■地方ならではの音楽への憧れ
ヒロインの母・天野春子(小泉今日子)の思春期は、松田聖子や田原俊彦などアイドル全盛の80年代初頭。ニューミュージックや演歌も健在で、まさに流行歌が文化の中心だった時代だ。テレビやラジオからは音楽が常に流れ、アイドル主演の映画やドラマはことごとく歓迎された。レンタルレコード店の普及も外せない。
そしてテクノやらDCブランドなど東京の最新流行事情を、遠く離れた地方に届けたのも、音楽だったりする。当時の音楽がその曲調に関係なくやたらキラキラ聴こえたのは、地方から見える東京のキラキラ感、もっと言えば東京に対する非常に強い憧れそのものだったに違いない。
そういう意味では、音楽を発信する側の東京の人々よりも地方で受け取る人々の方が、音楽に対する愛着は強くて濃かった時代なのだ。そしてそれは歳を重ねても、薄らぎはしない。こじつけかもしれないが、『あまちゃん』においても、北三陸編では登場人物の誰もが事あるごとに歌を口ずさむのに、東京編のキャラが仕事以外で歌う場面が一切描かれていないのもうなずけよう。
とはいえ地方も東京も日本中が元気だったあの時代を、視聴者みんなが思い出す共通言語としての音楽で、『あまちゃん』はいっぱいなのだ。
(ライター 高倉文紀/市川哲史、日経エンタテインメント! 高宮哲)
[日経エンタテインメント!2013年10月号の記事を基に再構成]
あまちゃん、能年玲奈、小泉今日子、橋本愛、有村架純、宮藤官九郎、松田龍平
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