ウォール街のCEO報酬20%増-KKRクラビス氏が首位
6月5日(ブルームバーグ):プライベートエクイティ(PE 、未公開株)投資業界の重鎮である米投資会社KKRのヘンリー・クラビス共同最高経営責任者(CEO)は2010年10月、一世一代の意思表示をした。母校の米コロンビア大学経営大学院に1億ドル(約78億円)を寄付すると約束したのだ。マンハッタン北部にあるキャンパスの拡張を支援するためだった。このような寄付が可能だった背景には、この3カ月前のKKR のニューヨーク証券取引所への上場があった。
上場によりクラビス氏の個人資産は膨らんだが、同時に米国の企業情報開示の厳しさに直面することとなった。その結果、同氏に対する11年の報酬として給与などを含め3000万ドルの支払いをKKRの取締役会が承認したことが白日の下にさらされた。ブルームバーグ・マーケッツ誌7月号が報じている。
これにより、クラビス氏(68)は、ブルームバーグ・マーケッツ誌が集計した時価総額に基づく米主要金融機関のCEO報酬上位50位番付で首位に躍り出た。2位はクラビス氏のいとこで共同CEOのジョージ・ロバーツ氏(68)で、報酬額は2990万ドル。両氏は1976年、ジェローム・コールバーグ氏と共にKKRを創業した。3人は40年以上前にベアー・スターンズで一緒に勤務していた。
KKRのデータによると、同社は創業以降、200件以上、総額4650億ドルを超える買収を手掛けている。クラビス、ロバーツ両氏によるKKRの株式保有総額は4月半ば時点で12億2000万ドルに上る。
株価実績大半の大手行や証券会社の収入や利益、株価が下落する中で、米主要金融機関50社のCEO報酬の合計は11年に平均で20.4%増加した。前年から現職にあるCEOの10年の報酬は26%増。
11年のCEO奨励報酬と過去3年間の株式リターン(投資収益率)を比較すると、報酬額1500万ドルとされたシティグループ のビクラム・パンディット氏は、株主に提供した価値が最も低いCEOとなっている。この報酬額については株主の承認が得られず再検討されている。最も高い価値を提供したのは、保険・投資会社バークシャー・ハサウェイ を率いるウォーレン・バフェット氏だった。
ヒュー・ジョンソン・アドバイザーズで金融株を含め20億ドル相当の運用に携わるヒュー・ジョンソン会長は、金融機関の取締役会について、幹部報酬を決定する際に株価実績をより真剣に考慮する必要があると指摘。「株価実績がひどいにもかかわらず過度の報酬が支払われている」と述べた。
11会計年度は50社のうち33社の株式リターン がマイナスとなり、相次ぐ危機でM&A(合併・買収)市場が凍結状態のため特に下期(7-12月)に打撃を受けた。
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Laura Marcinek lmarcinek3@bloomberg.net;ニューヨーク Nikolaj Gammeltoft ngammeltoft@bloomberg.net
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更新日時: 2012/06/05 14:03 JST