2010年9月9日木曜日

戦争とレイプ(2)戦略的に女性をレイプ。史上最悪の暴力国家コンゴ


長期独裁政権というのは権力の暴走がどこまでもエスカレートしていくので最悪の結末を迎えることが多い。アジアではマルコス大統領やスハルト大統領が国を貧困に巻き込んで政権末期の瓦解は劇的なものがあったのは記憶に新しい。

そして北朝鮮の金日成・金正日体制があって、貧困に追い詰められていて近い将来、何らかの激震に見舞われる可能性も高い。


いまだ混乱と暴力の中


軍事独裁ではミャンマーが同じ道を辿っており、この国が崩壊した暁にはアジアの勢力図が変わっていく。具体的には東南アジアにおける中国の影響力が非常に増していく。

長期政権が崩壊したあとに、それをうまくキャッチアップして速やかに民主政権を樹立できればいいのだが、そうでないと国内の勢力が群雄割拠の様相を呈することになって内乱に結びつく。

現在、長期政権の崩壊から史上最悪の動乱に見舞われて、14年経ってもいまだ解決するどころか混迷を極めている国がある。アフリカのコンゴだ。

1971年、モブツ大統領が独裁政権を発足させてから1997年までザイール共和国という名前だったこの国は、いまだ混乱と暴力の中で揺れている。

モブツ大統領

事の起こりはモブツ大統領が権力に執着して大統領を辞任せずに政敵であるムレンゲ人の追放を企てたことだった。これによって政府軍と解放勢力が激しく激突して、一年に及ぶ戦闘によって解放戦線側がモブツ大統領の体制崩壊を成功させた。

新たに大統領についたのはローラン・カビラだったが、今度はカビラ大統領がツチ族の排除を初めて早くも内乱が勃発した。その影響で150万人が死亡するという最悪の結果に陥った。

国連の調停の最中にカビラが暗殺されて事態は混沌として、国連や周辺国の調停虚しく、国内が無法地帯になって現在に至っている(現在のカビラ大統領は、その息子)。

反政府組織は主要なもので3つあって、それが国内を掌握しきれない政府軍と合わせて三つ巴、四つ巴で殺し合いをしている。民族対立がそれに重なって、その殺し合いは凄惨極まりない。

相手の兵士を拷問にかけて性器を切断させて食わせるだとか、生きたまま両目を抉る、手足を切断する、木に逆さに縛り付けてじわじわと撃ち殺していく……と、まさに野獣のような殺戮が全土を覆い尽くしている。

憎悪によって人間がどれだけ「けだもの」になれるのか、それを調べたければコンゴに行けばいい。現在、地球上でもっとも憎悪と暴力が吹き荒れている地がコンゴである。

女性にとってもっとも危険な場所


ちなみに、この「地球上で」というのは私が言っているわけではない。人権団体「V-day」がこう書いている。

Congo is the most dangerous place on the planet to be a women or a girl.

コンゴは、女性や少女にとってこの地球上でもっとも危険な場所です。

この団体が言うように、史上最悪の暴力地帯で、もっとも犠牲になっているのは女性である。

女性たちは対立する民族に組織的に、戦略的にレイプされ続けている。子供も大人も関係ない。妊婦も病人も関係ない。

武装した民兵が集団で村を取り囲み、男たちを射殺し、女を一箇所に集めて片っ端からレイプしていくのである。


ニューズウィークは、「被害女性の大半は、子供や家族が見ている目の前で、1度に2人から6人の男に強姦された」と書いている。まさに、容赦ない集団レイプだ。

殴りつけ、叩きつけ、気に入った女は略奪して性奴隷にする。膣内にライフルを突っ込まれたと証言している女性もいる。服を着ることを許されなかった女性もいる。性奴隷にされた女性は、自殺するか死ぬまでレイプされ続ける。

たとえ助かったとしても、強姦された女性はサポートされているわけではない。レイプされたショックで深刻な精神的障害を抱えたり、拷問で障害を持つ身体になっていたり、見せしめのために手足を切断されていたりする。

避妊などされるはずもないから、望まない妊娠に、性病、そしてエイズ感染も報告されている。歩けなくなった女性もいるし、3年間も病院で寝たきりになった女性もいる。

また、生存者は忌まわしい出来事の被害者として「家族や地域社会に棄てられて」しまう。社会的にも棄てられた女性に生きる術(すべ)はない。

そんな女性がまさに数千人・数万人規模でコンゴを覆い尽くしている。

ヒラリー・クリントンの怒り


アメリカのヒラリー・クリントン国務長官はコンゴの難民キャンプを訪れて、その史上最悪の状況を目の当たりにして涙した(被害者が入院している病院では、1人は妊娠8か月のときに被害に遭い、おなかを裂かれて胎児が引き出された)。

ヒラリーは、「鬼畜の行いが進行している」と記者会見で話し、「この目で見たことにただただ圧倒されている。苦痛と絶望はいかばかりか、それをここで表現するのは難しい」と述べた。

それに飽きたらず、南アフリカのシティプレス紙に寄稿して、このように書いている。(http://tokyo.usembassy.gov/amview/j/amview-j20100501-81.html)

「女性や少女の場合は、性暴力とジェンダーに基づく暴力が戦争の手段となり、まん延したため、被害者は想像を絶する数に上る。毎月約1100件の性的暴行が報告されている。1日に換算すると平均36人が性的暴行を受けている」

「妊娠8カ月で暴行された女性に会った。彼女が自宅にいると男たちが家に押し入ってきて、夫と2人の子供を外に連れ出して前庭で射殺した。家に戻ってきた彼らは、残っていた2人の子供も撃ち殺し、彼女を殴って集団で暴行した後、死んだと思って放置した」

「米国は、こうした暴行や、暴行した者、そして暴行をけしかけた者全員を非難する。これらは、人間性に対する犯罪である」

「コンゴ東部では、紛争の手段としての性暴力およびジェンダーに基づく暴力により、想像を絶する数の女性が犠牲になっており、私は今週その被害者たちを訪問する。毎月約1100件の性的暴行が報告され、1日に平均36人の女性・少女が性的暴行を受けている」

政府はいったい何をしているのだというのはコンゴでは意味を成さない。何しろ政府軍が強姦を率先してやっているからである。

後進国の軍や警察は、まさにマフィアや暴力団そのものであることは、アジアのみならず、アフリカでも同様のようだ。

では国連や平和維持軍は何をやっているのか。恐らくあまりにも暴力の規模が大きいので追いついていない。

そして、平和維持軍そのものがレイプ疑惑・性的虐待・売春疑惑で追求も受けている。その数は分かっているものだけでも150件にもなるという。



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