動作確認テスト (運営)
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第1話
ある日のお昼休み。
生徒会長である角谷さんに校内放送を使って呼び出された。
「なんかさ〜。蝶野教官が代表になってくれって〜」
「え?」
「なんでも、アンコウ、カメさんチームのメンバーは代表合宿に参加してほしいとの通達があってな」
河嶋さんが一枚のきれいに折りたたまれた紙を渡してくれた。
そこには『代表合宿参加要請』と記されていた。
「……ホントだ」
「なんだ、疑ってたのか?」
「い、いえ。そういうわけじゃないです。ただ、驚いて」
見間違えたのかと思い、再度確認してみるが、見間違いではなかった。そこ鼻となく鼓動が早くなっている気がした。
私が代表になれるかもしれないという事実に心が静かに踊り始めていた。
私は教室に戻った後、武部さんたち3人に代表合宿という名の代表選考に招待されたことを簡単に伝えた。
「ええっ!?
私達代表になったの!?」
武部さんが驚いた表情を見せた。
「なったわけではないですよ。なるかもしれないということですよね?」
華さんは落ち着いた様子だった。
「うん。選考に招待されただけみたい」
私はうなづいた。すると、武部さんはがっくりと肩を落として盛大なため息をついた。
「あ〜あ、優勝したから決まったものだとばっかり思ってたよ〜」
「それにしても、すごいですね。お国の代表だなんて」
「ユースじゃないみたいだし、ちょっと緊張する」
「途中から決まったこと前提で話してるぞ」
冷泉さんが眠たそうな顔でそう話した。
「選考に招待されたからといって、そのまま代表になれるわけではないんだぞ。それに、招待されたのは私たちアンコウチームと生徒会のカメさんチームだけだ」
「そうはいってもさ、招待されるだけすごいことだと思うわけで、そしたら、テレビに出てイケメンにっ…」
「またそれか」
「またって何よ。またって〜」
「そんなことで男が会いに来るわけがないだろう」
「なんで言い切るのよ」
「来なかっただろう、優勝したのに」
「うぐっ」
「そう言えば、秋山さんは?」
私は一人欠けていることに今更ながら気づいた。
「朝から見かけませんね。欠席しているのでしょうか?」
華さんが小首を傾げながらそう言った。
「ううん。私見たよ?」
と武部さんが声を上げた。
「ただ、何か急いでるようで声かけられなかったけど」
「どうなされたのでしょう」
「みぽりん、合宿っていつあるの?」
武部さんが話の腰を折った。おかげで、沈みかけていた雰囲気を少し明るくなった気がした。
私は会長からもらった資料を見返して、日時を確認した。
「……あ。……明日……」
「え?」
「……明日です」
『えええええええええええええ!』
武部さんの叫び声が教室中に響き渡った。
角谷さんがついさっき教えてくれたのに、私の責任になってしまった木がして、縮こまった。
……何も用意してないよぉ。
放課後の練習も無事に終わった後、武部さんたちとともに合宿に持っていくものを買い集めた。
みんなと別れて、自宅に戻った。買いすぎてしまったせいで、重かった。部活もあったせいで、疲労感がどっと押し寄せてきた。
ばたっとベットに倒れこみ、ぼーっとした。視界に入ったお気に入りのぬいぐるみをぎゅっと抱き寄せた。
「明日……。やっぱり、お姉ちゃんも呼ばれてるよね。……ううぅ」
ゆっくりと夢の中に落ちていった。
夢から覚めたあと、身支度を済またが、出発する時間まで少しあった。どうしようか考えていたとき、携帯が鳴った。
「あ、武部さん」
携帯に届いた武部さんからのメールを見た。
『ガンバロー』とだけ記されてあった。
そのメールに『みんなで代表になろうね』と打ち込んで送信した。他にもメールが届いていたようで、確認してみると華さんや冷泉さんからも同じ内容のメールが届いていて、簡単に打ち込んで返信した。
「……秋山さんどうしたんだろう」
