「同情」という、攻撃的で、傲慢で、下劣な感情

2013/10/02


面と向かって反論せず、コソコソとブログに幼稚な記事を書いて得意気な彼。可哀想すぎる。

とあるユーザーから、こんな批判をツイッター上でいただきました。


この人は「可哀想」だ、という目線

他人に対して批判的な言葉を投げかける際に「可哀想」という「同情」を持ち出す人ってけっこういますよね。確信犯的にやる人もいれば、無意識的に口に出してしまう人もいます。ぼくはそれはもう頻繁に、「可哀想なヤツ」扱いを受けております。

相手に向かって「お前は可哀想なヤツだ」と吐く人たちは、「同情」という感情が、強烈な攻撃性を持っていることを、よくわかっているのです。

「同情」が攻撃的という表現には、違和感が伴うかもしれません。説明しましょう。


まず第一に、「この人は『可哀想』だ」という評価は、「上から目線」の構造を持っています。「同情」というのは、相手には確実に「欠如」しているものがあると考え、「君にはまだわからないだろうけれど、君が知らない『幸福』があるのだよ」と言うメッセージを伝えることです。これはもう、言うまでもなく傲慢です。


たとえば貧しい国々に生きる人たち「可哀想」なのでしょうか。

見方によっては、彼らの方が幸福であることもあるでしょう。大分前にウガンダから来た留学生のお話を聞く機会があったのですが、事実、彼らの方が都市に住むぼくらを「可哀想」だと感じることもあるそうです。

東京はつながりがない。困った時に助けてくれない。東京の人は可哀想だ。ウガンダはつながりが豊かで(socializedされており)、困った時は近隣の人が必ず助けてくれる。さて、一体どちらが「可哀想」なのでしょう。

「可哀想」という視線で相手を見るとき、ぼくらは、自分の絶対的な価値基準を、相手に押しつけています。たしかにこの世には、誰がどう見ても「可哀想」な状況はありますが、冒頭の引用のように、自己肯定・他者否定のために「可哀想」という言葉が使われるのも事実です。


第二に、この言葉は一見「愛」「慈悲」と見分けがつかない、巧みな嘘っぱちとして機能します。たとえば冒頭の方も、ちょっと見方を変えるとぼくに対して愛を持っているようにも見えるわけですね。

しかし、それは欺瞞です。これは「お前のためを思って言っているんだ!」という言葉に通じるものがあります。「可哀想」だなんて微塵も思っていなくても、「可哀想」と表明することによって、「オレはお前をケアしている」というメッセージを、相手に対して、周囲に対して伝えることができるのです。これは己を「愛ある人」に偽装する、実に卑怯なやり方です。


ぼくは相手を攻撃したいと考えるときは「同情」を使います。これまで、数回ほどしか使ったことがありませんが。

この場合大切なのは、言葉だけで「可哀想ですね」と言うのではなく、本気で相手のことを「可哀想な存在」だと考え、相手を救うために行動するのです。すると、それは「自分はお前より優れている」と思い込んでいる相手にとって、最大の侮辱として機能します。下手にやり合うよりは、よっぽど相手の人生に影響を与えることができますよ。エネルギー掛かるので、オススメはしませんが。


余談ですが、同情の変形パターンとして「あなたの将来が心配です」という攻撃の仕方もありますね。これもしばしば投げかけられます。いやー、気にかけてくださってありがとうございます。余計なお世話でございます。


というわけで、同情という悪感情に気をつけましょう。どうしてもそれを使わなければならないときは、覚悟をもって行動しましょう。これは自他を傷付けるナイフのようなものですから。


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