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NHK人気朝ドラに散りばめられた業界の禁忌【1】

芸能界のドンも驚くネタの数々…国民的ドラマ『あまちゃん』が踏み込んだ芸能界タブー

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2013.09.19

 連日20%を越える、国民的ブームとなったNHK朝の連ドラ『あまちゃん』。だが、一方では、芸能界を舞台としたストーリーの中に、数々のタブー破りがぶちかまされているとして、業界では冷や汗混じりで鑑賞されているという――。

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(絵/金子ナンペイ)

『あまちゃん』

13年/NHK/脚本:宮藤官九郎 出演:能年玲奈、小泉今日子、宮本信子、杉本哲太、松田龍平ほか
東京から、母の実家のある北三陸にやってきた高校生、天野アキ。海女の祖母、天野夏の海にもぐる姿に憧れ、自らも海女クラブの一員となる。しかし、アイドルに憧れる高校生、足立ユイとともに、ご当地アイドルとして取り上げられたことから地元で大人気に。そこを東京から来たスカウトマンに選ばれ、アイドルグループの一員として上京。挫折を経験しながらも、独立し、アイドルとして人気が出始めた矢先、東日本大震災が起こり……。80年代と現在の日本のアイドルシーンを巧みに取り入れた展開が受け、国民的人気作となった。

 本誌9月号でも触れた通り、NHK朝の連ドラ『あまちゃん』には、芸能界のドンこと周防郁雄社長が率いる大手芸能プロ・バーニングプロダクションの思惑が大きく反映されている。主演の能年玲奈はバーニング傘下のレプロエンタテインメント所属、主要キャラを演じる小泉今日子や小池徹平もバーニング所属と、配役に同社の意向が大きく影響しているのは、芸能通なら周知の事実だろう。だが、宮藤官九郎の脚本や出演陣の熱演により、視聴率は好調、さらに主演の能年に関しては異例ともいえる待遇だという。

「マスコミとの太いパイプを持つことで有名な周防社長は、毎年夏には子飼いにしている芸能記者にスイカを贈るのが慣習。過去には『トイレの神様』でブレイクした植村花菜など、毎年その箱には社長イチオシのタレントのステッカーが貼られているのですが、今年は能年ステッカーでしたよ(笑)」(スポーツ紙芸能デスク)

 2010年、NHK紅白歌合戦に初出場した植村は特別バージョンで同曲を歌ったことでも話題となったが、そこにドンのゴリ押しがあったというのはつとに有名な話だ。このように、音楽業界にも顔が利く周防社長が、『あまちゃん』利権で白羽の矢を立てたレーベルはビクターエンタテインメントだという。

「SMAP、サザンオールスターズという二枚看板を抱えるビクターは、彼ら以外の歌手はまったく振るわない(苦笑)。そこに今回、『あまちゃん』の作中で使われている楽曲をリリースすべく、制作サイドが周防社長にお伺いを立てたところ、小泉や同じくバーニング所属の長山洋子らが籍を置くビクターを指名。そのおかげで、オリジナルサウンドトラック『あまちゃん 歌のアルバム』をリリース、3日間で3万枚と好調で、サントラとしては異例のヒットとなっている」(芸能プロ幹部)

 そのビクターにいいとこ取りをされてしまったのが、ベイビーレイズなるアイドルユニットだ。『あまちゃん』に登場する「アメ横女学園芸能コース」の曲『暦の上ではディセンバー』の元歌を歌う彼女らは、能年同様レプロに所属。

「彼女らは所属レコード会社がポニーキャニオンのため、大人の事情ゆえ(苦笑)、『暦の~』の発売日は、『歌のアルバム』より後の9月11日になったよう。業界内では、ファンと二人三脚で地道に活動してきたベイビーレイズを応援する向きも少なくない」(同)

 このように『あまちゃん』人気の裏には芸能界最大のタブーともされるドンの思惑が見て取れるが、それは作中の演出にも散見される。いささか前フリが長くなったが、ここではストーリーをおさらいしながら、その演出を見ていこう。

AKBとNHKの間で交わされた密約とは

 08年夏、地味で暗い少女だった東京育ちの天野アキ(能年玲奈)が、母の春子(小泉今日子)に連れられ、初めて母の故郷の岩手県北三陸にやってきたところから『あまちゃん』は始まる。このドラマにおいて、常にずけずけと物を言う、どこかやさぐれた母・春子の存在は、作品の中で際立っている。