そんなことを思いながら、私は出掛けた。
初め、代表合宿に向かう貸し切りバスに乗り込むために学校に向かった。
学校に到着すると、みんながそろっていた。
「おはよう。みぽりん」
武部さんが手を振って挨拶してくれた。
「おはよう、武部さん。みんなも」
「おはようございます。みほさん。あとは、秋山さんだけですね」
華さんは心配そうな顔をしてそう言った。
「あ〜あ、秋山は大丈夫だよ〜」
角谷さんが干し芋をほおばりながらそう言った。
「え? どうしてですか?」
「いいから、いいから〜」
角谷さんははぐらかしたので、これ以上追求するのは野暮だと思い諦めた。
「みんな〜。早く乗って〜」
と、小山さんがそう言って、みんなはバスに乗っていった。
「麻子、寝てないで動いてよ〜」
武部さんは自分にもたれかかってきた冷泉さんを揺さぶっていた。
「……眠い……」
「やだもー」
「私、手伝います」
私は武部さんに加勢した。
そしてようやく、冷泉さんをバスに乗せて、席に着いた。バスはゆっくりと合宿場所へと向かっていった。
バスの中では朝早かったせいかみんな寝ていて会話はなかった。
目が覚めたときには集合場所付近で、寝ているみんなを優しく起こした。
「冷泉さん。起きて、つきましたよ」
「……やだ」
「ええっ」
「麻子。早く起きてよ。じゃないと置いてくよ」
武部さんが救いの手をさしのべてくれるも、冷泉さんは起きてはくれなかった。
「んもー。みぽりんは先に行ってて良いよ。私が運ぶから」
「でも……」
「いいからいいから」
「うん」
私は頷いてバスを降り歩き出した。
『戦車道日本代表集会』とある看板を見つけ、その誘導にしたがって会場へと入っていった。
中に入るとかなりの人数の人がいて驚いた。
「案外人が多いですね」
華さんは私の横に歩み寄りそう言った。
「うん。私もびっくりしちゃった」
「あら。西住みほさん」
私を呼ぶ声がして、その方向を見るとダージリンさんがいた。
「ごきげんよう」
「おはようございます」
「やはりあなたも呼ばれたのですね」
「はい」
「優勝したことがよかったのでしょうね、戦車込みで呼ばれたのはあなたたちだけですわよ?」
「え?
どういうことですか?」
「聞かされてはいなかったの?」
「……はい」
ダージリンさんははぁとため息をついた。
「期待されているのにこれでは……。まあ、いいでしょう。あなた達は戦車も含めて招待された、と聞いています。察するに、改造された戦車を間近で見てみたかったのでしょうね。私達と戦ったときと大分性能も見た目も変わってるし」
「あら。でも、戦車は学校に置いてきてしまったのではないですか?」
華さんの言葉に私も便乗して、頷いた。
「出発するときになにもしてこなかったし」
「その心配はいらないわ? ほら」
ダージリンさんは目線を動かし、私たちもその方に動かした。
「西住殿〜!」
私たちに気づいた彼女はこちらに走り寄ってきた。私達の前についたとたん、ビシッと敬礼をしてうれしそうな表情を見せた。
「おはようございます!
西住殿に五十鈴殿!」
「おはよう。秋山さん」
「おはようございます。秋山さん。でも、いつこちらに?」
「少し前に着きました。いろいろと作業をしていたため、皆さんとは別行動になってしまいましたが、こうして会えて嬉しいです!」
嬉しそうに話してくる秋山さんを見ているとなんだか、笑みがこぼれた。
しばらくして、ダージリンさんは「ごきげんよう」と言って立ち去り、そして、無理矢理冷泉さんを引っ張りながら歩く武部さんたちが見え、合流した。
「んもー、疲れた〜」
「……眠い……」
「武部さん、お水持ってこようか?」
「ありがとう〜。みぽりん〜」
近場の長テーブルにまとめて置いてあった水が入ったコップの中から一つ手に取り、軽く肩で息をしている武部さんに差し出した。武部さんはそれを受け取ると一気に飲み干して空になったコップを近くの丸テーブルに置いた。
「あ!
