クローズアップ2013:福島第1原発・汚染水問題 汚染水、手に余す東電
毎日新聞 2013年09月28日 東京朝刊
しかし、今回試運転を再開したアルプスは、東芝が11年5月に技術提案してから工事開始までに約10カ月、設置工事に半年、水や汚染水などを使った試運転までに1年超を費やした。高性能アルプスも期待通りの工程で稼働するかは不透明だ。
地下水が原発の建屋に流入して汚染する前にくみ上げて海に流す「地下水バイパス」も計画しているが、井戸から最大で1リットル当たり910ベクレルのトリチウムが検出され、地元の理解が得られるかは微妙だ。【鳥井真平、奥山智己】
◇社長「現状モグラたたき」
「事故から2年半が過ぎ、今なお大変なご迷惑、ご心配をおかけしている」。27日に開かれた閉会中審査の衆院経済産業委員会で、東京電力の広瀬直己社長は冒頭、謝罪の言葉を述べた。議員から、汚染水対策の進捗(しんちょく)状況などを問われると、「手が回っていないところがある」「モグラたたきの状況が続いている」と、対応の難しさを訴え、国が積極的な関与を始めたことを「ありがたい」と話した。
馬淵澄夫氏(民主)らが、福島第1原発事故の3カ月後の11年6月に地下水の遮水壁設置を決定しながら見送った経緯を問うと、広瀬社長は「優先順位をつける中で、海側に遮水壁を作ろうという議論になり、(民主党政権と東電による)統合対策室で決定した」と、複数の課題に取り組む中、対策が後手に回ったことを認めた。
複数の議員から、東電のコストカットが問題拡大の背景にあるのではと問われると、「(対策費用を)ケチってやるべきことをやらなかったということは決してない」と否定。汚染水対策を含む廃炉費用として用意した約9600億円に加え、今後10年間で新たに1兆円の資金枠を設定して対応することを説明した。しかし、「(計約2兆円で)全部足りると申し上げてはいない」とも語り、汚染水対策の展望がはっきり見通せないことを際立たせた。
現在の処理計画は(1)アルプスの本格稼働(12月以降)(2)同規模の処理装置の稼働(来年秋以降)(3)政府が国費を投入して新設する高性能の処理装置を稼働(同)−−などの条件を達成する必要がある。それ以前に、汚染される前の地下水を海に流すことについて地元漁協の理解を得ることも必要だ。
東電は14年度中に汚染水浄化の完了を目指すが、広瀬社長は「とにかく汚染水をどんどん処理しなければならない」などあいまいな答弁に終始。議員から「求められるのは結果だ」(鈴木淳司氏=自民)と迫られる場面もあった。【清水憲司、中西拓司】