日露:北極海航路開設へ アジア、欧州間 輸送コスト減
毎日新聞 2013年10月02日 15時00分
日露両政府は、北極海経由でアジアと欧州を結ぶ北極海航路で、2017年にも商船を本格運航させる調整に入った。北極海航路はスエズ運河経由の南回り航路の約6割と距離が短く、日本政府は企業の輸送コスト削減のほか、中東情勢が緊迫した際の代替ルートとして期待。安倍・プーチン両政権の接近も背景に、北極海通過に必要な砕氷船のコスト削減や航行手続きの簡素化などについて、ロシアと合意を急ぐ方針だ。【吉永康朗、影山哲也】
日露両外務省は昨年9月、担当大使らによる「日露北極海協議」を開始。今年9月2日の東京の会合で、手続きが複雑な北極海航行の事前申請について、ロシア側が「手続き期間を従来の4カ月から2週間に短縮する」と提案した。これまでにロシアは「2017年までに砕氷船の整備が完了する」と日本側に伝えており、砕氷船を商船に随行させる輸送ビジネスを本格化させる意向だ。
安倍政権は今年4月に閣議決定した海洋基本計画や、7月の関係省庁連絡会議などで北極海活用に向けた体制を整備した。今後、海運業者へのヒアリングなどで具体的な協力の枠組みを詰める。
北極海航路を使えば中東の南回り航路よりも航海を約2週間短縮でき、日本側は「エネルギー・物資輸送のコスト削減につながる」(日本政府関係者)とみている。
さらに▽日本のシーレーンである南回り航路は不安定な中東情勢に左右されるため、安全保障上のリスクを分散する▽北極海を通じたロシアの天然ガス・原油の輸入増で、日本のエネルギー供給の多角化を図る−−との狙いがある。
ロシアはプーチン大統領が2月、北極地域を20年までに発展させる国家安全保障戦略に署名。北シベリア・ヤマル半島沖で開発しているガス田からの輸出ルートを確保し、将来的には、北極海に眠る豊富な地下資源の開発を検討している。北極海への進出を始めた中国を意識し、日露で連携を進める意味合いもある。
ただ、北極海を航行できるのは現状でも夏場の4カ月程度に限られ、予測しにくい氷の状態に航行が左右されるなど、未知数の要素が多い。
日露両国は航行上の技術的な課題を整理し、船の衝突や座礁事故を想定した環境影響調査などを行う方針だ。