「この役、アイドル時代から有名だったヘビースモーカーでヤンキー気質という小泉の素に近いもの。そもそもNHKの朝ドラは、まず最初に主役ではなくサブのメインキャラからキャスティングが決まるのが通例で、最初に小泉のキャスティングが決まった。春子=小泉は、脚本の宮藤官九郎も真っ先に念頭に置いて書いた配役だったかもしれない。ただ、同枠のギャラは非常に安く、主役級でも1話当たり数千円という破格な価格。しかも数年前までは放映中、CMに出ることも禁じられていた。さすがに今はそのシバリもなくなったけど」(前出・芸能デスク)

 朝の連ドラという看板ゆえ、出演を希望する者は後を絶たないが、「以降に予定されている同枠のサブキャラには、篠原涼子の名前が挙がっていた。だが、ギャラが安かったためか、ほかの仕事とバッティングしたためか、オファーを蹴ったそう」(同)という話もある。いずれにせよ、もうひとりの80年代アイドル・薬師丸ひろ子を春子と因縁のある大女優・鈴鹿ひろ美にキャスティングしたことが、このドラマの絶妙な仕掛けだろう。

 さて当初、海女の祖母・夏(宮本信子)に憧れて、海女の仲間入りをしたアキだが、やがてミス北鉄の足立ユイ(橋本愛)と共に、人気ご当地アイドルになってしまう。ユニット「潮騒のメモリーズ」を結成し、お座敷列車で歌う2人に全国のアイドルオタクが熱狂。その噂を聞きつけて、東京から身分を隠してやってきたのが、芸能プロのマネージャー水口琢磨(松田龍平)だ。水口は、北三陸の琥珀掘削職人に弟子入りするという格好で2人に近づき、スカウトの機会をうかがうのだが、実際にこのようにスカウトマンが地方潜入することがあるのだろうか? ベテラン芸能記者に聞こう。

「昔はネットなどがありませんから、スカウトマンが日本全国を歩いて原石の女の子を探すこともありました。先日亡くなった藤圭子も、そのようにして発掘されたはずです」と言う。だが、最近は勝手が違うようだ。

「今は経費削減の時代ですから、5大都市ならともかく、地方潜入なんて、そんな経費のかかることはまずできないでしょう。水口の場合、地元の人を騙しただけではなく、海女の熊谷美寿々(美保純)と結婚の約束までしてしまうのですから、トラブルの火種を自らまいているようなものですよ(笑)」(別の芸能記者)

 家庭の事情で東京に行けなくなったユイを残し、ひとり上京するアキ。彼女が所属させられた「GMT47」は、47都道府県のご当地アイドルを集めたグループ、という設定だが、実際には6人しか集まっていない。アイドルグループ「アメ横女学園芸能コース」(アメ女) に欠員が出た時のみ舞台に上がれるシャドウとして、ひたすら舞台の地下の「奈落」で練習をする日々だ。

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秋元康役?荒巻太一「歌声なんか変えりゃ~いいんだよ!」

 この「アメ女」や「GMT」が、AKB48グループをもとにしているのは誰の目にも明らか。「国民投票」なる、選抜総選挙を彷彿とさせる人気投票も登場するし、彼女たちを束ねるプロデューサー、荒巻太一(古田新太)のキャラも、秋元康そのものだ。

「ここまで秋元康とAKBを茶化しながらも、物語として完成させているのはクドカンの手腕の賜物でしょう。ただ、今回これが可能となったのは、クドカンが秋元と仕事上の絡みがないことに加えて、『AKBに似たアイドルグループを扱う』とお伺いを立てに行った制作陣に対し、『GMTなどをビジネスにしなければ』ということで、秋元サイドがOKを出したためとされています。しかし、実際には、アメ女やGMTの曲や、それらを収録したアルバムもリリースされてしまった。一部のメディアで著作権に問題があるのでは?と報じられました。基本的には好意的にとらえていたAKBサイドが苦々しく思ったのか、あるいは話題作りのためなのか、メディアにネタを持ちかけ、書かせたともっぱらです」(同)

 国民投票での下位は解雇、というアメ女グループのルールは、実際のAKBの選抜総選挙よりもさらに厳しいようにも見える。さりとて「当のAKBでも、研究生などを対象に、不合格になれば強制卒業となるセレクション審査なるものが行われている」(同)とされており、『あまちゃん』には、このシステムの残酷さに対する批判とも見ることができる。

小泉は薬師丸の替え玉衝撃の展開には元ネタが

 物語は進み、アキはアイドルの下積みをしながら、大女優、鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の付き人をすることになる。この鈴鹿ひろ美に対するアキの態度が、平気でタメ口、また毎晩のように寿司屋で晩酌のお供と、かなりの好待遇なのだが、「さすがにこれは、非現実的(笑)」(同)と多くの業界通には不評のようだ。実際の付き人は、もっと使用人のような扱いだという。

