社説
JR組織再生 鉄路の維持が大前提だ(9月29日)
荒廃した組織の実態を考えれば、もはやJR北海道に自力再生を期待するのは無理だ。社外から知恵と力を借りる以外に道はない。
鉄路は公共財で、路線の堅持は地域を基盤とする企業の責務である。組織改革は、これを大前提としたものでなければならない。
レールの異常放置問題で国土交通省は特別保安監査を終えた。近く事業改善命令を出す見通しだ。
JRが今やるべきことは明白だ。改善命令を待つことなく、問題点を洗い出す。どのように改革を進めるかを含め、その概要を道民に示す。再生への第一歩を急ぐ必要がある。
メスを入れるべき組織の病巣がどこにあるか、見当はつくだろう。
函館線大沼駅構内の貨物列車脱線事故を機に発覚したレールの異常放置は267カ所に広がった。安全軽視の背筋が寒くなる実態を許してきたのは本社のずさんな管理体制だ。
「現場はきちんとやっていると本社は考えていた。チェックの仕組みを持っていなかった」。野島誠社長の発言には驚かされる。
安全最優先の組織で人心の荒廃が進んでいると言うしかない。経営陣には管理体制の欠陥を放置した責任の所在の明確化も求めたい。
聞き逃せないのは人員と資材不足を指摘する声が現場から上がっていることだ。「必要な人員を配置している」といった野島社長の認識とは異なる。社内の意思疎通に問題があると言わざるを得ない。
JRは2年前の石勝線特急脱線炎上事故を教訓に昨年、安全基本計画を策定した。だが、事故やトラブルが絶えない。だからこそ、外部の目で組織を点検する必要がある。
尼崎JR脱線事故を受けたJR西日本の取り組みは参考になる。機械工学や心理学の専門家らによる委員会を設置し、安全対策などで提言を受け、施策に反映させた。
「存続が危ぶまれる危機的状況」(野島社長)と考えるのなら、こうした機関を設け、組織の点検はもちろん、改革内容を含め、提言を得ることを真剣に考えるべきだ。
国交省は、JR北海道への役員級の人材派遣をJR東日本に要請する方向で検討している。改善命令などで改革断行を迫るだけでなく、それが円滑に進む支援も求めたい。
今回の保安監査では異例とも言える経営部門も対象とし、経営効率化と安全確保の両立ができているかなどを調べた。安全がないがしろにされている背景に脆弱(ぜいじゃく)な経営基盤が指摘されている以上、当然だ。
ただ、効率化という物差しだけで経営を考えるのは適切ではない。旧国鉄を分割し、JR北海道を世に出した国の責任をまっとうすべきだ。
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