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消費税増税の奉祝報道 - 軽減税率の嘘、剰余金の偽計
昨夜(10/1)のテレビと今日(10/2)の新聞は、消費税増税8%のニュースでびっしりだ。NHK-NW9のスタジオに安倍晋三が出張り、増税と5兆円対策の宣伝をやっていた。夕方の会見を全放送局に中継させ、さらに夜9時からテレビ出演して念を押すしつこさに、テレビの前で拷問の責め苦を受けているように感じた。1年半経ったら、また同じことが繰り返される。そう思うと、さらに憂鬱が重くなる。この1-2週間ほど、マスコミは、汚染水問題も放ったらかして、消費税8%引き上げ時の経済対策がどうのこうのという、官邸が撒くネタを嬉しそうに流し、画面と紙面を埋めていた。今日の朝日は、1、2、3、4、6、7、8、16、17、39面と、10面使って賑々しく消費税増税の奉祝報道を特集している。6、7面の「解説」は、官僚から予め提供されていた記事の体裁で、ほとんど政府公報の広告紙面と同じ編集だ。消費税増税の法案が国会で可決成立したときもそうだった。「暮らしがこう変わる」などと、大ハシャギの紙面構成だった。6年ほど前から消費税増税賛成に立場を切り換え、政府の代理で国民の洗脳工作に励んできたマスコミは、こうして長年の悲願が叶い、嬉しくてたまらず、迸るように歓喜を爆発させ、奉祝報道の「ビールかけ」騒ぎに興じているのである。少数エリートによる高尚な意思が、多数の愚衆どもの怠惰(NMBY)を制し、「国家を慮った」政策を実現できたことで、朝日は嬉しくてたまらないのだ。腐ったエリートの喜悦。


国民の多くは、消費税8%増税の現実の前に、心を塞がされ、どうやって出費を削って生計を凌ごうかと暗い気持ちでいるだろう。特に、僅かな年金で細々と暮らす高齢者はそうだろう。若い非正規労働者も同じだろう。3%分の増税によって、1人当たり平均月3000円から1万円の出費増となり、その分を消費支出から減らさなくてはいけない。節約を余儀なくされる。個人にとっては大きな負担増だ。暗澹たる気分になるのは当然だが、これを報じるマスコミは、大越健介も、恵村順一郎も、大願成就とばかり顔を綻ばせ、国としてめでたい日だと万歳三唱している。増税工作を続けてきた官僚にとっては、肩を抱き合って涙を流す、待ちに待った日なのだ。支配者と被支配者、富める者と貧しい者、そのコントラストが日本を覆った一日だったが、貧しい被支配者の声はマスコミに登場することはなく、「一部に未だ不満を言っている未練がまししい者もいる」程度の扱いで済まされている。マルクス的に言えば、消費税増税は、まさに支配階級による階級闘争の勝利だ。被支配者たる国民の財布から8兆円を収奪し、うち5兆円近くを企業にぶち込むのだから、笑いが止まらないのは無理もない。共産党などはずっと、この消費税税増税は、社会保障の充実が目的ではなく、それは口実(ウソ)で、実は企業への法人税減税のための財源作りだと言ってきた。絵に描いたように、そのとおりの税制措置になった。

世論調査の報道のたびに、消費税増税は反対が賛成を大きく上回った。だが、民主党が裏切り、湯浅誠が裏切り、マスコミや論壇の上では、増税反対派は徐々に締め出され、口数が少なくなり、政治の上のレベルで決定したことに何も抵抗できなくなった。増税反対派の主張と説得のキーロジックは、格差が拡大し所得が下がっているこんな経済状況の下で、消費税増税などやらかしたら、間違いなく消費が落ち込んで景気が悪化し、税収も減って財政破綻が酷くなるというものだった。官僚が本格的に消費税増税の政治戦に打って出た2006年以降、反対派はこの正論のカウンターで増税派の撃退に成功してきた。そして、対案として、特別会計を精査し、一般会計と統合することで、官僚財政の無駄を削減し、財源を捻出することが可能だと言ってきた。それが、2007年から2009年までの消費税増税の攻防の図式である。ところが、民主党が政権を取った瞬間、官僚によるクーデターが起こり、小沢一郎が罪人同然となり、この対立の構図は一気に崩壊してしまった。今や、特別会計を洗い出してという正論を唱える者は一人もいない。現在のマスコミの常識では、その財政政策は「根拠のない幻想」であり、「国民を幻惑させた悪しきポピュリズム」の烙印を押され、ゴミ箱に棄てられ焼却処分にされている。赤字財政の原因と病巣が官僚の放漫財政(天下り法人)にあるという認識は、すでに遠い過去のものになり、誰も言わなくなった。

