ジャングルは生物の多様性の宝庫であるが、ブラジルが特徴的なのは「人間の多様性」もまた進んでいるというところである。
ブラジルは世界で最大の「人種混交国家」だと言われている。それは真実だろう。多様性が、さらなる多様性を生み出す。
その多様性は文化的にも大きな魅力であり、それがゆえに多くの人々をも惹きつける。
あまり知られていないが、ブラジルのこのような多様性に惹かれて、欧米からの移民もどんどん増えている。ドイツ人からイタリア人、フランス人、ユダヤ人までもがブラジルで暮らして、ビジネスをしている。
もちろん、日系ブラジル人もしっかりとブラジルに根付いていて、そんなとこもブラジルの多様性を象徴している。日本と正反対の気質であると考えてもいい。
ブラジルの特殊な事情
人間の違いでもっともよく分かるのは「肌の色」や「髪の色」だ。
学術的・民族的な分類はともかくとして、実際のブラジル人を見ると分かるのは、完全なる黒人から完全なる白人を両極として、その中間のグラデーションをすべて埋めることができる人間が存在していることである。
黒人、白人、黄色人種のすべてが同じ国の重要な民族として居住していて、さらにそれらのカラード(混血)までが勢揃いしている。
アジアではインド圏がそのような混交を見せているが、インド圏の女性が非常に美しいのと同様に、ブラジル人の女性もまた美しい。
そのどちらの圏内も、いつもミス・ユニバース等の美人コンテストの上位を独占することからも、世界中の誰もがその美を認めると考えてもいい。
しかし、その美しさの裏側には、血と殺戮の歴史が横たわっているのは誰もが知っている。
ブラジルが人種混合したのは、征服者の差別や圧政や暴力の結果として生まれてきたものであり、それはヨーロッパの影響力の拡大と共に、インディオの滅亡の歴史である。
ブラジルのみならず、ラテンアメリカでの人種混交が始まったのは、1500年代にスペイン・ポルトガルの植民地主義者が上陸して先住民を徹底的に駆逐していった歴史から始まっている。
ヨーロッパからやってきた男たちが持っていた鉄器は、先住民たちの青銅器を破壊して次々と打ち破って彼らを殺戮していく。
それと同時に彼らが持ち込んだ、チフス・はしかなどの疫病も、先住民たちに大きな被害をもたらしていった。
唯一、メキシコとアンデスの先住民が大きな数で生き残ったのは、マヤ、アステカ、インカ文明が防御壁となった地域のみである。
これらの政治力(文明)を持たなかった北米大陸の先住民は、皆殺しだった。
全員ブラジル人だが、人種はそれぞれだ。ブラジルが特徴的なのは「人間の多様性」もまた進んでいるというところである。
生き残ったのは0.6%の人間たちだけだった
白人たちに慈悲を与えたインディオもいたが、結果的には彼らは裏切られ、追い立てられ、虐殺されて歴史から消え去った。
今、アメリカインディアンは白人から与えられた自治区という場所で、自暴自棄に暮らしている。
歴史を見れば、「暴力を高度に身につけた民族」が生き残る。いや、そういう民族しか生き残らない。
つまり、生き残るためには、対外的に高度な暴力を行使できる民族にならなければならないのだが、それに失敗した民族はある時、怒涛のような侵略を受けて一気に破滅していく。
鉄器を持って乗り込んできたヨーロッパの男たちに、アングロアメリカ・ラテンアメリカの先住民たちはまったく相手にならなかった。
その結果、毎年百万人単位で先住民が殺戮されていき、ほぼ絶滅寸前になった。文明も、きれいさっぱりに消え去った。
たとえば、アステカ帝国では2520万人いたインディオの人口が殺戮の結果として、17万人に減ったと言われている。率にすれば、0.6%しか生き残らなかったということだ。
他人事で考えないで欲しい。日本の人口に当てはめると、現在の1億2000万人が720万人になるということである。
720万人というと愛知県の人口と同じくらいだから、日本がアステカ帝国の運命になったら、愛知県以外の日本人が全員殺されるのと同じという意味になる。
そして、アステカでは残った先住民はほとんどが「強制労働」と「性奴隷」の運命に陥ったから、生き残って運が良かったのかどうかは分からない。とにかく、ラテンアメリカで起きたのは、そういう事態だった。
南米の先住民は大虐殺に次ぐ大虐殺に遭った。
「メスティーソ」「ムラート」「サンボ」
北米ではピューリタンたちが家族ぐるみで移住してきたので血の混合はなかったが、ラテンアメリカのスペイン人たちは男どもだけしかやって来なかったので女は「現地調達」である。
そして、ラテンアメリカの特徴は、アフリカから黒人を連れてきたことで、混血が人類史上でも類を見ない大規模なものになったということだ。
あまりにもインディオを殺戮しすぎて強制労働の人員が足りなくなったので、今度はアフリカ人を連れてきたのだから自分勝手もいいところだが、それが植民地の事情である。
スペイン・ポルトガルの男たちは、皆殺しにしたインディオから性処理用の女たちはちゃっかりと自分用に取っておき、かつアフリカから連れてきた奴隷からもやはり女を適当に選んではセックスの相手に使った。
やがて現地では、先住民の女と黒人の女が白人の子供を産み始めるようになる。混血の子供は以下のように呼び分けされた。
白人男+インディオ女=メスティーソ
白人男+黒人女=ムラート
これとは別に、黒人の男とインディオの女との混血も生まれるようになった。当時は禁止された組み合わせだったのだが、そんなのはお構いなしだったようだ。
黒人男+インディオ女=サンボ
この「メスティーソ」「ムラート」「サンボ」という3つの混血児がさらに別の混血児や人種と結婚すると、さらに複雑な組み合わせになる。
民族が混合したメスティーソ、ムラートを表現した絵画
民族混交の過程に暴力が交じると、女性は美しくなる
やがて3代目、4代目になると、自分の祖先はすべての人種の血が混じっているという人間が膨大に増え始め、やがてはそれがブラジル人のアイデンティティになっていく。
ポルトガル人もスペイン人も最初はそれぞれの組み合わせに名前をつけていたようだが、そのうちに数が多くなっていくと誰も覚えられなくなって忘れ去られていった。
インドで、白人系アーリア人がインダス文明の担い手だったドラヴィダ族を征服していく過程で起きた民族ごった煮のマサラと、まさに同じ状況がラテンアメリカで起きていたということだ。
征服されて、血が混じり、その結果、すべての民族の素晴らしい部分を全部身につけたような薔薇のように美しい女性が生まれて来るのである。
この民族混交の過程に暴力が交じると、さらに女性は美しくなる。それはなぜだか分かるだろうか?
暴力の頂点に立った男たちは「美しい女たち」を選別するからである。美しい女性が産む子供は、やはり遺伝子に美しさを兼ね備えている。
ラテンアメリカのカラード(混血)の女性が美しいのは、男たちが最初に美しい女性を選別したからである。それが後の確率に及ぼす影響は大きいはずだ。
ブラジル女性は、みんな美しいので有名だ。民族混交の過程に暴力が交じると、女性は美しくなる理由は、覚えておいた方がいい。
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