国境超えた献身医療 韓国人男性がネットに体験記 [宮崎県]
旅先の宮崎市で肺炎を発病した韓国ソウル市の鄭鎮煥(チョンジンファン)さん(68)の妻金素影(キムソヨン)さん(65)が、入院した宮崎県立宮崎病院(宮崎市)での付き添いの様子やスタッフへの感謝をつづった体験記をインターネットに公開している。異国で看病する不安と、重症の夫を回復させた医師や看護師の働きぶりを描いた文章は「国境を超えた献身的愛の物語」と紹介され「日本の医術に感動した」との声も寄せられているという。
旅行中に体調を崩した鄭さんが同病院に搬送されたのは2012年4月2日。重症肺炎と診断され、連絡を受けて駆け付けた金さんが退院した同18日まで付き添った。完全に回復した鄭さんは今年6月13日、再び宮崎を旅行、病院に立ち寄った。突然の来院に病棟は大騒ぎになり「元気になったよ」「久しぶりです」などの言葉が行き交ったという。
金さんは鄭さんが帰国後に執筆、所属するソウルの「歩こう会」代表が運営するブログ「真夜中の写真便り」に投稿した。
「体中に管がつながれ、マスク(人工呼吸機器)が顔を覆っている」。ソウルから病院に到着したときの衝撃を金さんは、こう表現した。治療などについて「たどたどしい英語と漢字、手振りを交えながら」意思疎通し、こみ入った話は帰国した通訳の携帯電話に連絡して説明を受けた。「漢字や図を使って細かく説明してくれた」専修医の上地貴音(かみちたかね)さん(29)の様子にも触れている。
スタッフの「献身的」な様子も印象的だ。「主治医の姫路大輔先生(42)は休日もわざわざ出てくるなど、昼夜を問わず見守ってくれた」「看護師の優しい笑顔と心遣いのおかげで自分の国より温かい」。最初は不安だった病院にも次第に慣れ「日本人特有の親切ときめ細かさが大きな慰めになった」と記している。
病院の様子について「行き交う人同士があいさつして、家族のように接する。その間、私も日本人になってしまっていた」と表現。退院式は「涙を浮かべる天使たちと抱き合った」と結んだ。
同病院でも珍しいという韓国人の入院患者に姫路さんらは「つらい治療をよく頑張っていた」「言葉が通じず戸惑ったけれど、快くケアを受けてくれた」と振り返る。病院を称賛するブログに「旅先で病に倒れ、嫌な思い出が残りかねない宮崎を再び訪れてくれたことが何よりうれしい」と喜んでいる。
「感謝の気持ちを文章に残したかった」と執筆の動機を語る金さんは「現在のぎくしゃくした韓日関係は残念。こんな良い話が少しでも関係改善に役立ってくれたらうれしい」と話している。
ブログ(http://blog.daum.net/ham60/)6月29日出稿分。
=2013/10/01付 西日本新聞朝刊=