取り返しがつかないこと、既に世界に拡散していること、体内に蓄積されやすいこと。この三つの共通点を持つ科学技術とは―。答えは、遺伝子組み換え(GM)と原子力▲
仏記録映画「世界が食べられなくなる日」を見て震撼(しんかん)した。分かったのは、GM食品や放射性物質を長期間、食べたりさらされたりしたらどうなるのか、実は誰も分かっていないという現実▲
GM食品の「安全」の根拠は、ラットに3カ月与えても問題ないとの実験。では平均寿命に当たる2年間、GMの餌と農薬を与え続けたらどうなるか。極秘実験の結果には、目を覆う。4カ月で死に始め、1年で腫瘍が肥大、21カ月目にはメスの80%が乳がんになった▲
今、米国産のトウモロコシや大豆の9割がGM。最大の輸入国日本では、飼料や「主な原材料」でない場合、表示の義務はない。「遺伝子組み換えでない」という見慣れた、しかし奇妙な表示に頼るだけでは避け切れない。「結果」が分かるのは数十年、数百年後▲
映画には、事故後の福島の映像も。「故郷も、生活も奪われた」「モルモットにされてしまった」…。悲痛な叫びが、世界2位の58基の原発を持つ仏の、広大なGM作物畑の風景に重なる▲
「直ちに人体には影響がない」「汚染水漏れの状況はコントロールされている」。見えない危険から目をそらす言葉は、怖い。食や環境の安全を未来に約束できない科学技術は、手放す勇気を。