ゆかりん! いつ来たの!? 心配してたんだよ!?」
秋山さんの存在に気付いた武部さんは先ほどまでの様子を反転させ秋山さんを問いつめるような形をとった。
「会長から代表合宿には戦車を持って行く必要があると聞いたので、自動車部のみなさんと協力して準備していて、それが案外時間がかかってしまったという訳なんです」
ダージリンさんは心配ないと言い切っていたのは秋山さんが事前に準備をしていてくれたからなんだ、と納得した。
「ありがとう。秋山さん。準備してくれて」
「そんなっ!
別に良いですよ! ただ、自分でできることはやろうって思って実行しただけですし!」
秋山さんは両手と顔を左右に必死に振りながら、あわてた様子でそう言った。
「でも、お礼はしないと。ありがとう」
「ううっ〜〜〜」
秋山さんは真っ赤な顔をしながら自分の髪をかきむしりだした。
秋山さんと合流した私たちは、『大洗女子』と書かれてある看板が置いてある丸テーブルにたどり着き、角谷さんたち3人と合流した。
「遅いぞ。西住達」
「す、すみません」
河嶋さんに一喝されて縮こまった。
「まったく。たるんでる!」
「まあまあ、桃ちゃん落ち着いて」
「桃ちゃん言うな!」
小山さんに突っ込みを入れらた河嶋さんはすぐに言い返した。
「こんなに多いけどさぁ、何人くらい代表になれるんだっけ?」
武部さんは小首をかしげてそう聞いてきた。
「えっと、試合に出れるのが10機だから、私達みたいに5人だとしたら50人だね」
私は角谷さんからもらった資料を軽く眺めた後、そう言った。
「でも、この様子じゃあ、倍近くいるよぉ〜」
「狭き門。ですね」
武部さんの言葉に華さんが続いた。
「今年はガキが多いな」
「それほどやれるってことじゃない?」
そんな会話が後方からふと聞こえた。
「あたしたちがどんなに苦労してここにきているのか知らないんだろうな」
「あの子たちだって努力してるってことだよ。みんな努力してここにいる。まあ、咲村さんは違うだろうけど」
「あいつは好きにはなれん」
「咲村さんについていける人何人ぐらいいるんだろうね〜。あの人の班になるとすっごく疲れるからねぇ。っていうさ、何で、トマトばっかりとるの?
ほかにもいろんなのあるのに」
「いいだろ別に」
「お。照れた」
「あの人たちってさ、やっぱり去年もここに呼ばれてたのかな?」
武部さんは後方で話している2人を見ながらそう言った。
「そうだと思う」
「やはり、風格がありますね。威圧感がすごいです」
華さんは目を輝かせながらそう言った。
「桐谷さんと北城さんですね。3年前から代表として活躍しています。桐谷さんは操縦手で長い黒髪と口が少し悪くなる時があって、北城さんは通信手で金髪と優しい目が特徴です!」
秋山さんは興奮気味で説明してくれた。
「でも、咲村さんという方は第1班車長でエースとして活躍している方としか情報がなくて……。面目ないです……」
「そ、そんなことないよ」
私は落ち込んでいる秋山さんをなだめようを必死に励ましたりした。その時、後ろから声がした。
「あんたたちが大洗のか」
「きゃー!
この子たちかわいい! お人形みたい!」
桐谷さんと北城さんがそう言って歩み寄ってきた。北城さんはなぜか興奮してて、桐谷さんは睨むような目でこちらを見ていた。
「優勝しただけで、ここまでされるとはね。正直びっくりだわ。でもね、このまま代表になれると思わないことね」
「もぉ〜。そんな怖い声で話さない。私、北城、こっちは桐谷。よろしくね」