ダチョウ倶楽部・肥後克広さん、２０年来の腰痛を体操で克服

マッケンジー法に基づいた腰を反らす体操を披露するダチョウ倶楽部の肥後克広さん。力を入れず無理しないことがポイントだ＝東京・四谷（写真：産経新聞）

　■２０代で椎間板ヘルニア発症

　お笑いグループ「ダチョウ倶楽部」のリーダー、肥後克広さんは２０代前半で歩くことができないほどの腰痛に襲われ、急性の腰椎椎間板ヘルニアと診断された。それ以降、２０年以上にわたり、慢性的な腰痛に悩まされていたが、２年前に始めた腰を反らす体操で、腰痛のない日常を取り戻した。この体験をまとめた著書『あきらめない腰痛』（太田出版）が好評で、腰痛のない人生の快適さをかみしめている。（文・平沢裕子）　

　ヘルニアと診断されたのは２１歳のときです。最初、腰に違和感があり、そのうちしびれる感じがして、徐々に痛みに変わっていきました。歩くのもままならず、はっているという感じで病院に行ったら、「１週間後に手術をしましょう」と言われました。

　手術までの１週間はほとんど寝たきりの状態。手術をするつもりでいましたが、たまたま先輩にヘルニアの手術をした人がいて、「手術で痛みが一時的にとれても、また痛みが出てくるので手術はあまり勧めない」と言われました。手術の傷痕を見せてもらったら大きかった。だんだん怖くなって、手術の日に病院に行くのをやめちゃった。

　腰痛とのつきあいはこのときから。カイロプラクティックや整体に通ったり、公園の鉄棒にぶら下がってみたり…。腰に良さそうなことはいろいろやりましたが、腰痛があるのが普通の状態でした。

　仕事で地方へ行くときは、メンバーの２人に荷物を持ってもらうなど助けてもらいました。でも、３０代の頃は「腰痛で左足がしびれる」と言ってても、「仮病じゃないの？」と疑われてました。腰痛は血が出たり熱が出たりするわけではなく、見た目では分かりにくい。痛くてつらいのがなかなか分かってもらえないのはつらかったですね。

　体を張った「リアクション芸」のときは、市販の腰痛ベルトで腰をがちがちに固めてやっていました。一度、ハワイのロケで激しい腰痛に襲われ、現地で腰痛ベルトを買ってきてもらったこともあります。メンバーの２人にはいろいろ助けてもらって、３人だからこれまで仕事をやってこられたかなと思っています。

　「腰痛を根本的に解消する医療」を提唱する銅冶（どうや）英雄先生の「お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニック」（東京都千代田区）を受診したのは一昨年の夏。マネジャーから勧められたのがきっかけです。ただ、最初は行くのが嫌でした。既に腰痛歴も２０年以上になり、自分なりの腰痛対策ができていたので、今さら別のことをやりたくなかったんです。今までのやり方を否定されるのが嫌だったし、新しく何かをやることで逆に症状が悪くなる心配もありました。

　１回だけのつもりで受診したところ、診断は前と同じで腰椎椎間板ヘルニア。でも、手術するほどではなく、「運動療法をしましょう」と。これがマッケンジー法に基づいた体操でした。

　〈マッケンジー法はニュージーランドの理学療法士が考案した腰痛の診断・治療法。最大の特徴は腰を後ろに反らせる（腰椎を伸ばす）こと〉

　椎間板ヘルニアの痛みは椎間板の形がゆがんで、中にある髄核が飛び出して神経を圧迫することで起こるのですが、この体操は椎間板のずれを正しい位置に戻してくれるそうです。１畳分のスペースがあればでき、１回５分もやれば十分。これだったら毎日続けても大丈夫かな、とやってみました。３カ月目ぐらいからしびれが弱まってきて、１０カ月目にはしびれや痛みはすっかりなくなりました。

　腰痛がなくなったことで、長時間座りっぱなしのスタジオ収録や外でのロケ、地方への乗り物での移動が苦にならなくなりました。腰の痛みをかばいながらやっていたリアクション芸も今では楽勝です。

　実は、ずっとサーフィンがやりたかったんです。でも、幅の狭いボードの上で寝た状態から立ち上がるなんて、腰痛持ちには無理と諦めていました。今年の夏に初めてチャレンジして、ちゃんと立つことができました。腰痛持ちの方は多いですが、諦めないで痛みとサヨナラする方法を探してみてはいかがでしょうか。

　【プロフィル】肥後克広（ひご・かつひろ）　昭和３８年、沖縄県生まれ。６０年、上島竜兵さん、寺門ジモンさんの３人でお笑いグループ「ダチョウ倶楽部」を結成、リーダーを務める。体を張った芸風が持ち味の「リアクション芸人」としてテレビや舞台などで幅広く活躍中。著書に『なんくるないサー！オッカーと僕とアメリカだった沖縄と』など。