記事
- 2013年09月30日 00:19
死にかけの日本の医療を食い漁るファンド様
29日の朝日新聞1面に「介護バブルに群がるファンド」という見出しで、施設を買いあさるファンドについての記事が書かれてある。
以下、記事の抜粋。
このファンドは日本では今は介護施設だけをターゲットにしているが、本拠地のシンガポールでは病院も投資対象にしている。
パークウェイ・ライフ・リート(以下、PLR)のホームページにはour growth strategyとして、厳選した投資、先見性のある資産運営、細心に行き届いた財務管理を謳っている。
当然のことながら、介護施設や病院の社会的役割などに関する言及はない。
この会社の唯一のゴールは投資家を満足させる投資・資産管理であり、地域社会の健康管理や患者周辺の満足度などではない。
PLRのような投資ファンドは東南アジアでは日本の大学病院を4つ5つ集めたような巨大な病院に投資しているが、こういうところでは(というか普通のクリニックでも)、自費で払える富裕者層か巨大企業に勤めていて何らかの民間保険に加入している人しか相手にされない。
崎谷さんという脳外科医がインドネシアの病院やクリニックの同業者に「一般のインドネシア人が心筋梗塞や脳卒中で救急搬送されてきたら、どうするのか」と尋ねたところ、「検査もせずにそのまま放置だね」という回答であったらしい。
(「新・医療ビジネスの闇」学研パブリッシングより)
日本は国民皆保険だから大丈夫だ、諸外国とは制度が違う、よく言われてきたが、事情は随分と怪しくなっている。
保険料の自己負担分を払えない人達は増大(=入院・入所の未払い分は積みあがっている)しているし、保険のカバーする範囲は狭くなってきている(介護保険の要件厳格化など)。
その上、そもそも保険料が払えなくて保険をもっていない人たちも着実に増えている。
今後も高齢化は進むし、自己負担分は増えていくので、介護費や医療費を払うのがしんどくなる人たちは確実に増えていくだろう。
2010年のOECDヘルス・データによれば、日本の医療費の対GDP比は加盟31か国中、第22位。
人口1000人当たりの医師数はドイツの6割、アメリカの7割に過ぎない。
この「貧困な」医療資源をファンドが運営する施設や病院に吸い取られ、利益を「配当」に回されるならば、行き先は見えている。
保険制度が破たんしているアメリカの自己破産者の理由の第一位は医療費未払いで、その割合は2001年の46%から07年の62%まで6年で約50%増大しており、その多くは中流の持家所有者である。
PLRのような投資ファンドの顧客対象(投資家、利用者とも)は富裕者層であって、中流以下ではない。
「村上ファンド」の村上彰氏が手がけた施設、東京・白金の「ザ・レジデンス白金スイート」が転売した価格は1区画8000万から1億数千万(1部屋7000万~1億3千万超)に上る。
医療を成長産業と位置づけ、外資導入・競争力強化などを指向する向きは、医師会など職業団体を「抵抗勢力」とラべリングして、世間にアピールするが、実情はそれほどナイーブではない。(そう簡単に上手くはいかない。)
医師会など職業団体には融通の利かない面はあるが、それなりに日本の医療を守ってきた機能は有している。
かつて、村上彰氏は「お金儲けは悪いことですか?」とキレていたが、答えは出ている。
金融業界ではお金儲けは100%いいことなんでしょうけど、医療業界では金儲けの優先順位は一番高いわけではない。
政府のやることは、外資の導入などではなく、医療資源をせめて諸外国並みにまで厚くして、国民皆保険制度を建て直すことだ。
あるいは、放棄するなら放棄するで、堂々と宣言して、それに見合った設計を組み立てることだ。
このまま、なし崩し的に制度崩壊に向かうなら、業界自体が市場に放り込まれ、医療格差は極大化する。
富裕層は機能の充実した施設で治療を受け、それ以外はネットで個人輸入した薬剤を使ってセルフメディケーション、という流れになりそうだが、実はもうそうなっている分野もある。(例えば、中絶をピルでやっている人たち。)
蛇足
生活保護の医療費無料はどう考えてもおかしい。これじゃ、みんな生保になりたがるに決まっている。
老後は生保になるからいいんだ、と言っている人達は別に悪くはない。
ただ、合理的に判断しているだけだ。
制度がそうなんだから
以下、記事の抜粋。
>今月17日には、新たなM&Aが成立した。
買ったのは、シンガポールに拠点を置く「パークウェイ・ライフ・リート」。
