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海外投資で積極的にリスクをとろう

長期的な円高トレンドは終わった

2012.10.25

武者リサーチ代表 武者 陵司

武者氏はまず米国経済の復活と日銀の大胆な政策転換による円安の進行を予想。円安が進むことで日本の賃金にはこれまでと逆の上昇圧力が働き、デフレスパイラルから脱却すると主張する。今の日本人のリスク回避の前提は、円高とデフレの継続。しかし、時代は転換する。日本人は今こそ積極的にリスクをとり、海外投資を始めるべきだ。


米景気の回復と日銀の政策転換が契機に

私は長期的な円高トレンドが終わって、基本的には今後円安が進むとみている。長い目で見れば、海外資産を取得して積極的にリスクをとるのは、円安を享受する一つの手段。今は円高で海外の資産を安く買えるのだから、これを利用して海外投資をするのは投資態度として賢明だ。

円相場のカギを握るのは、米ドルが復権するかどうか。ドルは2002年以降、10年間にわたってずっと下落を続けてきたが、このドル下落はいよいよ終焉する局面を迎えている。最大の理由はアメリカ経済の相対的な優位性が明らかになってきたことだ。アメリカの経済はゆっくりとしたペースではあるが、回復は確かなものになってきている。

これを背景に、アメリカではリスクテイクが復活している。NYの株価は世界に先駆けて、リーマンショック後の高値を更新した。あるいはアメリカの住宅価格が、ここにきてはっきりと底入れして上昇に転じている。リスクテイクの復活はアメリカ経済の強さを反映しており、これがドル高円安に結びつくだろう。

さらに今後、日本の金融政策は変わらざるを得ない。自民党総裁に安倍晋三氏が選ばれ、総選挙後に安倍政権が生まれる可能性が強まっている。安倍氏の主張はもっと日銀に働いてもらって、デフレを脱却するという〝上げ潮路線〟。安倍氏は「物価目標を3%にすべきだ」と発言したり、日銀法改正に言及したりもしている。つまり従来の教科書的な金融緩和を超えて、もっとプロアクティブな緩和を求めるのが安倍氏のスタンスだ。来年4月、現日銀総裁の白川方明氏の任期が満了すれば、日銀に対する圧力が強まるだろう。

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