「プログラム勝負」になるだろうが、選手の技術が勝敗を分けるのは言うまでもない。ジャンプは、男子はクリーンな4回転をいかに跳べるか、そして4回転―3回転といった連続ジャンプがポイントになるだろう。
■女子のジャンプ、カギを握るルッツ
女子のジャンプは、ルッツがカギを握るかもしれない。女子の場合は骨格の影響があるのか、ルッツとフリップの左足(右足)で踏み切る際のエッジ(刃)の使い分けに苦しむ選手が多い。ルッツがアウトサイドエッジ、フリップはインサイドエッジだが、それぞれ逆になってしまうことが多く、減点の対象になる。ただ、難易度が高いルッツはフリップより基礎点が高い。ルッツをクリーンに跳べれば、フリップでミスをしたとしても傷口は小さくてすむ。
ジャンプだけならチャンピオンクラスが何人もいるような時代。ジャンプばかりに目がいきがちだが、ジャンプ、スピン、ステップの3つの要素のバランスが取れている選手はそう多くはいない。
特にステップというのは、基本のスケーティングができているかどうかで大きく違ってくる。実際、ジャンプ、スピンは素晴らしいけれど、ステップになると、とたんに動けなくなる選手がいる。ステップをしているときによく動く選手というのは、エッジの使い方がクリーンだ。正確な動きで全体に余裕が出るから、内容も表現もよくなる。
■基本徹底の浅田、ステップが自然に
浅田はバンクーバー五輪後から佐藤信夫コーチの指導を受けている。佐藤コーチは基本のスケーティングをものすごく大事にする人。浅田は世界チャンピオンになった選手だけに最初は大変だったらしいけれど、それでも辛抱強く基本の大切さを彼女に説いた。その結果、浅田はいまは上下動もなくなり、とても自然にステップをこなして拍手が出るようになった。基本のスケーティングが一番よくなったと思う。
ジャンプで加点を取るのは大変だが、スピンは本当にいいスピンをすれば加点はもらいやすい。スピンでいかに点を稼ぐかも重要な要素となる。男女とも大接戦が見込まれるソチ五輪のメダル争い。総合力が問われている。
(日本スケート連盟名誉レフェリー)
杉田秀男(すぎた・ひでお) 1935年1月16日、東京都生まれ。現役時代はフィギュアスケートのシングルの選手として活躍し、56年の全日本選手権で優勝、世界選手権にも出場した。引退後は審判に転身し、68年から国際審判に。五輪には日本チームで3度、審判として2度参加した。現在は日本スケート連盟名誉レフェリー。
2014年ソチ冬季大会へ向けて、フィギュアスケートの五輪シーズンが本格的に幕を開ける。日本は男女ともメダルを期待できる布陣だが、海外勢との大激戦が予想される。銀盤の争いを占っていきたい。
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