不動産を買うカネを投資家から集め、買い取った物件の家賃収入などを「配当」として投資家に返す。
(売り手の)ウチヤマ・ホールディングス(北九州市)からは門司区の施設の他にも三重県の鳥羽市など4つのホームを買った。
パークウェイは、リートでは日本国内で最大の介護施設のオーナーになっている。
(朝日新聞 9月29日朝刊)
このファンドは日本では今は介護施設だけをターゲットにしているが、本拠地のシンガポールでは病院も投資対象にしている。
パークウェイ・ライフ・リート(以下、PLR)のホームページにはour growth strategyとして、厳選した投資、先見性のある資産運営、細心に行き届いた財務管理を謳っている。
当然のことながら、介護施設や病院の社会的役割などに関する言及はない。
この会社の唯一のゴールは投資家を満足させる投資・資産管理であり、地域社会の健康管理や患者周辺の満足度などではない。
PLRのような投資ファンドは東南アジアでは日本の大学病院を4つ5つ集めたような巨大な病院に投資しているが、こういうところでは(というか普通のクリニックでも)、自費で払える富裕者層か巨大企業に勤めていて何らかの民間保険に加入している人しか相手にされない。
崎谷さんという脳外科医がインドネシアの病院やクリニックの同業者に「一般のインドネシア人が心筋梗塞や脳卒中で救急搬送されてきたら、どうするのか」と尋ねたところ、「検査もせずにそのまま放置だね」という回答であったらしい。
(「新・医療ビジネスの闇」学研パブリッシングより)
日本は国民皆保険だから大丈夫だ、諸外国とは制度が違う、よく言われてきたが、事情は随分と怪しくなっている。
保険料の自己負担分を払えない人達は増大(=入院・入所の未払い分は積みあがっている)しているし、保険のカバーする範囲は狭くなってきている(介護保険の要件厳格化など)。
その上、そもそも保険料が払えなくて保険をもっていない人たちも着実に増えている。
今後も高齢化は進むし、自己負担分は増えていくので、介護費や医療費を払うのがしんどくなる人たちは確実に増えていくだろう。
2010年のOECDヘルス・データによれば、日本の医療費の対GDP比は加盟31か国中、第22位。
人口1000人当たりの医師数はドイツの6割、アメリカの7割に過ぎない。
この「貧困な」医療資源をファンドが運営する施設や病院に吸い取られ、利益を「配当」に回されるならば、行き先は見えている。
保険制度が破たんしているアメリカの自己破産者の理由の第一位は医療費未払いで、その割合は2001年の46%から07年の62%まで6年で約50%増大しており、その多くは中流の持家所有者である。
PLRのような投資ファンドの顧客対象(投資家、利用者とも)は富裕者層であって、中流以下ではない。
「村上ファンド」の村上彰氏が手がけた施設、東京・白金の「ザ・レジデンス白金スイート」が転売した価格は1区画8000万から1億数千万(1部屋7000万~1億3千万超)に上る。
医療を成長産業と位置づけ、外資導入・競争力強化などを指向する向きは、医師会など職業団体を「抵抗勢力」とラべリングして、世間にアピールするが、実情はそれほどナイーブではない。(そう簡単に上手くはいかない。)
医師会など職業団体には融通の利かない面はあるが、それなりに日本の医療を守ってきた機能は有している。
かつて、村上彰氏は「お金儲けは悪いことですか?」とキレていたが、答えは出ている。
金融業界ではお金儲けは100%いいことなんでしょうけど、医療業界では金儲けの優先順位は一番高いわけではない。
政府のやることは、外資の導入などではなく、医療資源をせめて諸外国並みにまで厚くして、国民皆保険制度を建て直すことだ。
あるいは、放棄するなら放棄するで、堂々と宣言して、それに見合った設計を組み立てることだ。
このまま、なし崩し的に制度崩壊に向かうなら、業界自体が市場に放り込まれ、医療格差は極大化する。
富裕層は機能の充実した施設で治療を受け、それ以外はネットで個人輸入した薬剤を使ってセルフメディケーション、という流れになりそうだが、実はもうそうなっている分野もある。(例えば、中絶をピルでやっている人たち。)
蛇足
生活保護の医療費無料はどう考えてもおかしい。これじゃ、みんな生保になりたがるに決まっている。
老後は生保になるからいいんだ、と言っている人達は別に悪くはない。
ただ、合理的に判断しているだけだ。
制度がそうなんだから
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