【クレジット市場】国債バブルの膨張を警戒、メリル日本証とみずほ証
10月1日(ブルームバーグ):メリルリンチ日本証券とみずほ証券は日本国債市場でバブルが膨張しつつあることに警戒感を示している。黒田東彦総裁率いる日本銀行が異次元緩和で大量の国債買い入れを実施しているためだ。
ブルームバーグ日本国債指数 によると、7-9月の国債収益率は9月27日現在で1.4%のプラスと、主要10カ国(G10)の中で、イタリアのプラス1.6%に次ぐ大きな上昇となった。日本の長期金利 の指標となる新発10年物国債利回りは0.68%と世界最低水準。一方、米国 の長期金利は2.62%程度。
日本の長期金利について、メリルリンチ日本証は2014年1-3月の下限を0.5%程度と予想し、来年度の想定レンジを0.5-1.15%としている。東海東京証券では日銀がデフレ脱却のために月7兆円超の国債購入を行っていることから来年度に一時0.25%まで低下する可能性があると予想している。
メリルリンチ日本証の大崎秀一債券ストラテジストは、「金融政策を強力に進めることによって金利を低位に抑えているが、それが外れると金利が上昇する可能性があるという意味でラストバブルだととらえている」と指摘。「景気に対しては、けっこう強気に見ているので、16年半ばぐらいにはゼロ%金利を止めて、利上げに踏み切るのではないか」と述べた。
日本銀行がこの日午前に発表した企業短期経済観測調査(短観、9月調査)では、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス12となった。前回調査から8ポイント上昇し、3四半期連続で改善。円安進行に伴う輸出採算の好転が続いていることを示した。
消費増税安倍晋三首相は1日、日銀短観の結果を踏まえて消費増税の最終決断と経済対策を公表する。政府は現行5%の消費税率を2014年4月から8%、15年10月から10%へ引き上げる計画だ。
みずほ証の三浦哲也チーフ債券ストラテジストは、「日本の景気は完全に上向き。それに引き換え金利は低下傾向にある。そこの齟齬(そご)が全く合わない。株価の水準とも不釣り合い」と説明し、国債市場がバブル局面に近づきつつあるとの見方を示した。また、日本の選択肢は「デフレを克服して税収を増やし、名目経済が拡大するか、デフレのまま財政リスクプレミアムが高まるかのどちらか」だとも語った。
ブルームバーグ・ニュースの調査によると、増税による景気への悪影響を抑えるため、総額5兆円程度の予算措置が見込まれている。またエコノミストを対象に行ったブルームバーグの調査では、日銀は来年上半期に追加緩和を実施するとの予想が大勢を占めた。
りそな銀行の黒瀬浩一チーフストラテジストは、現在の長期金利の水準について、「バブルというよりも正当な水準だと思う。過去10年以上もデフレが続いている。異常な事態に対応して、異常な金融政策を行っているので、金利水準も正当化される」と指摘した。
米量的緩和縮小なら金利上昇現行の金利水準について、RBS証券の福永顕人チーフ債券ストラテジストも、「日銀の国債買い入れが続くとの前提であれば、正当化されるが、いずれ終了することになれば、この水準は維持できない」と指摘した。米国が量的緩和縮小に向かえば、日本の金利も上昇すると見込んでいる。
財務省はこの日午前、年度下期入り後で初となる10年利付国債の価格競争入札(発行額2兆4000億円)を実施。表面利率は前回債と同じ0.8%となった。前回の入札では応札倍率は3.5倍と、過去10回平均の3.25%を上回っている。
長期金利 は、日銀の緩和実施の翌日4月5日に過去最低水準0.315%を記録。その後は上昇に転じて、5月23日には一時1.0%まで達した。その後は再び低下に転じ、9月19日には0.665%を付けた。
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更新日時: 2013/10/01 11:07 JST