 ドラマでは、このあたりでアイドル志望だった春子の若き日々が描かれ、実は音痴な鈴鹿ひろ美の歌声の替え玉をしていたことが明らかになる。前出のベテラン芸能記者に、その信ぴょう性を聞こう。

「歌の吹き替えは、芸能界では昔からない話ではなかった。80年代の芸能界でデビューした子たちは、歌唱力ではなく、アイドルにふさわしい雰囲気かどうか、だけで選ばれていましたからね。そんな中でも小泉の歌唱力に疑問符を付ける関係者は多く、デビューのきっかけとなったオーディション番組『スター誕生!』(日テレ)で、彼女に目をつけたバーニングの関係者は『小泉は顎のラインがキレイだから採用した』と口にしていました。まあ、当時のアイドルは皆歌は下手だったけど、中森明菜だけは本当に歌唱力がありました」(前出・ベテラン芸能記者)

 一方、別のレコード会社関係者は、「80年代、生歌が下手な歌手は多くて、第三者の歌声をかぶせるなど『修正』することはよくありましたが、そこから話に尾ヒレがついて 替え玉という噂が出たことはあったかもしれません。ただ、生放送の歌番組でそんなことをやったら、業界中で評判になってしまいますからね。昔は今よりもテレビ局側の力が強かったですから、そこまで歌手に気を使う必要もなかったハズです」と言う。

 とはいえこのエピソードがなければ、小泉今日子が現実に、天野春子名義で「潮騒のメモリー」をリリースすることも、久々に紅白出場が取り沙汰されることもなかったわけだが、前出の芸能プロ幹部によると、小泉と薬師丸にはある噂があったという。

「80年代、アイドルとして大成功を収めていた小泉と薬師丸ですが、タバコのヤニで歯が汚れていた小泉の代わりに、ある映画に薬師丸がキャスティングされたこともあったそう。替え玉ではないが、こうしたエピソードも業界内では話題になっていました」(同)

 作中、ついに荒巻太一は、当初興味のなかったGMTをデビューさせることにし、アキもそのメンバーとして「地元へ帰ろう」という曲を歌うが、春子はその曲でアキの歌声をいじられたことに激怒。事務所を辞めさせ、アキと共に家族で芸能事務所「スリーJプロダクション」を立ち上げる。

「現実の芸能界では、親が娘の仕事に介入するのはご法度。かつて鈴木亜美はギャラをめぐり、親権者である父親が仕事に口を挟むようになった結果、所属事務所と訴訟となり芸能界から干されてしまった。ステージママとしては、美空ひばりや宮沢りえの母親といった成功例もありますが、アキのようにまだブレイクしてもいないタレントの親が自ら事務所を立ち上げて、成功した例というのはちょっと記憶にないですね」(同)というから、このあたりは完全にフィクションなのだろう。

 荒巻から「つぶしてやる」とまで言われたアキだが、鈴鹿ひろ美の往年のヒット映画『潮騒のメモリー』のリメイクのヒロインにオーディションで選ばれる。だが、このオーディション、最初はGMTのメンバーのひとり、小野寺薫子(優希美青)が主演に選ばれることで話が決まりかけていたが、鈴鹿の提案でオーディションで選ばれることになる。

「今回の朝ドラの主演の能年玲奈や、前回の『純と愛』の夏菜(バーニング系列のトヨタオフィス所属)も、オーディションの形を取りながら、実は最初から主演が決まっている出来レースだったということは、巷間囁かれてきた公然の秘密」(同)という話もある通り、その朝ドラ内で、オーディションは最初から結果がほとんど決まっているという演出は、自虐とも取れる……とは言いすぎだろうか?

 そして最後に、『あまちゃん』でアキが映画『潮騒のメモリー』に出演した際、恋人の種市先輩(福士蒼汰)が、ラブシーンがあることを知って憤慨するというエピソードがあった。

「こういった問題は芸能界にはつきもので、たとえば森進一も、かつて夫婦の間柄だった大原麗子のラブシーンを止めさせようと、制作サイドに直談判したこともあったらしい。AKBのスキャンダルを見ても、熱愛はアイドル最大のタブーともいえるだろう」(同)

 最終回へ近づくにつれ、多くの話題を振りまく『あまちゃん』だが、本稿含め、あらゆる見方が楽しめるというのも、また“名作”だという証左なのかもしれない――。

(取材・文/青場はるお)



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