新幹線「のぞみ」車内で窃盗事件が発生。広島県警が捜査のため、乗客３１０人を３０分間も車内に足止めした。

　２６日の東京発広島行き最終「のぞみ１２９号」で、睡眠中の男性会社員（４２）が座席テーブルに置いていたバッグから、現金約４万円入りの財布が盗まれた。その現場を他の乗客が目撃。連絡を受けた車掌が、走行中に警察へ通報した。

　のぞみは定時の午後１１時５４分に広島駅に到着、待機の警官が車内に入った。５分後には会社員・要垣内隆容疑者（４１）を確保。ただ盗まれた財布等を見付けるのと、他の乗客からも被害の訴えがあったため、乗客は車内に閉じ込められるハメに。接続の在来線３本に遅れが出たほか、目的地までの交通手段を失った乗客には、ＪＲ西日本がタクシーなどの代替手段を用意した。

「終電で寝込む乗客から金銭を盗んだり、新幹線のフックに掛かってる背広の中から財布を盗むブランコスリは意外と多い。だからといって殺人でもなく窃盗事件で乗客を足止めさせたというのは珍しい」と驚くのは、神奈川県警元刑事の犯罪ジャーナリスト小川泰平氏。

　ただ県警も闇雲に封鎖に動いたワケではない。容疑者は犯行後、車内で不審な動きをしていた。「犯人のメドがついてなければ、乗客大勢の中からすぐ見付けるのは困難。また終電で次の新幹線が来ないため、乗客にも最小限の迷惑で済むから足止めさせる判断がついたんだろう。被害品を確保し３０分で済んだのは早いくらい」（小川氏）

　遅延による代替手段の交通費約３００人分はＪＲの負担。盗まれた額より相当高くついた。