その代わり、政府とマスコミとアカデミーが正論として対置したのが、「社会保障のための安定的な財政基盤」の言説であり、2010年以降は、さらに、「現役世代の負担を減らすため」だとか、「将来世代のために」などと言って高齢者の心をくすぐり、この政策観念の正当化を固めてきた。挙げ句、昨年からは、「消費が落ち込むことはない」だとか、「1997年からの景気悪化は、消費税増税によるものではなく、アジア通貨危機が原因だった」などと、とんでもない話を言うようになった。まさに洗脳。マスコミという一方通行の情報装置を握っている官僚権力による、強制的な洗脳操作に他ならない。だが、こうした官僚の言説に、神野直彦が乗り、湯浅誠が乗り、萱野稔人が乗り、民主党系の論者が次々と乗り、やがて国民的な共通認識の相貌となり、NMBY理論が扇動され、消費税増税を忌避する者は国の将来を考えないエゴイストだという脅迫がワークした。昨年12月と、今年7月と、二度も国政選挙があり、消費税を争点とする選択の機会があったにもかかわらず、本来、民主主義社会の多数であるはずの増税反対派(国民一般)は、選挙でこの政策を拒否することができなかった。来年4月、増税後に個人消費が落ち込み、景気が悪化することは確実だが、次の増税を控えた政府とマスコミは、統計指標を細工し、隠蔽と操作と偽装を駆使して国民を騙し、再度、税率引き上げの環境を整えることだろう。法人税率引き下げの財源をさらに貪欲に得るべく、消費税率を10%に引き上げるだろう。その間に選挙はない。

情報では、消費税増税と合わせて、アベノミクスのインフレ効果で物価が4%上がると言われているから、マスコミで試算されている支出増よりも、実際には負担が重くなり、年金生活者や低所得者の生活は苦しくなる。年収150万円とか200万円の非正規の者が、給料が増えず、物価が4%も上がったらどうなるのだろう。庶民の生活の苦しさは、マスコミ報道には反映されず、それを代弁する学者もおらず、その不満を吸収する政治勢力の出現もない。ネットでも問題提起する者がおらず、単に「一部の利己的大衆の不満」として片づけられるだけだ。政治要求にならず、政治の場に届かない。マスコミと政府は、低所得者には年に1万円から1万5000円の支給をしてやると言っている。どれどれと新聞を見たら、それは住民税を免除されている世帯の2400万人が対象だとある。住民税の非課税ラインは年収100万円以下だ。ということは、年収150万円とか200万円のワーキングプアは対象にならない。この大量の貧困層にとって、消費税率3%増とか物価4%増の中身が、どれだけ深刻で凄絶なものであることか。マスコミや出版で稼いでいる湯浅誠もそうだし、ネット大手の編集サイトで紹介されるBlogの論者も含めて、年収300万円以下の者というのはほとんどいないに違いない。この層の生活は耐え難く苦しくなるけれど、マクロ経済的には、もともとの消費支出が少ないから、それが多少減ったところで、数字として大きな変動要因にはならず、アベノミクスで儲けて奢侈を増やす貴族たちの豪遊消費と合わされ、統計指標的には薄められるのである。

