クローズアップ2013:「足元」堺市長選で敗北 沈む橋下維新
毎日新聞 2013年09月30日 東京朝刊
橋下氏の求心力は「選挙の強さ」によるところが大きい。今回の敗北で、2015年の統一地方選に向け、維新の若手からは「『維新では戦えない』との不安も広がり、離党者が出てくる」という声も出ている。橋下氏や松井氏が中枢を占めてきた党運営に対し、平沼赳夫代表代行ら旧太陽の党出身議員の影響力が増すのは必至で、平沼氏周辺は「党運営の実権を平沼氏に預けるしかない」と語る。
次期衆院選に向けた野党再編の行方も不透明さを増す。橋下氏は7月の参院選から民主党やみんなの党の一部勢力との新党構想を掲げてきたが、主導権を失いかねない。
◇大阪都構想に暗雲
堺市長選での維新の敗北は、都構想への堺参画の消滅にとどまらず、「本丸」の大阪府・市の再編にも暗い影を落とす。
「今回は堺市長選挙ではない。都構想の試金石だ」。18日に大阪府議会であった維新府議団の総会で、日本維新の会の今井豊副代表(大阪府議)は、約50人の府議に対して支持者回りに全力を挙げるよう指示した。「もし負ければ(来年秋に予定する)住民投票の前段の議決で、公明党もそっぽを向くだろう」。悲壮感が漂った。
府市は今年2月から、都移行後の新たな特別区の区割りや財政調整、区と都の事務分担などを協議している。制度設計をまとめて来年夏に府・市議会の議決を経た上で、大阪市の住民投票で過半数を得る必要があり、ハードルは高い。橋下氏は選挙前、敗北した場合の都構想への影響を「行政的にはない」としつつ、「政治的に住民投票や自民党との折衝で影響してくる」と懸念を示していた。
大阪市が解体される都構想について、市民は元々複雑な思いを抱く。昨年6月に毎日新聞とMBS(毎日放送)が実施した世論調査では支持が29%で3割に満たなかった。今回示された堺市民の「ノー」が、さらに足を引っ張る恐れがある。
住民投票の前段の議決も容易ではない。府議会は維新が単独過半数を占めるものの、大阪市議会は第2党の公明党の協力がないと過半数に届かない。
維新は昨年の衆院選で、公明候補のいる関西6小選挙区での擁立を見送ることで大阪で協力関係を築いてきた。選挙の強さが維新のカードだった。しかし、退潮傾向をみて地元の公明関係者は「橋下氏は民意を大事にしてきたはずだ。我々も民意を受け止めて動かないといけない」とクギを刺す。
堺市長選投開票を3日後に控えた26日、公明は大阪市議会で不祥事を巡り維新の議長の不信任決議案を自民、民主とともに可決させた。都構想に「慎重」姿勢を取り協議には応じる公明だが、維新との距離をさらに広げ始める可能性は高い。