名古屋市北区の在日コリアンの高齢者ら向けデイサービスセンター「いこいのマダン」が１０月１日に開設１０年を迎えるのを記念し、センターで提供する韓国料理と和食を融合させた在日独特の家庭料理のレシピ本作りが進んでいる。運営するＮＰＯ「コリアンネットあいち」事務局長の金順愛さん（５１）は「在日コリアンのありのままの姿を、知恵を絞った食文化を通じて紹介したい」と話している。

　「マダン」（広場の意）は２００３年、東海地方では初めて在日を対象とする施設として開設した。１世は言葉や習慣の違いから、他の施設にはなじみにくい背景があった。これまでに約１２０人が利用。世代交代が進み、利用者の約６割は２世で、日本人も利用し始めている。

　本のタイトルは「ハンメの食卓　日本でつくるコリアン家庭料理」。ハンメはおばあちゃんの意。編集スタッフで在日２世の朱巴子さん（６４）らが利用者から聞き取り、在日１世が古里の料理を日本の食材を使って工夫した約５０点を選んだ。

　牛すじ肉じゃがは、肉じゃがをコチジャン（唐辛子みそ）で味付けし、にんにくを入れた。利用者の柳渕淑さん（８３）は「和風とちょっと違う味わいで、食欲が出る」と笑顔をみせる。冷麺のハンメそうめんは、本来の芋やソバの麺の代わりにそうめんを使い、野菜を具に唐辛子とにんにくの調味料「ヤンニムジャン」で味付けした。

　朝鮮半島にルーツを持つ人々は日本社会に定着している。しかし、在日２世の金さんは「在日という存在への理解が深まっておらず、在日を知るきっかけになってほしい」と話し、生活史と結びついた家庭料理を紹介する本の出版を決めた。本では名詞の「サムサ」に「する」を付けた「サムサする（包む）」など、「在日語」についても書いている。

　ゆいぽおと（名古屋市東区）が１１月上旬に発行予定。Ｂ５判で８０ページ、１５７５円。問い合わせはコリアンネットあいち（０５２・９１０・３３０９）へ。【花岡洋二】