だから、1997年当時ほどには、消費税増税による個人消費の落ち込みというのは、大きくマクロ経済に影響することはないのだ。日本経済の二極構造化というのは、今はもう、嘗ての経済学(ケインズモデル)の常識が通用しないレベルになっている。この貧困層は、マスコミにも、学者にも、政治家にも、ネット論者にも、誰にも顧みられず、自ら声を上げて主張することもできず、この国の経済と政治の一般人(=正規国民=正規の主権者たる主体性)ではなくなっている。敢えて言えば奴隷だ。さて、問題の軽減税率だが、昨夜(10/1)のNW9で大越健介は、「軽減税率」の話題になったとき、本音を顔に丸出しにしてプッと吹きながら喋っていた。笑いながら不真面目にその話をした大越健介によると、軽減税率の制度は、税率を10%に上げた時点で検討を始めるのだそうだ。確か以前は、8%のときは見送るが、10%の時点で正式導入という予定だった。公明党がそれを約束していたはずだ。こうやって、時間が経つと巧みに先送りにされ、国民は昔の記憶を忘れて騙される。軽減税率は、日本語で言うところの気休めである。官僚が国民を騙す気休めのネタだ。もう2年くらい前から、朝日は官僚の本音を「ある財務省幹部」とかの匿名で記事に出し、「軽減税率なんてやらないよ。食料品を非課税にしたら、取れるところから取れないじゃないか」と率直な意向を漏らさせていた。税率が15%になろうが、20%になろうが、官僚は軽減税率の導入など毛頭考えてないのだ。そのときそのとき、学閥系の左派っぽい論者がテレビに出て、すまし顔でくっちゃべるネタである。ヨーロッパではこうしていると。

最後にもう一つ、経済対策の5兆円だが、笑わせることに、この財源は赤字国債ではないと言っている。今日(10/2)の朝日には、あれだけ大量に消費税の記事を載せながら、5兆円の積算明細が書いてない。が、安倍晋三は、剰余金と税収増分で対応すると言っていた。来年度予算の税収増は、現時点では財務省は試算を出していない。来年度の納税額の算出根拠になる企業業績が確定してないからだ。数字が出るのは11月。だから、「税収増」を5兆円の財源の一部にするとした安倍晋三のコミットは、まさに口先だけの空証文であり、無意味で無責任な政治家の嘘である。問題は剰余金だ。5兆円のうちの3-4兆円が剰余金で充当される。最近、財務官僚はずっとこの手口を使っている。赤字国債は発行せずに剰余金で補填。剰余金とは何か。どこからそんな大金が出て来るのか。ブログでは何度も指摘しているが、これこそ小沢一郎と鳩山由紀夫が言ったところの、官僚の裏金庫たる特別会計から拠出されているのである。2011年以降、特にこの3年間、年度当初と補正の予算編成で、一体どれほどの剰余金が財源として捻出されてきたことか。マスコミはそのカラクリを一切言わない。話題にしない。金子勝をはじめ、政府を批判するネットの左派系論者も言わない。3-4兆円を剰余金で捻り出せるなら、その分の増税は不要なのである。消費税増税は、+3%ではなく+1%でよいのだ。否、必要とする8兆円(国の分は6.4兆円)、すべて特別会計の剰余金で埋めることができるのである。消費税増税は不要なのだ。

財源はある。国庫(特別会計=官僚の金庫=国民の財産)にある。社会保障費の年々の伸び分を充当するだけなら、特別会計の運用益(剰余金)で十分なのだ。それなのに、なぜ消費税を増税するのか。答えは一つ。企業にぶち込む分の財源が要るからである。法人税減税の財源が必要だからだ。


by thessalonike5 | 2013-10-02 23:30 | Trackback | Comments(1)
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Commented by 日本のビンボー人 at 2013-10-02 20:24 x

二回の「選挙」は日本人庶民の大敗北でしたが、いったい(私含む)日本の貧乏人と組織はどう反省してるのでしょう。

政府マスコミ等の「彼ら」、口では日本の、景気だ経済だとか言ってますが、どうも本当はそれより、日本を喰逃げしてるのでははないかと思えます。人口なんか半減したってイイと、日本はどうせ被爆‘劣’島、少しでも海外移住の持参金にしたい、BOSSへの献上金にしたい、と観念してるのではないか。日本大企業がもはや日本人だけのもので無い様に、彼らの真性意識は下々とは別。彼らだけが日本人だと感覚しているでしょうね。地震直後の津波から村人を守るために、収穫直後の籾山に火を付け煙を出して、村人を呼んで海から遠ざけた庄屋の美談にも劣る。日本史の開闢以来初めて武士が庶民の為に命を投げ出した天保の大塩とは真逆。幕末にはハッキリ成立していた日本の、庶民を含む「公け」観念を公然と投捨て踏み躙っている。そういう精神史の位置にいるのが、自公政権の政治家官僚マスコミ等日本現代エリートです。買弁化の心性。
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