社説:汚染水問題質疑 首相こそ国会で説明を

毎日新聞 2013年09月30日 02時30分

 遅きに失した始動だ。福島第1原発の汚染水事故に伴う衆院経済産業委員会の国会閉会中の審査が行われ、政府や東京電力などによる対策への具体的検証が始まった。

 さきの参院選以来論戦を放置してきた国会だが、この期に及んでも臨時国会の召集時期で駆け引きを演じているのだからあきれる。安倍晋三首相が国会で説明する場を一日も早く設けなければならない。

 27日の質疑には東電の広瀬直己社長が出席、首相補佐官として汚染水対策を担当していた馬淵澄夫議員(民主)らが質問に立った。

 馬淵氏は、粘土遮水壁の配置計画を2011年6月に発表予定だったが、東電から「市場から債務超過と評価されかねない」との懸念を示され、見送った経緯を説明。広瀬社長も東電が遮水壁の基本仕様をまとめていたことを公式に認めた。

 馬淵氏は同氏が補佐官を外れたあとに遮水壁の建設が棚上げになった経緯を含め、党として検証作業を進めていることを説明した。単純に政府を追及するだけでなく、民主党前政権の責任も問われる課題だ。

 閉会中審査は30日も行う。だが、汚染水問題の深刻さが表面化して以降、首相が国会で国民に説明する場面はいまだに設けられていない。

 東京五輪招致演説で首相が「状況はコントロールされている」と発言したことをめぐり、東電幹部は「コントロールできていないと考える」と述べた。広瀬氏は国会で首相と同じ考えだと強調したが、現状認識や長期的取り組みの態勢をどう構築するか、首相は説明する責任がある。

 首相の「汚染水の影響は原発の港湾内の0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」という発言も波紋を広げている。政府は海洋モニタリングで放射性セシウム上昇がみられないなどと説明しているが「影響は完全にブロック」とは、そもそも何を意味するのか。

 野党側は参院で92人の議員の署名を集め、国会の早期召集を要求した。憲法は4分の1以上の求めがあれば召集するよう定めるが時期の規定はなく、与党に召集を来月15日から前倒しする気配はない。

 汚染水浄化装置「ALPS(アルプス)」が不具合で運転停止したように、既存の汚染水対策がうまくいく保証はない。これまで想定していない新たな事故が起こる可能性もある。政府の汚染水処理対策委員会はそうした潜在的な事故リスクを洗い出した上で追加の対策案を新たにまとめた。当然とも言えるが、それぞれの対策の実現性すらわからないのが実情だ。

 政府が対策の前面に立つ以上、首相が明確な対処方針を語るべきだ。国会こそ、その場にふさわしい。

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