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経済
要求高くて対価は低い 佐川がアマゾンとの取引撤退 宅配業界大揺れ
もともとヤマトのインフラは個人間取引を前提にできているが、佐川の場合は企業間取引がベース。その差が拠点数などに現れている。佐川は、配達員の数が足りない分は「アンダー」と呼ばれる下請けを起用して補ってきた。
配達員のほとんどが社員であるヤマトでは、配達する荷物が増えるほど効率が上がる。だが、下請けに依存する度合いが高い佐川では、数量の拡大は外注費増に直結する。その分だけ、アマゾンからの値引き要求の打撃が大きかったとみられる。佐川は、今後は原点である企業間物流に活路を求める。
一方のヤマトも安泰ではない。佐川の仕事の一部は日本郵便の「ゆうパック」が引き継いだが、配送品質が心配なアマゾンはこの仕事をしばらくヤマトに任せる方針だ。急激に増えた仕事を、ヤマトは配達員の残業で何とか回している。さらに物量が増えたときの人件費増をどうすべきか、ヤマトにとっては頭の痛い問題だ。
アマゾンへの対応をめぐり、日本の宅配業界は大きく割れた。だが、企業がそれぞれの特徴をはっきりさせて生き残りを図るのは当然のこと。問題は、これがコップの中での争いに過ぎないかもしれないことだ。
独DHL、米UPS、フェデックスなどは、グローバル企業のサプライチェーン改革や新興国市場の拡大を手掛かりに急成長している。彼らにとって、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を含めアジアでの自由貿易圏拡大は強い追い風だ。
近い将来にアジアが主戦場となる流れをよそに、国内の過剰サービス競争に明け暮れているようでは大きなチャンスを見逃すことになりかねない。(「週刊東洋経済」副編集長 西村豪太)
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