが銀行資産査定を来年完了するまでに改善し始めるとの期待を示した。
総裁は「資金調達面での域内分断には大幅な改善が見られるものの、与信の流れは依然として弱く、極めて弱いとすら言える」とした上で、「資産査定完了の前に与信が回復することに強い期待を持っている」と述べた。
銀行同盟への準備ECBは来年、域内銀行監督の責務を担う前に銀行のバランスシート査定を実施する。評価の一部である健全性審査で資本不足が発見された場合、それを埋める方法についてまだ欧州連合(EU)が合意していないことから、査定が銀行セクターを動揺させ景気回復を妨げるリスクがある。
総裁は「ECBによる銀行の一元監督メカニズム(SSM)が始動する前に政府による安全網整備ができないのではないかとの疑念が表明されていることには驚愕」すると述べ、前回の欧州理事会によって安全網整備は明示的に確約されていると指摘した。
さらに、市場金利は各国政府が必要な経済改革を進めているかどうかへの市場の評決だとした上で、「改革への最大の圧力は内から生じなければならない。改革は各国自身のためであり、市場に強制されるべきものではない」とくぎを刺した。
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更新日時: 2013/10/03 01:05 JST