“ちょっとだけ乗る”都市型カーシェアリング
乗り捨て型のカーシェアリングサービス「ハーモ・ライド」は、豊田市が進める低炭素社会システム実証プロジェクト「Smart Melit(Smart Mobility & Energy Life in Toyota City)」において、次世代モビリティをテーマにした実証実験の一つである。同時に開始した、クルマと電車やバスなどの公共交通機関を乗り継いでの移動ルートを1回で検索できるスマートフォン(高機能携帯電話、以下「スマホ」)向けサービス「Ha:mo NAVI(ハーモ・ナビ)」と組み合わせ、“人にも街にも社会にも優しい移動”の実現を目指す(関連記事『クルマと公共交通機関の乗り継ぎを一発検索』)。
ハーモ・ライドの実証は、中京大学豊田キャンパスと、最寄り駅である愛知環状鉄道線・貝津駅および名古屋鉄道豊田線・浄水駅の間で実施する(写真1)。中京大・豊田キャンパスと貝津駅の距離は徒歩8分程度。浄水駅へはスクールバスで10分ほどかかる。貝津駅からキャンパスへは上り坂のため、急ぐと息が切れる。浄水駅ではバスに乗り遅れると、時間帯によっては次のバスまで20分以上待つこともある。
【写真1】愛知県豊田市の中京大学豊田キャンパス内を走る超小型電気自動車(EV)の「コムス」
まず10台からカーシェアリングを始め、2013年秋には50〜100台に増やす。
ハーモ・ライドでは、こうした駅から最終の目的地、あるいは複数の目的地間の移動など、歩こうとすれば少し億劫に感じるであろう数キロメートルの移動を補う手段として提供する。ここが埋められれば、公共交通機関と組み合わせても、より自由に移動できることになる。全行程をクルマで移動するのではなく、「公共交通+ハーモ」に切り替えてもらうことで、街全体の交通をスムースにし、低炭素な交通社会作りに貢献することを目指す。
そのために、ハーモ・ライドは、ワンウェイ型シェアリングシステムを採用していることが最大の特徴だ。借りる場所も返す場所も選べ、「乗り捨て」もOKである。乗りたいと思った時に“ちょっとだけ”借りられるわけだ。
今回の実証では、合計で16台分の駐車スペースと充電器を備えたステーションを設置した。貝津駅に4台分、浄水駅に8台分、豊田キャンパス構内には南側と北側の2カ所にそれぞれ4台分である。10台の電気自動車(EV)を会員で共同利用する。料金は、現在は試行段階のため無料だが、将来の事業化を見据え、有料にする方針だ。
2012年10月にモニター会員10人で実証を始め、11月からは会員を100人程度にまで徐々に増やしていく。さらに2013年秋をメドに、ステーションを豊田市の中心部にも設置し、15〜20カ所にまで増やす。EVは50〜100台を導入し、会員数は1000人規模に拡大する計画だ。
スマホを使ってEVと返却先を確保
ハーモ・ライドの利用方法はこんな手順だ。会員は、スマホを使って、各ステーションに停まっているEVを確認する。スマホには、駐車中のEVの車両ナンバーとともに充電状況が表示される。例えば、「フル(満充電)で55km走行可能」「充電中で40km走行可能」など、充電量に応じた航続可能距離が確認できる。
次に、運転したい車両を選び、移動後にEVを返却するステーションを指定するとEVを確保できる。この時、返却したいステーションが満車の場合はEVを停められないため、EVは確保できない。つまり、運転できるEVと、返却できるステーションの両方をおさえられて初めて、EVの利用が可能になるわけだ。利用開始と返却時の認証には、ICカードを使う。